海のペンダント
「綺麗なペンダントだろ?」
話しかけた名も知らないおじさんの横顔
夜の海にデスプレイされた白い光の鎖
「違うよ、あれはネックレスだよ」
わたしはそう答えた
「違わないんだ
トップの飾りが海に落ちたんだ
君ならどうする
海に潜って探すかい?」
「わたし泳げないもん」
「それじゃあ 勝手に想像するんだね
どんな飾りが自分に似合うか」
「……考えてみるかな」
「そうだよ
今日は海に入るのはやめておくんだね
思いつくまでは頭を真っすぐに立てていなきゃ駄目だよ
足元の地面を見ながら歩かないでね」
顔を向けると見知らぬおじさんはいなくなっていた
わたしはお母さんが待っているアパートに戻ろう
わたしが小さいとき死んだお父さん
あのおじさんが似ていた気がした
風が少し冷たい 鉄錆の街の夜