契約 代価と狂気的な真髄
契約
ダイアたちは、それがどれほど危険なものか知っていた
それは、ある日のこと
魔物の討伐で王都から遠く離れた場所へと出かけた際
「ここって人いないよなぁ?探知には引っかからないけど、誰もいないよなぁ」
突然、クロスがそんな事を言い出した。それを聞いたダイアたちは
またいつもの、思いつきで何かやろうとしてるんだろう、と思ったが特に止めはしなかった
止める理由がなかったからだ
「ちょうどいい。みんなに、<契約>を見せるちょうどいい機会だ。見ててくれ」
そう言うと、クロスは地面へと木の棒で魔法陣をスラスラと描いていく
「あれ?コレって」
「ん?ダイア知ってるの?」
「確か、クロスさんの部屋に書いてありましたよね?」
「え!二人ともクロスの部屋に入った事があるの?」
「はい。…あれっ?確か行った事があるはず、ですよね?」
「いや、なんで疑問系なんだよ…ないよ」
「そうですか。おかしいなぁ…」
じゃあどこで見たんだろう。そう言いながらアッシュが頭を悩ませているうちに
「よし、これで準備できた」
クロスはあっという間に魔法陣を書き上げた
「そう言えば、前にマリカちゃんの依頼の時も契約使ったけど、今回はちゃんと魔法陣を書くんだね」
「そりゃあな。前のは簡略版。形式上契約を交わしたことにしときたかったから判定もガバガバな適当な契約を使った。まぁ、この魔法陣が正式かと言えばまた違うけどな。ダイアが知ってる魔法陣は一応正式というか、俺に合わせた契約の魔法陣になるな」
「ふーん」
「そもそも契約ってのは、結ぶ相手がいさえすれば成立するんだ。たとえば、英雄譚によくある精霊とも見える人間なら誰でも契約できるし、なんならそこら辺にいる犬とでも契約できる。だが、俺が見せたいのはそれらとは違う。俺が見せたいのは自分自身との契約、いわゆる縛る契約だ」
そう言うと、クロスは<無限の空間>からある球体を取り出した
「…あっ、それ」
「なんですか?コレ」
「ただの壊れた木の球でしょ?」
「それが違うんだな。まぁ、中をよく見てみ」
そう言いながらクロスが球を二つに分解すると、中から地面に書かれたものとよく似た魔法陣が現れた
「たとえばだが、魔法の効果を引き上げたいとき、マリカならどうする?」
「使う魔力の量を増やすかな」
「そうだな。魔法自体を改良するというのもあるが、今回は置いといて、魔法の効果を高めるために使用する魔力を増やすというのはよくある話だ」
「でも、<契約>ならさらに強化できるんでしょ?」
「そうだ。特に、攻撃的な方面ではな。<契約>ってのは便利なもんで、魔道具の効果すらも高める事ができる。もともとそう設計されていなかったとしてもな。この球体だってそうだ。ダイアは知ってると思うが、俺はこれに複数の魔法をかけた。それは、俺が伝えたい内容を記録し無制限に再生する事ができるというものだ」
「!無制限ですか!?」
「そうだ。だが、当然のことながら、無制限に使用できる魔道具なんて存在しない」
「なるほど、そこで使ったのが<契約>。この魔法陣なんだね」
「ああ。だが、俺はできる事なら、みんなに<契約>を結んで欲しくない。<契約>は、俺ですら使用の仕方を誤れば死を免れない危険なものだから」
「?どういうことですか?さっき便利なものって」
クロスの言葉にアッシュは不思議そうにしていた。まぁ、これは誰にだって言える事だろう。
実際に目にしないとその危険性に気づけないというのは
「簡単な実演をする。みんなは少し離れて」
クロスに言われた通り全員が離れると、クロスは球体に向けて手をかざした
すると、球体に刻まれていた魔法陣が一瞬だけひかり、すぐさま元に戻った
「…クロス、何をしたの?」
「契約の更新、契約の内容を書き換えて契約を結び直した。ただ、それだけ。内容もいたってシンプル。この球体に込められる魔力の限界量を制限。その代わり球体は耐久力が上昇する。ただ、それだけの、取るに足らないような<契約>…一応心配だから、防御できる魔法ぐらいしておいてよ」
その言葉を聞いても、ダイアとアッシュはいまいちピンときていなかった。そもそも2人は、クロスからしか<契約>に関する話等を聞いた事がなく、縛る<契約>を実際に目にする機会は今までなかった
二人は、<契約>の強制力を知らなかった
唯一知ってるのは
「え、嘘でしょクロス…そ、それは、さすがにやめなよ」
大学で長くクロスと一緒にいたマリカだけだ。マリカだけが、<契約>を破った際に訪れるリスクについて理解していた
だからこそ、
「<防御力強化><障壁><自動回復><全魔法属性耐性>」
クロス以外の全員を護れるよう全力で防御を固めていた
それを見て、ダイアとマリカはようやく状況を理解し始めていた
クロスが、なにかとんでもないことをしようとしているということに
「俺は今から<契約>を破る。今回のケースなら制限した魔力量以上に魔力を込めるだけで良さそうだな」
そう言いながらクロスは、大地が震えるほど膨大な魔力を球体に込めていく
それを見てダイアたちは
あ、コレは本当にマズイやつだ。こんな程度の防御じゃ意味がないくらいに
一瞬で理解した。そして、
ダァッ
3人ともほぼ同時にクロスから遠ざかる方へと全力で走り出していた
クロスを振り返るようなことは一切せず、クロスへと背中を向けたまま最高速度で山を一気に降り、落ちる
全力で斜面を駆け降り、谷を跳び、崖を真下へと飛ぶ
そうして走り出してから数秒、普通の人間たちなら半日はかかる距離を瞬く間に走り終えたダイアたち
3人は本能で理解していた
最低でもここまで離れないとヤバイ
そして、3人のその感覚が正しかったとでもいうかのように、クロスが先程までいたであろう山の方角が突然眩しい光に包まれて弾け飛び、しばらくして
ドゴォォォォォオオオオオオン!
思わず耳を塞いでしまうほどの轟音と衝撃がダイアたちを襲った
これは、あくまで<契約>の強制力。山一つを軽く消し飛ばすほどの、破らなければいいだけの話だが、それでも破ってしまえばどんな悲劇が契約者を襲うのか
それをダイアたちに視覚的に伝えていた
<契約>
契約の内容が複雑であるほど、契約の数が多いほど、縛るものが大きいほど
その代価としてもたらされる効果は絶大なものになり、また、契約を結んでいる時間に比例してわずかに効果が強まる
<契約>とは、諸刃の剣、などと言う言葉では表せないほどに危険で、そして、その危険性すらも飲み込ませてしまうほどに甘美で蠱惑的な力を持っている
まさに、
悪魔のような力
なのだ
今週メイン書けるか分からない
忙しい




