衝突
翌朝、時間にして大体7時ごろ
「すぅ、はぁ〜。なんだろう、ここが自然に囲まれてるからか、朝の空気がとても澄んでるように感じるな」
俺は、森の中を一人探索していた
別に朝から本格的に探索しようというわけではない、これはただ単に、久しぶりに目覚めが良かったから朝飯の前に軽くみて回るか程度のものだ
どこを見ても木と植物しかないが、それでもこの森の中散歩するというのはクロスにとっては新鮮なものだった
「ふぅ、すっかり冬の景色に近づいてきたな」
夏だったらもう陽は高いところまで登っているだろう。だが、その陽はまだ寝ぼけているのか、少しだけベッドから顔を覗かせているだけ
あたりはまだ薄暗く、木々の枝や葉の隙間を縫ってさすわずかな光が朝の露を美しく煌めかせ、自然の壮大な美しさを際立たせていた
そしてその美しさ、暗さ、冷たさが
「…久しぶりに一人でいるな」
クロスにとってはたまらなく気持ちがよいものだった。今のクロスの頭の中に、エルフの探索のことなどは欠けらもない
それどころか、
「何も考えずにいるの、久しぶりだな」
ただ漠然と、なんの目的もなく歩いているだけだった
…勢いでこんなとこまで来たけど、よく考えたらずっと何かをし続けてるな、俺も、ダイアたちも
地面に降り積もった葉を、サクサクと音を立てて踏みしめながら、心の赴くままに歩き続ける
今回の事件、解決したら…しばらくは、なにも
そんな風に考えていたところで
「あ」
「…」
クロスは一人の男に出会った。その男の纏う雰囲気は今までに感じたことがない独特なもので、冷たい印象を放つ白髪を漆黒の装いがより際立たせていた
普通の人なら思わず立ち止まって見てしまうような、そんな独特な雰囲気を放っていた
結局、こうなるのか。これも運命ってやつか?
だが、クロスにとってそれはどうでもいい事だった
「拘束させてもらう」
「はぁ、着いた途端これか。転移もなんでか失敗した。帰ったらアイツに文句言ってやる」
「俺から逃げられるつもりか?」
「お前、オーバーロードだろ」
「!」
なんだ、コイツ。なんで俺がオーバーロードだと分かった。いや、それよりもオーバーロードを知ってるってことは
「俺もオーバーロードなんだ」
「<1÷2=1>」
手加減なんてできない。オーバーロードってことは、最悪アレンと同じぐらい強い可能性もある。
だから一瞬で殺す。魂ごとこの世界線から消滅させて確実に殺す
それが、俺にできる、唯一オーバーロードを殺すことができる方法だ
エルフの子供たちも、そのあと並行世界から連れてきたコイツにゆっくり聞けばいい
まずは安全の確保が先だ
「思い切りがいいな。だが、お前は俺を認識した時点で敗北している」
クロスとその男が立っている世界が歪んでいく
俺の能力<ダイアモンド・ロジック>で何かを消滅させたい時、そこにはある一手間が必要となる
それは、
クロスはダイアたちに会いに行った時のように、空間を引き裂き、その中に右上半身を入れる
空間の中へと入れた身体の場所、引き裂かれた空間の繋がる先は
ガシッ
「掴んだぞ、お前の身体を。これで、条件は整った」
その男の真後ろに繋がっており、クロスの手は確実に男の肩を掴んでいた
「触れる事で発動するタイプか?弱いな」
「そんなわけないだろ」
クロスはその男を、空間の中、並行世界へと繋がる扉の中へと無理やり引きずり込む
男が連れて行かれた先、並行世界、そこには先ほどと全く同じ光景があった
木、植物、降り積もった葉、そして、もう一人のクロスとその男
「なるほど、理解した。世界、いや可能性か?に干渉する能力か。弱いと言った言葉は撤回しよう。強力な能力だ」
「余裕だな。だが、お前はもう死んでいるんだぜ。俺がこの世界に引き込んだ時点でお前の負けは確定している。後は俺が元の世界線に帰って世界線を統合することでお前は存在ごと全てが完全消滅する。(1+1)÷2=1は問題ないが、(2+0)÷2=1は赦されない。これは別に俺の能力がじゃなくて、そう世界によって決められている。このことを聞いても余裕でいられるか」
そう言いながらクロスは再び扉をくぐって元の世界へと帰っていく
だが、それを見たところで
「やれやれ、アイツがただの覚醒者や超越者じゃなくてオーバーロードで助かった。アイツが、不死身でよかった」
その男の冷静さには一切の曇りが生まれない
「もう聞こえてないだろうからもう一度言ってやろう。お前は俺を認識した時点で敗北している。なぜなら、お前が俺を見た瞬間には、俺は能力を発動し終えている。…せっかくだ、こんな機会滅多にない。もう一人の俺にも宣言してもらおうか」
「「<誘う夢の世界>世界は夢へと至る」」




