2、
「……」
困惑して、考える事を辞めてしまった脳。
固まって動けない身体。
目の前にいる美少女は微笑みを浮かべていた。
「えっと……僕と……知り合いでしたっけ?」
やっと出た言葉はソレであった。
彼女が嬉しそうな雰囲気を出しているのに、その場の空気を冷ますような質問。
だが、僕は悪くないと思う。
いくら抱きついてきたのが、美少女とは言え、見知らぬ他人である以上警戒を抱くものだ。
少女はハッとしたのか、ゆっくりと離れていく。
「ご、ごめんなさい……本当に貴方だったものだから。 その……つい嬉しくなって……」
後半に連れ、だんだんと声が小さくなっていく。
彼女の頬は赤くなっていた。
「うん……」
僕も小さく答える。
すると、少女は改めて手を後ろで組み、自己紹介のようなモノを行い始めた。
「改めまして。この間まで貴方に大切に飼って頂いていたクロです」
「……」
えっ?
彼女の自己紹介は、僕を一層困惑するものだった。
クロってあのクロ?
でも、クロは猫だ。
いくら雌の猫とは言え、女の子ではない。
それに、クロはつい一週間前に亡くなったはずだ。
「どう言う事……君はクロの生まれ変わりとでも?」
馬鹿げたような質問。
もし本当なら、まるでファンタジーのような出来事だ。
ただ、彼女は「はい」と強く頷いた。
「……」
死んだ猫が生まれ変わり、こうして人間の姿で自分の目の前にいる。
「えっと……」
僕の心にさまざまな感情が渦巻く。
疑問。
困惑。
恐怖。
そして──怒り。
僕は口を開いた。
「誰の指図か分からないけど、僕を励ますなら辞めてほしいな……そんな事してもクロが戻って来るわけじゃないし……」
だんだんと口調が早くなる。
学校の企画でこんな事をしたのか。
それとも僕とクロの事を知っている誰かがやったのかは分からない。
だけど、もし猫の格好をして「クロです」と言われても、嬉しくないし、逆に彼女に失礼だ。
僕はそう伝えようとしたが──。
「中学1年生の時……雨風さん」
「……」
……ん?
どうしてそれを?
その黒歴史は僕しか知らないはずだけど……。
「他にもありますよ?」
好きな好物。
パソコンの履歴。
そして、ベットの下の隠し物などなど。
僕しか知らない黒歴史を次々と暴露していく彼女。
辞めてくれよ……。
僕のライフはもう0だった。
「これで信じますか?」
「……」
ストーカーなの?
でも、ストーカーでもこんなには知らないと思う。
とすると、やっぱりクロの生まれ変わりなのかな?
疑問が渦巻く。
この少女は本当にクロの生まれ変わりかもしれない。
でも、未だに信じられなかった。
「……そうですか。 ちょっと待っててくださいね?」
僕の様子を見て、彼女は首のところに手をかけた。
そこから、”クロ” と綺麗に彫られた銀色のロケットの付いたネックレスを露にした。
その中に入っているのは、1匹の黒猫の写真。
「それは……僕とあの子が出会って1年の時に、記念に首に掛けてあげたネックレス……」
「はい……これで信じる気になりました?」
「……ッ!」
疑念が確信に変わった瞬間だった。
ただ、疑問が消えたら、また別の疑問が生まれる。
「でも……どうして?」
この少女──クロがこうやって戻ってきた方法。
クロがクロだと言う事が分かった後、それが一番の疑問であった。
「知りたいですか?」
「……」
コクリと小さく頷く。
「分かりました!」
少女が微笑む。
その笑顔は初めて。
でも、どこか久しぶりに見たような表情だった。
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