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017

「……?どうしたの?」

「いや、なんでもない」

 なんでもない感じではないんだけどなぁ。驚いたユリウスにどうしたのかと問いかけるが、期待した答えは返ってこなかった。


「ねえ、リリアーナに食べて欲しいものがあるんだけど……」

「何?」

「内緒」

 内緒かぁ。え?何だろう。変なものじゃないよね…?

「ここで、しばらく待ってて」

 そう、続けて言って、彼は部屋を出てってしまった。


 


 いや、長くない?

 もしかして、何かドッキリ的な?それとも、揶揄ってるとか?

 彼が出て行ってから、2時間は経った。

 することがなく暇だ。ここが私の部屋というなら、することがあったのだけど。誰かの部屋なのは確かだが、私の部屋ではないような気がする。いや、ここの私がどういう趣味でどういう部屋を持っているのかは、わからないけど。


 そう考えると、がちゃりと、ドアが開く音がした。

 そして、彼の片手にはおしゃれなデザートが乗っているお皿があった。小さいカップケーキ3個を軸として、クリームやチョコレート、カラフルなフルーツソースでデコレーションされていた。お皿には果実が置かれていたりと、名前はわからないがキラキラしたものが振り掛けられている。

 公爵家でいつも頂いているデザートも飾り付けなど、一級品ばかりだったが、こちらは可愛さを重視したような飾り付けだった。


「わぁ!すごい!可愛い〜!!どうしたのこれ?」

「食べてみて」

「いいの??」

「いいのも何もリリアーナに食べてもらうためのだから」

「えっ、ありがとう!!」


 いただきます、と言い、机に置かれたそれを食べ始める。

「う〜!美味しい!見た目も味も最高〜!!」と、頬に手を当てる。

 私が食べるまで伺うようにこちらをみていた彼は、それから、一息吐いた。


「それは、よかった」

 その言葉にん?と首を傾げる。若干だけど、空気が柔らかくなった気がする。


 

「ねえ、この家に戻ってきたら?」

「えっ……?」

 デザートを食べている間に言われた提案に驚く。雰囲気的に帰省とかそういう話じゃないと感じる。私的には、今の状況が一時帰省に近い感じがするし。


「そもそも姉さんの結婚は反対だったし、何なら僕が養うから安心して」

 養うという言葉を聞いて、まあ大きくなって、お姉ちゃん嬉しい!と抱きしめたくなったがはっとする。

 いやいや。大きくなってって小さい頃の彼を知らないから。なんというか、時々、本当の弟のように思えてくるなんて、よほど、彼の潜在的な弟力が高いのだろうか。


「だから、僕と一緒に暮らそうよ。さっきリリアーナは自由が言いとも言ってたじゃん。公爵家なんて嫁いだら、忙しくて自由なんてないでしょ?」

 今度は、はっきりとした同居の提案だった。確かに最近自由はあまりなかった。それは忙しくて、というより、暇ではあったが。


「ちょっと、ユリウス?なんで、いつの間にか、俺のリリーを口説いているのかな?」

 返答に困っていると、若干怒りも混ざったようなシンの声が聞こえた。別にユリウスは、私を口説いているわけではなく、ただ家族と一緒に暮らさないかという話なのだけど。

「シンのじゃないし、僕の姉さんだよ。それより、人の部屋に何ノックしないで勝手に入ってきてるの?」

「廊下から、耳を疑うような話が聞こえたからね。俺のリリーにどういうつもりかな?」

「僕の姉さんだから。別におかしいこと言ってないし」


 俺の、僕の、と言いながら、二人はまた、言い争いを始めた。初めの時はびびったけど、多分、あれだ。喧嘩するほど仲が良いって言うやつ。あまり気にしなくていいのかもしれない、と思いながら半分聞き流し気味に、私はデザートの続きをいただくことにした。

 


 

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