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009

「ん?あー、あったあった。あの時は大変だったな。本当、全員無事でよかったぜ」


 やっぱり、記憶とは違う気がする。全員無事どころか、ほぼ全滅。生き残った人も2人いたけど、重い怪我を抱えることになったのだ。到底、全員無事なんて言葉は出ないだろう。


「ってか、なんでそんな他人事なんだ?リリアーナもいたろ?シンとユリウスと一緒に」


 確定だ。私はその時期に、彼と一緒の馬車に乗った記憶がない。また、シン様も事故の日はレオン様と同じ馬車に乗っていなかった。それに…、私はユリウスという人物を知らない。私と関わりない人物だったら、まだいいが、わざわざ名前が出るということは、私が知っている前提だ。


 シン様の袖をねえねえ、と言った風に軽く引っ張る

「ん?どうしたの?」

 と、問われ、耳元でこそっと、尋ねる。

「その、ユリウスってどちら様でしょうか?レオン様の知り合いですか?」

 もし、仮に国の重要な人物ならば、誰かを問うのは失礼にあたるだろう。私が記憶障害を抱えている(ということになっている)と診断されたことを知っているシン様に聞くのはまだ大丈夫だろうと判断してレオン様には聞こえないくらいの声で尋ねた。


「……、うん。そんな感じかな。」そういつも通りという風に返ってきたが、一瞬、間があった。驚いたような、信じられないものを見たような、何かを隠したような、そんな間だ。


 そんな反応に疑問を感じるも、まあ、シン様やレオン様のように私と関係が深かった人物の存在は(どこかが記憶と異なっていたとしても)知っているので、ユリウスという人はそこまで私と関わりがないのかなと、片付けてしまう。


 それよりも重大な問題が目の前にある。これは、どうすればいいのだろう。私はこの世界の人間じゃないことを理解せざるを得なかった。人の性格や纏っている雰囲気が変わるのは演技だと言うことで、寝て起きたら場所が変わってたのは薬などで深く眠らせてその間眠らせたと、無理矢理ごじつけることはできるが、事実を、特に死の事実を変えるのは嘘や誤魔化しが効くレベルではない。信じられないが、私の知らない世界に来てしまった。


「おーい、何2人でこそこそしてんだよ」

 レオン様との話の途中にシン様に耳打ちをしてしまったので、感じが悪かったかもしれない。レオン様は怒っているというか、仲間はずれにすんなよなーと不貞腐れている感じだ。

 

 シン様は少し考えてから、レオン様に少し話たいことがあるんだ。移動しよう、と声をかける。それに頷いたレオン様を見て、私はその場を去ろうとする。

 何か重大な話っぽいし、私が聞くのも良くないだろうと判断した。しかし、リリーも一緒にね。君の今の状態を話した方がいいと思って、と呼び止められた。


 分かりました、と言って私も一緒に行くことにする。


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