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黒曜石の呪縛  作者: 紗 織
本編 3
128/129

<第128話> 千里眼

青野は、父から頼まれていた伝言を二人へ話し始めた。



「村長さん、曜子さん、聞いて下さい。


 県警では、事件当時の凶器等を保管しています。


 そしてその中に、曜子さんが握りしめていた『黒曜石』も含まれていたそうです。




 殆どの破片は、事件が終わり既に処分をされましたが、一度は鑑定資料になった黒曜石でしたので、廃棄を免れていたそうです。


 ご遺族の遺留品として申請すれば、返却できるように手配してあるそうですが、どうなさいますか?」



「そういえば、そんな事がありましたね。


 事件が終わった時、刑事さんから妻の遺留品は返却して頂きました。


 でも現場に多数あった黒曜石の破片については、刑事さんが『こちらで処分しておきます。』と言ってくれましたので、お願いしたんですよ。


 当時は、黒曜石は事件を思い出す品でしたので、引き取ろうとは思いませんでしたから・・・。」



「えっ、良かった。


 じゃあお父さんが当時頑張ってくれたおかげで、お母さんの『黒曜石』が残ったのね。」


 曜子がからかうように小声で呟いた。



 その娘の声は、ちゃんと父の耳に届き、父は軽く諫めるような目つきを娘に向けた。


 曜子は、首をすくめて小さく笑った。




「青野さん、ありがとう。


 もちろんだよ。


 『黒曜石』の返却手続き、早速お願いさせてもらうよ。」


 村長は、嬉しそうな笑顔を浮かべながら答えた。


 曜子も嬉しそうに隣で頷いていた。


「はい。」


 青野は快諾した。




 青野は、古閑親子の心のわだかまりが解けて、屈託なく会話をする姿を見つめていた。



 (今はもう、心優しい二人が思った事を素直に言葉にする事が出来ている。


  やはりそういう親子関係って、いいものだなぁ。




  ああ、曜子さんの笑顔、なんてまぶしいんだ・・。)


 いや・・・、青野は、曜子の輝く笑顔に見とれてしまっていた。





(いやいやいや・・・。


 何を見とれているんだ、僕は・・・。)


 青野は、慌てて我に返った。


(それにしても、父さんの千里眼には驚きだよ。


 出発前に『黒曜石』の返却手続きの話を聞いた時、僕は何を言っているのだろう?と思っていた。




 つまり父さんには最初からこの結末が・・・、こうなる事が分かっていたって事なんだよな・・・。




 やっぱり父さんには、まだ全然かなわないなぁ・・・。




 いや、いつかきっと僕だって、父さんのような刑事になるんだ!)


 青野は、自分自身に誓った。


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