同じ依頼を受け続けるのはおもしろくないと思う。
「なるほど、つまりアンタたちは昨日遊んでたから来なかったんだね」
「ハハッ!なんとも仲のいいことじゃないか」
今俺たちはギルド長室で、俺とダイア、イメルダとギルド長という形で向かい合って座っている
なんでこうなっているのかというと、イメルダに
「アンタたち、ちょっときな」
と言われて大人しくついていったらこうなった
「えっと、私たちを呼んだ理由はなんですか?」
「そんな警戒しなくても大丈夫だよダイア。今回はただ単純に依頼について話したいことがあったからだよ」
「?依頼は達成だろ?達成報酬を渡す以外になんかあるのか?」
「まぁ、そんな焦んなよ。これはお前たちにとっても悪い話じゃないぜ?」
ギルド長のその言葉に、俺は思わず眉間にしわをよせる
俺はこの時、ある重大な問題を抱えていた
昨日有り金をほとんど使いつくしてしまい、金がないのだ
しかも、今日は両親が帰ってこない日でありメシは買って食べるように言われていたのだが、いかんせん金がない
報酬をもらえるかどうかで今日メシを食えるかどうかが決まるのだ
「どういうことですか?」
「お前たちの採集した薬草なんだがなぁ。実は状態が非常に良くて依頼主から感謝の言葉を伝えて欲しいって言われてな」
いらない。正直そんなのいらないからお金が欲しい
「それで定期的に薬草を卸してくれないかということだ。ようはお前たちに指名依頼がきたんだよ」
「…それの何がいいんだ?」
無意識に低い声が出る
「まぁ、依頼主によるんだが基本的には報酬が高くなるな」
ほう…
「指名依頼を受けた冒険者ってのはだいたいが実力を持っててなおかつ信頼の厚い冒険者だ。普通は受けれるようになるまでには時間がかかるんだが、今回は例外だ。どうする?」
報酬が高くなるのか…
「……ダイアはどうしたい?」
「…え!?私?」
「あぁ。俺たち二人で冒険者をするんだしダイアの意見を聞きたい」
「う~ん。私はやってもいいと思うけど。収入が安定するんでしょ?」
「ああ、それはギルドが約束しよう。必ず依頼料は支払うと」
「それなら私はやるには一票かな。でも、最終決定はクロスに任せるよ」
ダイアがそういうと全員の視線が俺に集まる
う~ん、ちょっと悩むが
「断る」
「そうか、受けてくれ…え?断るって言ったのか?」
ギルド長が驚いた目で俺のことを見てくる
「そうだが」
何を驚く。どうしたいと訊いたのはアンタなのに
「いいのかい?クロス。こんな機会滅多に来るもんじゃないよ」
「いや、正直興味がない。それにこんなのはわざわざ俺たちがするもんじゃない。依頼主も、もっと薬草採集を専門としている冒険者に頼めよな」
「本当にいいのか?もうこんな機会はこないかもしれないんだぞ。なんだったらエメラルドに推薦したっていい」
「くどい。俺はやらないといったらやらない」
「ダイアもそれでいいのかい?」
「はい、クロスがやりたくないんだったら強制したくありませんし」
「分かったら早く依頼の報酬くれよ」
その後、しばらくギルド長はたくさんの条件を出してきて俺を説得しようとしてきたが
”やりたくない”
と言い続けて最終的にはギルド長がおれる形となった