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日も落ちて、普段は真っ暗なはずの時間帯。
しかし、ここは、あたり一面にあかりが灯り、景気良く賑わっていた。
「ここには、毎年2人で来ていたんだよ。毎年と言っても、3年前からだけど」
「えっと、お祭り?」
「うん、そんな感じかな。今日の夜、あと1時間ちょっとで花火が打ち上がるんだよ。少し屋台を回ってから、特等席に案内するよ」
「ありがとう、楽しみにしてるね!」
花火。噂では聞いたことあるが、実際に目にするのは初めてだ。外に屋台があると言うことは、外で行うものなのだろうか。どのようなものか、想像もつかない。
「じゃあ、食べ物から買いに行こうか」
そう言ったシンに手を引かれる。家や馬車の中ならともかく、なんだか子供扱いみたいで文句を言うとお姫様扱いだよ、と返ってきた。なっ、と言葉に詰まった。彼には、口では勝てないことを悟り、渋々大人しくすることにする。
甘い匂いや香ばしい香りが食欲を刺激する。
屋台で買い物するのは初めてで、シンにあれ何、これ何と、子供みたいに尋ねた。シンは興味深々な私に、気になるなら食べてみなよと惜しむことなく買い与えてくれて、結局、両手いっぱいに、食べ物を持ち歩く羽目になった。
「ん〜美味しい〜。このわたあめってやつふわふわで甘くて最高〜」
「それはよかった。両手塞がっているんだから、転ばないように気をつけてね」
「はーい、あっ、あれは何?」
「ん?射的だね、並んでる景品を打ち落としたらもらえるんだ」
「やってみたい」
「いいよ、じゃあ行こうか」
いらっしゃい、いらっしゃいと元気よくかかってきた声に、一回お願いしますと言った。玉を五発もらい、この線から出ちゃダメだよとか、銃の扱い方とか、軽く説明を受けた。
どうしようかな〜と景品を一周見て、仔犬のぬいぐるみを狙うことにした。
一発目。
あら、意外と難しい。玉は頓珍漢な方向へ飛んでいってしまった。
二発目。
これまた失敗だ。先ほどよりは上手くいったが、景品を飛び越えてしまっている。
三発目。
当たった!と、思ったが、景品が倒れなかったからダメらしい。
四発目。
これまた失敗に逆戻りしてしまった。かすっただけだった。
五発目。
だめだ。倒すどころか、全然当たらない。他の景品も綺麗に並んでいるところも見ると、当てれる人がいるのかすら疑問に思えてきた。
「残念、惜しかったね」
「うーん、難しかった。あの仔犬可愛かったのになぁ〜、ちょっと悔しいかも」
「欲しかったの?」
「うん」
「じゃあ、俺もやってみようかな」
シンも一回お願いしますと言って、玉を受け取った。
構えて、一発目を打つ。見事的中どころか、彼は一発目にして、ぬいぐるみを倒してしまった。彼の腕に驚いているとこの場は拍手喝采に包まれた。
「すごいね、シン!」
「実はリリーのためにこっそりと練習していたんだ。成果を見せられてよかったよ。去年はとってあげられなかったからね」
「あのハート型のネックレス?シンってば、ポーズはかっこいいのに、私よりダメダメだったよね〜。そっかぁ。私のために練習してくれたんだぁ、嬉しい」
私のため、という言葉がなんだかこそばゆくて、はにかみながら、嬉しいと伝えた。その後、シンが1人で射的の練習をしている姿が思い浮かんで、くすくすという笑い方に変わる。
「えっ?」
「え?」
シンはなぜか、驚いて会話を止めた。私もつられて、え、とつぶやき、首を傾げる。
何か、おかしいことはあっただろうか。
「思い出したの?去年のこと」




