違和感
「あっ!皆さん!クロスさんがやっと帰ってきましたよ!」
そう言いながらアッシュの指を指す方をダイアたちが見ると、そこには手を振りながら歩いて近づいてくるクロスの姿があった
「どこまで行ってたの?もうみんな朝ごはんを食べちゃったよ」
そう言いながらダイアはクロスの全身を眺める
朝食の前に軽く散歩に行くと言って出て行ってから一時間。クロスが急に思い立って行動することは今まで何度もあったけど、ただの散歩で一時間はさすがにちょっと長いよね?
「外で何か珍しいものでも見つけた?」
「いや、特にはないかな。あ、でも自然は綺麗だったぞ。葉の隙間から差し込む光が幻想的でさ」
「へー、それはいいね」
「ダイアも明日の朝一緒に見ようぜ」
「うん!」
…何もなかった?
「ねぇ、ダイア」
「うん、マリカ」
やっぱりマリカも感じてるみたい、この、本当に分かりづらいけど、クロスに感じる小さな小さな違和感
こういう時は大抵クロスに何かがあった時だけど、口に出さないってことは
「クロス、私たちに何か隠し事してない?」
「え!?…いや、特にしてないよ」
「ふ~ん、ならいいんだけど」
うん、自然だ。隠し事してない?って聞かれてドキッてしない人なんていないし、一瞬考えてたみたいだから、特に隠し事してるわけじゃなさそう
だとしたら、なんだろう、このクロスから感じる妙な違和感は
「うわ!なんじゃこりゃ!料理に虫が入ってるぞ!エルフに昆虫食の文化があるっていうのはほんとだったのか」
「なんだ、クロスは虫が苦手なのか?」
「無理無理無理!虫は見るのも無理だし、触るのなんてもっと無理!喰うのなんてなおさら」
「でも、ダイアたちは何も言わずに食べてたぞ?」
う~ん、言動はいつも通りなんだけどな、
「え?ダイアこれ食ったの?」
「うん、食べたよ」
「そういえばダイアは俺と違って虫苦手じゃなかったな」
「う~ん、それもあるかもしれないけど、別に味が良ければなんでもよくない?」
これは、ダイアが本心から思っていることだ。あまりにもひどいものは嫌だけど、大抵の料理で飾りつけなんて興味ないし、おいしければなんだっていい
そういえば、前に城で食べた、見た目だけがやけに豪華で、しかも、冷めきってた肉はまずかった
珍味だかなんだか知らないけど、みんなしておいしいっていってるのはきもかったな
「よくない!ていうか、これおいしかったの?」
「うん」
え~ マジか~ え~
そう言いながらクロスが虫料理に箸を伸ばすのをためらっているのを見て
やっぱり、いつも通り。でも、だったらこの違和感を感じるのは変。あの日から、クロスは私たちに隠し事をあまりしなくなった。それに隠し事をしていたとしても聞けば答えてくれる
なら、この違和感はなんなんだろう
「もう、クロスったら、虫料理を食べれるようになってもらわないと困るぞ?私の夫としてこの国に暮らすことになったら、虫料理を食べないなんてことはできないんだからな」
ビキッ
「あはは、ユーシアったらまだそんなことを言ってたんだ。でも、食べたくないって言ってる人に無理矢理食べさせるのはよくないよ。ほら、クロスも無理なら無理ってちゃんと言って。私が作ってきてあげるから」
いや、そんなことはどうでもいい。それよりもユーシアだ。昨日初めて会ったばかりなのにクロスを夫にするとか言って、明らかにクロスが戸惑ってるじゃん
最近ようやく私たちのことを意識しだしたみたいなのにー、もう!
それに、
きゃー、見て、クロス様よ。
今日も美しいわ。このままずっとこの国にいてくださったらいいのに
私さっき、クロス様から挨拶してもらったのよ!
なにそれ!ずるい
クロスはエルフたちから絶大な人気があるみたいだし、それもこれも
「いや、ちゃんと食べるよ。せっかく俺のために作ってくれたものだから、その想いを無下にすることはできない。それに、ダイアの言う通り、見た目で判断するのは良くない。大事なのは味だ。食べたくないっていうのは、一口食べてからでも言えるからね」
クロスがかっこよすぎるのがいけないんだよ!全く、なんでこんなにかっこいいの!自分に対して自信満々で強引なところも好きだし、たまに出るダメなところも、かわいくて好き。もう全部好き
……私も、ユーシアみたいに直接口で言った方がいいのかな
「クロスさん、残念なところが目立ちがちですけど、ちゃんと行動もかっこいいですよね」
分かる…え?
「アッシュちゃん!?」
「おいおい、ちゃんとってなんだよ。いつも俺はかっこいいだろ?」
「…ソウデスネ」
「おいちょっと待て、なんだ今の間は。それになんでカタゴトなんだ。おい、どこに」
「ダイアさん、食べ終わるまで時間かかりそうですし、私たちは先に捜査資料を読みに行きましょう」
「あ、うん」
「おーい、お前らどこに、おーい」
私、もしかしてだけ、少しどころじゃなくてかなり焦らないとダメなのかな?
クロスがちょっと変なのは、まぁ、時間が経てば分かるかな




