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いずれ最強伝説  作者: piccle
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純白の光 対 漆黒の光 1

 おかしい。どうなってるの


 ダイアは今、驚きと不安の二つの感情によって珍しく動揺していた



「言っておくが、俺に攻撃の類は意味ないぞ。それは、お前たちが一番知ってるはずだ。なにせ、一番近くでクロスの不死身を見た事があるんだからな。そのうえで、言う。俺と戦うつもりなのか?」


 一つは、<消失する希望の光(ホワイトブレス)>をクロスに放った直後、何もない場所からアイクが突然現れたこと

 そして、


 なんでクロスの身体の再生が起こらないの


 いつまで経ってもクロスの身体は元通りにならず、右腕のみが地面に転がり続けている

 という現状にだ


「分からない、とでも言いたげな表情をしているな。まぁ、それが俺が突然現れた事に対するなのか、それともクロスが蘇らないことに対するなのかは分からないが、俺は親切だからな。特別に俺の能力について教えてやるよ。俺の持つ能力の名は<誘う夢の世界(ドリーム・ワークス)>俺の認識できる全ての生物を強制的に眠らせることができる。そして、俺は自分含めた全ての夢の世界に自由に行き来する事ができる。まぁ、そんだけの能力だ」

「へぇ、ずいぶんと余裕だね。私たちのことを侮ってるの?」

「侮っちゃいないさ、俺はこんな事初めてだからな。俺の能力がバレた上に、その上で俺と戦おうとする人間に合うってのは」

「ふーん、そう」


 この男は、()をついている


 アイクのことを観察しながらダイアは考える。


 この男の説明通りなら、クロスは夢の世界に囚われたままで、この男は夢の世界にずっと潜んでたって事になるけど、それならどうやってクロスを操ったの?

 白昼夢 夢の世界で自分の思った通りに行動できること

 そんな話を聞いたことはあるけど、クロスの場合は夢を見た上で操られてる

 つまり、この男の能力は夢の世界にいる対象を現実世界で自由に操作できる能力、という事になる

 ただ、だとしたらまた一つおかしなことがある。それは、


 なんで夢に堕としたエルフの大人たち全員をそのまま操ってしまわないのか

 そして、なんで夢の世界にずっと身を隠していたのか


 という点だ。ここから考えられるのは、夢に堕とせる人数は無制限だが、操れるのは同時にたった一人のみ

 そして、他人を操っている時は自分の本体を動かす事ができない


「マリカちゃん、アッシュちゃん」

「分かってるよ。まずはコイツを倒して能力を解除させる。現実世界にいるんだからやりようはいくらでもあるはず。クロスは、その後で考えよう」

「そうですね。クロスさんが死ぬわけがないですし」

「…本当にやる気か。俺はあんま気乗りしねぇんだが。それに、俺に勝てるつもりか?」

「そうしなきゃ能力を解かないんでしょ。だったら戦うしかない」

「あと数週間したら俺は帰るし、能力も解除する。それじゃダメか?」

「エルフの子供たちはどうなるの?」

「連れてかせてもらうが」

「論外!」


 そう言い放つと、ダイアは全身から希望の光を放ちながらアイクめがけて走り出す


「マジかよ。自分ごと消失するかもしれないのに、それを全身に纏うって正気じゃねぇ。だがな、お前たちはそもそも大前提として大事なことを忘れてるぜ。それはな、お前たちが夢の世界から自力で現実に帰って来れなきゃ意味がないってことだ!強い精神無き者に俺の能力は越えられない。行くぞ!<誘う夢の世界(ドリーム・ワークス)>世界は夢へと至る」


 そうアイクが言い放った瞬間、ダイアたちは意識を失い全員がその場に膝から崩れ落ちる


 ダァッン!


 かのように見えたが


「はぁ?!なんでお前が戻って来れる」


 ダイアだけは前に倒れ込む寸前に意識を取り戻し、地面が大きくへこむほどの力で大地に踏み込むことで転倒を回避し、それどころかその勢いのままさらに加速してアイクへと迫っていた

 それを見たアイクは大きく驚き、動揺したことで身体が僅かに後ろへと傾いたのを


 ダイアは見逃さなかった


「グォオオオ!イッ、イテェ!」


 ダイアの剣の軌跡は、アイクの右肩から左脇腹にかけて大きく引き裂き、手で無理やり抑えないと臓器がこぼれ落ちてしまうほど深く抉っていた

 そんなダイアの攻撃を受けてアイクは大きく後ろへと飛んで下がったが、負った肉体的なダメージは確かなもので立ち上がる事ができずに手で身体を抑えたまま膝を地面についていた

 しかし、それをダイアは追撃することはしなかった

 それは、


「やっぱり不死身なんだ。でも、痛みはある。オーバーロードってのはただ死なないだけなんだ。不死身を永遠に殺し続ける方法なんていくらでもあるし、死なないだけで普通の人間と大差ない。なるほどね、これなら勝てる」


 自分自身への圧倒的な自信。自身の持つ力ならアイクに勝つ事ができるという、絶大的な自信から追撃はしなかった

 ダイアは、今の一撃で理解していた

 クロスよりも簡単に肉体へとダメージを入れる事ができると


「はぁ、はぁ、クソ、よく分かってるな。確かにオーバーロードは不死身だ。だが、無敵なわけじゃない。結局精神は肉体に引っ張られるし、当然痛みだってちゃんとある。ただ、普通の人間だったら俺の肉体に傷をつけることすらかなわない。オーバーロードの精神が肉体に引っ張られるように肉体は魂に引っ張られこの世界という低次元から魂の領域である高次元へと引っ張られるからだ。本来ならオーバーロードか、もしくは人を超越した攻撃力を持つ何かでなければダメージを入れることはできない」


 そう言いながら、アイクは身体を抑えていた手を放し立ち上がる

 アイクが手を放したところには、すでにかすり傷すら残っていなかった


 なるほど、肉体を高速で回復させる手段も持ってるのか。まぁ、当然か。そうじゃなきゃ不死身でも意味がない


「ふーん、まだ説明してくれるんだ。まだ、余裕があるん」

「だが!ダイア、お前はおかしい!なんでオーバーロードのお前が夢の世界からこっちへと戻って来れるんだ!」

「?何言ってるの。別に大したことないじゃん。こっちに戻る方法。()()()()()()()()()()でしょ?向こうの世界で」

「それがおかしいんだ。一瞬で自死するという精神力には驚嘆するが、おかしいのはそこじゃない。お前が夢の世界で死ねる事がおかしいんだ。夢の世界だろうと現実の世界だろうと、オーバーロードが死ぬという事はありえない。夢の世界で死ぬ事ができる超人的な精神力を持った人間だけが現実に帰ることができる。それこそが、俺がここにきた理由。複数人いるオーバーロードに対して俺が対応するように言われた理由だ」

「ふーん、だからクロスはいつまで経っても現実に帰って来れずに操られていたんだ。でも残念だったね、オーバーロードはクロス一人だけ、私たちはただの人間だよ」

「そんなわけがあるか!少なくともお前はオーバーロードのはずだ。じゃなきゃ、オーバーロードの第三フェーズ、()()()()()()()()()ができるわけがない」

「…」


 第三フェーズ?それに、光そのものへの干渉って、もしかしてコイツも私と同じでこの光を操る事ができるの?

 ここに来て急に謎が増えてきた


「うっ、ここは、はっ!ダイアさん!」

「帰ってきたんだアッシュちゃん」

「はい!それで、状況は?」


 ここで夢の世界から帰ってきたアッシュが地面から急いで立ち上がり、短剣をふたたび構え直す

 しかし、


「見ての通りだよ」

「…なるほど。マリカさんは」

「…分からない」


 マリカだけはまだ夢の世界にいるのか、一向に起き上がる気配が見えない


 …コイツの言っていたクロス以外のオーバーロードって話。もしかしてだけど


「アッシュも起き上がってくるのか。クロスの記憶通りだな。このパーティー、平凡な実力者なんて一人もいない。これで全ての生物を無条件で支配できる能力を持ってるマリカにまで起きられたら面倒だ。速攻で倒させてもう」

「私たちに勝てると思うの?能力が通じない私たちにあなたが。正直、ただの戦闘だったら負ける気はしないんだけど」

「ふっ、確かに素のままの俺はお前より戦闘力という面では負けるだろう。素のままだったらな」


 そう言うと、アイクは自身が羽織っているコートの内側へと手を伸ばす


 武器?いや、コイツの言葉通りなら武器はありえないか。だとしたら、何か特別な、この状況を逆転する事ができるようなアイテム?


「ダイアさん、気をつけてください。わずかにですけど、コートの内側から魔力の反応を感じます。サイズは小さいですけどもしかしたらとてつもない魔道具かもしれません」


 そのアッシュの言葉に、一瞬、ピクっとアイクの身体が硬直する


 …魔力なんて感じないけど、アッシュが言うのならそうなんだろう。それに、


「凄いな。大きさまで分かってるとなると、相当な感知感覚を持ってる。ただ、」


 今までアッシュのおかげで、クロスですら気付かない罠や仕掛けに気付けた場面がいくつかあった

 でも、


「圧倒的な力の前では無力だ。使ってやるよ。俺オリジナルの身体強化魔法を」


 そう言うと、アイクは3本の注射器を取り出した。当然のことながら注射器の中は液体で満たされており、それぞれ、紅、藍、翡翠の色をしていた 


「…魔法薬、ですか」


 それを、アッシュとダイアは困惑した表情で見ていた

 それもそのはず


 魔法薬 薬を摂取する事で、付与しておいた魔法を薬が完全に体内で分解されるまで使用する事ができる

 効果時間には、個人差がある


 この説明文を聞くと便利なものだと思うが、実際はここまで便利ではない


 魔法の解除は自らの意思ではできず、摂取量を誤れば即死。体内の魔力が尽きても魔法を無理やり発動させようとして身体が衰弱して死

 摂取してから効果が出るまでまでは時間がかかり、しかも付与できる魔法は練習すれば誰でも使えるような簡易なもの、二人からしてみれば、なぜそんなものを、という思考に囚われてもおかしくはないものだ


 だがここで忘れてはいけないのは、それは一般的な魔法薬における場合、ということだ


「俺が俺の身体に合わせて特別に調合した身体強化薬。それに、俺の身体の内臓、骨格、筋肉、血管、神経、そういった全てのデータを元に、人力では不可能なほど精密な<身体能力強化>を付与した。そして、最後に、<契約>」


 契約 その言葉を聞いた瞬間、


「…みんなを避難させた方がいいね」

「そうですね。私がやります。数秒で戻ってきますけど、気をつけてくださいね」


 ダイアとアッシュは警戒度を大幅に引き上げた




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