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黒曜石の呪縛  作者: 紗 織
本編 2
32/129

<第32話> 春子さん

 『光輝夢島(こきぃむとう)


  かつては観光の島として栄えていた。


  しかし現在は、観光客が訪れる事もほとんど無い島となっている。


  その為、現在は連絡船も運行が無くなってしまっている。




  達也の運転で島へと向かった義夫の漁船は、光輝夢島の以前連絡船が停泊していた港に着いた。






  青野は、島に上陸して少し歩いた時にすぐに気が付いた。


 (この場所に違いない!


  ここがきっと、僕の持っている写真が撮影された場所なのだ)と。

 



  その青野の発見に気が付いたのだろうか?




  いや、義夫は単に親切心から教えてくれていただけだった。



 「青野君、気が付いたかい?


  今いる場所なんだよ。


  ちょうどこの辺りが君の写真の場所だよ。





  どうだろう、分かるかい?


  それともこの辺りも随分と寂しい雰囲気にはなっちまったから、以前の明るかった写真と同じだと思うのは難しいかな・・・?





  以前は旅行客を歓迎する為の看板や、旅館を案内する看板がこの辺りに立っていたんだよな・・・。


  それが今じゃあ、観光客が来ることはめっきり少なくなってしまったし、島民はどんどん島から出て行くばかりで・・・、もう看板も撤去されて・・・





  いかん、いかん!

  こんな風に考えちまうから、暗い気持ちになっちまうんだ!



  まぁ、なんだ!

  自然が海岸線一面に広がった景色を満喫できるようになったと思わないかい?」


  義夫は、話の最後は無理やり明るく締めようとした。




 「そうなんですか?


  そんなに写真と雰囲気が変わってしまったなんて僕は思いませんでしたよ。




  だって僕は、ここがすぐに写真の景色だって気が付きましたから。


  あの写真と同じで、以前も今も自然がいっぱいに広がっていますよね。

 


  とても綺麗で、素敵な眺めです。



  義夫さん達が教えて下さった村の名前の描かれていた看板は、確かに言われてよく見ると写真に小さく映り込んでいましたが、僕はそれが何か分からない位でしたから。



  後は・・・、そうそう黒バラも写真に一緒に映っていたんですよね。


  ただ残念ながら、言っていた通りに今の時期は咲いていないようですね。




  でも今日この島に来て、この景色を見ることが出来た事は、本当に嬉しいです。


  だって僕は、卒業旅行中に島を発見することが出来たんですよ。



  そしてなんと!


  ちゃんと今上陸まですることが出来たんです。



  この島の写真があまりに美しい景色だったから、僕はこの写真の島を探し出して、そこに行ってみたいって思っていた目的が・・・、



  たった今、本当に達成されたんですからね。」


  僕は、島が今はもう寂しくなってしまったと感じている義夫さんに落ち込んで欲しくなかった。


  だから、嬉しかった気持ちを前面に伝えるように感想を話していた。



 「おお、そうか。


  青野君が気に入ってくれたなら、良かったよ。




  うん、確かに。


  島の自然はいつでもずっと美しいからな。



  それが一番の島の宝なんだよな。」


  義夫も嬉しそうに答えてくれた。




  なっちゃんのお姉さんの旅館に向かう途中の道で、義夫と青野は達也と別れた。



  達也は、ここから一人で村長宅へと向かったのである。


  なっちゃんが姉に青野が今からたずねて行く事を連絡していた様子を見て、自分も村長に船を取りに行くことを慌てて連絡したのだった。


  そして村長から『島に到着してすぐなら大丈夫そうだ』と言われたので、旅館には一緒に向かわず村長宅に船の鍵を取りに向かったのだった。


 



 (あれ?僕もしかして、まだ聞いていない・・・。)


 旅館に向かっているこの直前の状況で、青野はハッと気が付いた!



 「えっと、ところでなっちゃんさんのお姉さんって・・・」


  青野は、いつもと違って、少しもじもじと義夫に話しかけた。



 「『なっちゃんさん⁉』


  はははっ・・・、それを言うなら夏子さんだろう!?




  ん?そうか。


  もしかして青野君は、なっちゃんの名前をまだ知らなかったのか。


  いやぁ、すまなかったな。


  確かに自己紹介なんてしてなかったもんな。

 


  なっちゃんはな・・・、名前は夏子って言うんだ。



  そうそう、じゃあこっちもちゃんと教えておかないとだよな。

 


  なっちゃんの姉さんの名前は、春子さんだよ。


  これから訪ねて行くんだから、ちゃんと事前に知っておかないとな。」



  義夫が楽しそうに教えてくれた。



 「すみませんでした。


  そうなんです。今僕も気が付いてしまって・・・。

 

  どうもありがとうございます。」


  青野は、照れながら答えた。



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