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塩たん、タンシチュー、タルトタタン

「松井さん……何でその3択なんすか」


「べろ好きそうだったから、佐久間」


定時で終わらなかった仕事に先輩が付き合ってくれて、今に至る。

この場合の「付き合う」は「行動を共にする」意味であって、残念ながら「交際」ではない。

流石は先輩、普段から俺の仕事をだいたい把握してくれているだけあって、書類を捌く手にはほとんど迷いが無く、あっという間に片付いた。

お蔭様ですぐに残業は終わり、今現在、会社を出た俺と先輩は駅前の繁華街に向かって並んで歩いている。

看板やのぼり旗を眺めながら、さあどこの店に入ろうかと話し掛けたところ、塩たん、タンシチュー、タルトタタンのどれを食べたいかと尋ねられての冒頭の会話。

べろは……べろは……うん。かなり良かったのは事実。


「べろは……まぁ、俺も男なんで否定はしないっすけど、強いて言うなら、俺は松井さんとのキスが好きです」


エロい下心を包み隠さず、かつ、真っ直ぐな恋心をトッピング。


「ハハハッ、そりゃどうも」


拒絶とは思わないが、いなされているようにも感じる。

でも、ならば煽るような焦らすような3択問題はなにゆえ?

やっぱり先輩はただ、俺の反応を見て楽しんでいるだけなのか……それとも……。

先輩は小悪魔系か? 有り得る。だって可愛いし。

ごちゃごちゃと考えるのは得意じゃない。

腹が減っては戦はできぬと言うし、まずは夕食にありつくことを考えよう。


「選択肢の中で、1番現実的なのは塩たんだと思いますけど」


「んじゃ焼肉だな」


こうして店が決まった。

きっと松井さんの頭の中で8割方、最初から焼肉で決まっていたんじゃないかと思う。だって他の2つ、選びにくい……。


*****************


「乾杯、佐久間。塩たん、たんとお食べな」


「……松井さん、親父ギャグがキツいですよ……」


「塩対応だな、佐久間。年、そんな変わんないって言ってくれたのに」


「塩までかけてくるのやめてくれます?」


ちょっぴりしょげた先輩、カッコいいと可愛いの夢の共演。

やべー、マジ可愛い。

相変わらず、俺と先輩の会話はそんなに多くない。

でも、心地よい先輩の空気。

お互いのんびり飲みながら、ジュージューと香ばしく焼いた肉に舌鼓を打つ。


「食後、どこかでタルトタタンが売ってるといいな」


先輩がポツリと呟く。


「? 松井さん、そんなにタタンタタンが好きなんすか?」


「ほら、佐久間はべろが好きだから」


「いや……、タルトタタンはべろじゃないでしょ」


「焼肉食ったあとのキスは口臭が気になるかなぁって。俺、佐久間よりもおっさんだし」


先輩があかんベーと、下瞼(したまぶた)の赤い裏側とべろを俺に(さら)した。

駄目だ……腹が立つのに、無駄に色っぽい……。


「食べちゃいますよ、べろ」


「食べてもいいけど、タルトタタン食ってからな」


すぐにスマホで夜遅くでも開いている近くのケーキ屋を調べ、タルトタタンの取り置きを店に頼んだ。

交わった舌の、コンポートの甘さが蘇る。

りんご尽くし。

食後のデザートの食後のデザートが今から楽しみだ。


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[一言] 食後のデザートの食後のデザート(意味深)
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