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 ヒートアップしていく言い争いを横目に、おかわり貰えないかな?と思う。とても美味しかったので、残り、最後の1口がとても名残惜しい。


「リリアーナ、ごめんね」

「ごめん、姉さん」

 突然に謝り出す、二人に、最後の一口を口に入れようとした手を止めて、首を傾げた。


 そして、あれ?と、二人も拍子抜けなような表情をしている。

「これは大丈夫なの?」「平気そうだね」と、二人は顔を見合わせる。


「ほら、さっき怖がらせちゃったみたいだから」

 ああ、そういうことか。と、納得する。初めは確かにそうだが、今考えてみると、このペースが二人の通常運転らしいし、特に気にすることはないのかもしれないと思い始めた。それに知らない人とシン様がばちばちやっているのではなく、弟とシンが言い争いをしていると考えると逆に微笑ましくも思えてくる。


「それで、姉さんはここで暮らすってことでいいよね?」

「よくないって言ってるでしょう?」

 あっ、言い争いのきっかけはこれだった。約束の3年間はシンと暮らす予定だし、断らなくちゃ。


「えっと、ユリウス?私まだしばらくシンの元でお世話になろうかなぁ〜って考えてるのだけど」

 彼は明らかにしょんぼりしたように見える。

「で、でも、ほら、たまに会いに来るから!」

「たまにじゃ嫌だ」

「いっぱい」

 そう言うと、渋々と言った感じだが、彼は納得してくれたようだった。急に私に甘くなった気がするが、一体何がトリガーになっていたのだろうか。


「じゃあ、毎日来てね。姉さんが好きそうなデザート用意して待ってるから」

 毎日…!?たくさん来るとは言ったけど、毎日は難しいんじゃないかなぁと、シンを見る。ここへ来るのには、少なくとも彼の支援が必要だ。徒歩で来れなくはないかもしれないが、往復したら、丸丸一日使ってしまいそう。そして、馬車を借りるにしても公共の交通機関を使うにしても、私は一文なしなので、厳しい。ここの世界の私のお金があるなら、それを使えばいいが、今のところ彼女の貯金はどうなっているか、わからない。ここ何週間かの私の生活からは、彼女が働いているかはわからないのだが、そこのところどうなっているのだろう。


 その後も何回か2人は言い争いをして、シンの家に戻る事になった。その間には、お父さんとお母さんもやってきて、私たちは、隣で喧嘩している彼らとは比べ物にならないほど穏やかに会話を楽しんだ。


 アスタルク家とクロイスケールング家は、爵位は違うが、とても仲が良いらしい。アラン様は私とユリウスを実の兄弟のように可愛がってくれており、シンと私は小さい頃から本当に仲睦まじかったみたいだ。シンとユリウスはこの通りだが、ここまで言い争いをできる仲も貴重だと言うことだった。


 それから、幼少期の私の話も少々。好奇心旺盛で冒険好き。結構、お転婆というか、じゃじゃ馬でよく両親や専属メイドのジュナを困らせていたとか。

 

 ユリウスとの仲は良好。しょっちゅう、ユリウスを連れ回して出掛けていたらしい。今はユリウスがシスコンに見えるが、私も彼に負けず劣らず、いや、彼のシスコン度合いが霞むほどのブラコンを発揮していたらしい。


 シンとの関係性はもう、社交界一を誇るほどだったらしい。そんなにいちゃいちゃしていたのか!?と恥ずかしくなる。


 そして、そろそろ帰るか、という頃になって、先ほどのユリウス同様に、こちらで一緒に暮らさないかと提案された。再び、断ると、何か困ったことがあったら、いつでも帰っておいで。と言われ、両親の温かさを感じた。

 そして、ユリウスからはまたまた数個のカップケーキを渡された。さっきまでの両親からの話で分かったことは、このカップケーキは彼が作ったらしい。しかも、私好みの味付けになるように、改良に改良を重ねていたみたいだった。それを知った上で渡されたカップケーキを受け取った時、思わず、彼に抱きついてしまった。今までは、何とか抑えていたが、今回は本当に身体が勝手にという感じだ。

 あっ、しまった…、ユリウスに嫌がられるかな、と心配するのも束の間、彼は私の背に手を回し、受け入れてくれたらしい。

 しかし、しばらく経つと、さすがにもうおしまいね、と彼から離された。シンの手によって。そして、帰りの挨拶をすると、馬車へ連れて行かれた。

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