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014

ひぇぇっ。

 絶対、温度下がった。いや、現在進行形で下がり続けていると思う。弟だと思われる人物もシン様もなんか、黒いオーラを纏っているような。特にシン様なんか、私の元いた世界の彼よりやばい。笑顔な分、背筋がひんやりしてくる。


「リリー?」

 弟と言い争いをやめ、シン様はこちらを見た。よ、良かった。一旦だけど、弟からこちらに関心が逸れたみたい。このまま、喧嘩をやめるように、言えば聞いてくれるかもしれない。いつもの調子なら、


「ご、ごめんね。怖かった…?そうだよね、びっくりしたよね?」

 いや、ここまで心配しなくてもいいけど。今度は先ほどの私のおろおろ具合に負けず劣らずシン様もおろおろしだした。まあ、シン様がこの様子なら、言い争いは終わりかもしれない。

 私は、大丈夫です、と首を横に振った。


「はぁ?何言ってんの。姉さんに怖いものなんてないから。よりにもよってなんで今怖がる要素があるわけ?ありえない」

 ごめんなさい。実を言うとさっき少し怖がってました。それに、私怖いもの結構あります。

 彼によると、こちらの世界の私は怖いものがないらしい。すごい。まあ、私も元は他のご令嬢方よりは怖がりではないかもしれないが。今は結構ある。というか、途中からトラウマになったこともたくさんだ。


「……つい、いつもみたいに話しちゃったけど、君にはアスタルク伯爵から話はまだ行ってなかったみたいだね。はじめの質問だけど…」

 彼が言うアスタルク伯爵は、きっと私の父だろう。

 シン様は、そこまで言うと私の方を見た。それから、リリー、彼のこと何か思い出したかな?と聞いてくる。

しかし、答えはNOだ。元の世界には弟という存在がいないし、思い出せるわけがない。シン様と彼のいい争いから、この世界の私は弟に慕われているみたいと、推測することができるが、名前さえわからない。


「えっと、私の弟、なんですよね?」

「うん、正解。他には分かる?」


 シン様はわからないことを前提に問うてきた。少し意地悪だと思ったけど、弟と彼の関係では、彼が私の記憶が混乱していると話したところで聞く耳を持たなそうだ。わからない、です、と素直に答えた。シン様は、この通り、リリーは記憶が混乱しているんだと話した。


「は、なんだよ。姉さんふざけてんの?義兄さんの趣味悪い冗談に乗んないでよ」


「ごめんなさい、冗談なんかじゃなくて、私あなたのことわかんなくて…」


「ほんとに、僕がわからないの?」

 泣きそうな、震えている声で問われた。ああ、彼は本当に私じゃないこの世界の私が好きだと伝わってくる。でも、わからないことはわからない。


「なんでっ…、僕のこと嫌いになったのっ?」

 彼の視線は下がり、俯く。嫌いになんかなってない。多分、彼の本当の姉だって彼のことを嫌いになったわけではない。


「あの、ほんとにごめんなさい。早く、早く、元に戻るように、頑張るから…!それまで、私が代わりで我慢して欲しい、」


「そんなのが聞きたいんじゃないよっ!僕のこと知らない姉さんなんて、大っ嫌い!!」

 弟は、涙をほんのり浮かべてそう叫んだ後に、家の中へ走って帰ってしまった。


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