表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒曜石の呪縛  作者: 紗 織
エピローグ
129/129

<第129話> ラーメン屋

「それで、曜子ちゃんは元気なのか?」


 黒川がニヤリと笑いながらたずねて来た。



「曜子さんですか?



 さぁ、どうなのでしょう?

 多分元気に暮らしているのではないでしょうか?


 


 ・・・って黒川さん、話を聞いた感想の開口一番が、曜子さんについてってどういう事ですか?」


 青野が真顔で答えた。



「いやいや何を言っているんだ、青野君。


 今の話は、君の恋愛話だろ。


『実は僕、今度その曜子ちゃんと結婚をする事になったんです。』って当然続くだろう。」


 黒川は楽しそうにからかい話を続けている。



「すみませんでしたね。


 全然そうは続きませんよ。





 もう、何を言っているんですか、本当に・・・。」


 軽く飲んでいたこともあり、青野は少しふてくされてしまった。



「分かった、分かった、冗談だよ。



 青野親子の人間性が素晴らしい事は、もう知っているからな。


 それで、お前の若い頃の恋話を聞けたからつい楽しくなったって訳よ。




 すまなかったな。

 お前の若いころの貴重な話を聞かせてくれて、ありがとうよ。






 でもな青野・・・、そんな事を言ってのんびり過ごしていると、婚期を逃して、お前もあっという間に俺のようなおじさんになっちまうんだぞ。


 だからいい娘に出会ったら連絡をこまめに取ってだな・・・」



「はい、はい、分かりました。


 すみません、以後気を付けます。」


 青野は、わざと話の腰を折るように返答をかぶせた。




「青野君、その態度、いかんねぇ。


 君はいつまでも若いつもりでいるようだが、もう私と同じ『おじさん世代』に片足を突っ込んでいるんだよ。




 例えば君が話してくれた、当時受験した国家公務員のⅠ種試験は、いまや存在しない資格だ。



 もう今年入って来る新人は、総合職と呼ばれる職種試験を受験しているんだぞ。



 うっかり職場でそんな古い職種名なんぞ使ったら、お前もあっと言う間に『おじさん』の仲間入りだぞ。」



「そんな大袈裟な。


 それって、センター試験が共通テストに名称が変わったのと同じような変更ですよ。





 それでおじさんだなんて・・・。


 どちらの呼び方を使ったとしても、僕にはあまり変わらないような気がするんですけれどねぇ・・・。」



「青野、甘いな。


 その感覚こそが、『おじさん族』にもう片足を突っ込んでいるって言われるんだぞ。」


 黒川が楽しそうに話す。




「それって、もしかして黒川さんがそう言っているだけなのでは?」


 青野も楽しそうに返答する。



「ははは、そうか。





 そうだな、すまん。


 確かにお前は、今も捜査一課の最年少のままだもんな。




 今年こそ、お前より若い者が入って来るといいな。


 もう一人前になっているというのに、他の奴らはいつまでもお前を若造扱いしているんじゃあ、面白くないよな。」


 黒川が、納得いかないような顔をしながら自分の思いを口にした。




「ありがとうございます、黒川さん。


 黒川さんがそう思ってくれているなら、僕はもうそれだけで充分満足ですよ。」


 青野は、本当に嬉しそうに返答した。





「青野、そろそろ帰るか。


 腹がいっぱいになったら、なんだか急に眠くなってきた。」


 黒川は、照れ隠しに頭を掻きながら言った。



「はい。


 昨日も遅くまで働いていましたから、今日は家の布団でゆっくり眠りたいですよね。




 それにしても、食事の最後まで呼び出しがかからないって、良いですね。


 平和な世の中、万歳です。」




「おお、そうだな。



 まあ、あまり平和が永く続くと、仕事が無くなって俺らが首になっちまうかもしれないぞ。」



「はい、そうですね。


 でもそれでもいいです。




 そうしたら、一緒にラーメン屋さんでもやりますか?」




「なんで『一緒に』なんだよ。」


 黒川は嬉しそうに応えた。


読者の皆様


作品の評価・感想をどうぞよろしくお願いいたします。

本作品に最後までお付き合いいただき、本当にどうもありがとうございました。


紗 織

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ