表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒曜石の呪縛  作者: 紗 織
本編 3
125/129

<第125話> ついに語られる事件 ⑥

「あぁぁ~」

 右手を見た瞬間、麗子の体中の力が抜けてしまった。



 麗子は、その場に倒れてしまった。

 背中から血が流れ続けているのが感じられる。



(あなた、曜子・・・・)

 心の中で無意識に二人の名を呼んでいた。




(曜子!)

 麗子は我に返った。



(私は、こんな所で倒れている場合じゃない!


 何をしていたの・・・駄目じゃない、私。

 すぐに娘の所に行かなくては!)



 麗子は、ゆっくりと顔を上げ、部屋の中の娘を探した。



 娘は、先程と同じ場所でうずくまっていた。




「曜子。」


 麗子は、立ち上がろうとした。


「痛いっ。」


 力が加わると背中には鈍い痛みが走り、麗子は、その場でまた崩れ落ちてしまった。




(どうしよう・・・。


 私、もう立てないのかしら・・・。)



 弱気になる麗子。



(あれっ・・・?手の下に何かある?)



 倒れた麗子の右手の下に、冷たく丸い感触があった。



 麗子は、それを取り上げて見つめた。


 小さな黒曜石だった。


 その小さな石の形は、不思議にも床の間に飾っていた黒曜石ととても良く似ていた。




「黒曜石さん・・・。


 ありがとう、応援してくれているのね。」




 麗子は、石を優しく握りしめた。



 麗子は再び娘の元に向かおうとした。


 そして今度は『立てないならば・・・』と、這いつくばりながら前に進み始めた。





 麗子は、娘の近くまで必死に歩んできた。


「曜子」


 麗子は、弱々しく娘に呼び掛けた。



 しかし、その声は娘の耳には届かなかった。



 曜子は、両手で耳を塞いでいた。


 そして「怖い、助けて、ママ、パパ・・・」

 と小さく呟き続けていた。


 曜子は、自分の声で周囲の恐怖の音を必死にかき消していたのだ。



 母の身に危険が迫ったあの時、娘は目の前で起きている光景の恐ろしさに、その場でうずくまってしまったのだ。



 ガタガタと震えながら、ブツブツとつぶやき続ける曜子。




 その様子を見て母は、娘の耳元に優しく口を近づけると


「曜子ちゃん、ママよ。」


 ともう一度ゆっくりと話し掛けた。



「ママ・・・? ママなの?」


 曜子が顔を上げた。


 娘の顔の隣には、真っ白な母の優しい笑顔があった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ