<第109話> 村長の告白 ③
「石?
なぜ曜子は石なんか持っているんだ?
いや、今はそれどころじゃない!」
村長は、石を握りしめていた事で組まれていた両手が離れたので、直ぐに曜子の手首の脈を確かめた。
「脈がある!」
村長は、次に曜子の顔に自分の顔を近づけた。
ゆっくりととても静かだったが、確かに曜子は息をしていた。
「曜子は・・・、
生きている。
そうだ、救急車!
なぜ気が付かなかったんだ。」
村長は、持っていた携帯からすぐに救急車を呼んだ。
次に村長は、緊急隊員に指示された通りすぐに警察にも連絡を入れた。
「後は、救急車の到着を待つだけだ・・・。
曜子が生きていてくれて、本当に良かった。」
村長は、電話を終えると少しだけホッとして、大きく息を吐いた。
村長は息を吐いた時、大きくゆっくりと瞬きをした。
すると再び、先程曜子の手元から落ちた石が視界の中に入ってきた。
「おやっ?
よく見れば、あの小さな石は黒曜石じゃないか?」
村長は、すぐに石が黒曜石である事に気が付いた。
血に染まっていても、麗子の守護石として妻と一緒に我が家に嫁入りしてきた石である。
床の間に飾られた黒曜石を優しく触りながら、麗子が嬉しそうに『石神様のおかげでね、・・・』と話す姿を村長は今まで何度も見て来ていた。
村長は、自然と客間の奥の床の間に飾られているはずの黒曜石の方へと視線を向けた。
床の間の手前で、誰かが倒れていた!