エルフって、そうなの?
「<創造>」
俺がそう唱えると同時に、俺の身体に魔力が纏わり付き、次の瞬間には、エルフたちが来ているのと似たようなデザインの服を着ていた
「凄いなクロスは!そんなこともできるのか!」
「無属性の魔法、しかも<創造>。それは失われた魔法のはず。それを詠唱を必要とせず発動するとは。お主、一体何者じゃ」
「なんだお爺、それほど凄い魔法なのか?」
「凄いなんてものではありませぬぞ。<創造>は無から有を生み出す究極の魔法の一つ。人類の古代の文献を読んだことがありますが、そこに書いてあった術式や魔法言語が非常に難解でワシは習得を諦めたのです」
へー、俺以外にも<創造>を使える人間が過去にいたのか
「爺さん、魔法に詳しいのか?」
「お爺は魔法に詳しいなんてもんじゃないぞ。エルフの中でも最高齢の478歳。誰よりも魔法のことに詳しくて、今でも現役。魔法ありで勝負したらお爺に勝てるエルフは誰もいないんだぞ」
意外だ。ただの姫さま好きのお世話がかりかと思ったら、実は凄い人だったんだな。ていうか、478歳て。エルフの平均寿命は250ぐらいだったはずだが
その中でも長命なんだな
「姫さま。そう言ってくださるのは嬉しいのですが、ワシももういい歳です。そろそろ時代に託さなければなりませぬ。」
「ははは!爺さん、それはもう聞き飽きたぜ」
「そうだぞ?お爺は私が生まれた時からずっとそう言ってるではないか。一体何年間そう言ってるのだ」
ただ、長く若い身体を保つことができるエルフでも478にもなれば人間みたいに身体は老いるんだな
そういえばエルフの死因のほとんどは老衰による寿命死じゃなくて病気だって聞くが、それはまるで、長寿の木が外側からではなく内側が腐ることで死ぬ現象に少し似ている気がする。もしも、エルフが全員適度な運動と食事をとり続けたら一体何年生きられるのだろうか。気になるな
「姫さまが生まれる百年ぐらい前から言ってますから、そうですね、およそ二百年は言ってますね」
「……は?」
「ん?どうしたのだ?クロス」
姫さまが生まれる百年前からで二百年ぐらい?ってことは
「姫さま百歳超えてんの?」
「む、女性に年齢を聞くのは感心しないな」
「あぁ、すまん。てか、その考え方エルフにもあるんだ」
嘘だろ?どっからどう見ても最近高等学校を卒業しました、みたいな容姿してるのに、これで百歳超えてんの?
「そういうクロスは何歳なのだ?私の見立てじゃ、そうだな、肉体的に全盛期のあたりだから百五十歳とか」
「もしそんな歳だったら俺はとっくに墓に入ってるよ。俺はまだ十五だ」
…そういえば俺、肉体が滅んでも死なないらしいけど、寿命ってどうなんだ?時が来れば魂が滅ぶのか?
それとも、本当にもう死なないのか
「なに!クロスはそんなに若いのか!」
「その若さであれほどまでの実力と知識を持っているとは、人間とはそこまですごいものなのだな」
「なに言ってんだ。俺が人間の中でも飛びぬけて天才だからに決まってるだろ。ていうか、俺以外にも人間にあったことぐらいあるだろ?そいつは俺ほど強かったのかよ」
「いや、私たちの里を訪れるのはだいだい商業目的の商人ばかりで,あとは……」
続きを言おうとして、姫さまは暗い顔をして黙り込みうつむいてしまう
それを見てクロスは瞬時に理解した
「姫さま。忘れておりますぞ。もう一種類」
「エルフを誘拐しに来る連中だ」
「……」
人間たちがエルフを誘拐する理由はこいつらを見て改めて理解した。人間どもが誘拐したくなるわけだ。だが、どんな理由があろうと誘拐なんてしていいわけがない。しかも、こんな大規模な誘拐事件を起こしやがって
「クロス、私たちの力になってくれるといったな」
そういいながら顔をあげた姫さまの目にはうっすらと涙が浮かんでいた
「頼む。どうかクロスの力を私たちに貸してくれ。攫われた子供たちを皆親の元へと返してやりたいのだ」
そういった姫さまの言葉に、
攫われた子供たち?
俺はある違和感を覚えた
「今回誘拐されたエルフたちは全員が子供なのか?」
「そうだ。産まれてから二十年とたっていない子供たちばかりが攫われてしまった」
ちょっと話が変わってきたな。例年にない大規模な子供たちの誘拐…ね。無差別な誘拐ならエルフの奴隷をこの期を逃さずに増やそうとした極悪非道で愚かな人間たちがいるってだけですんだが、子供だけを狙った誘拐か。昔、似たような事件があったな。その時は確か、とある宗教団体が才能あふれる信者の子供たちを集めて儀式の贄としたって話だったが
犯人たちはエルフの子供たちを何かに使おうとしてるんじゃないか?それも今までの用途にない特別なものに
そしてそれは今まで実行不可能だった。なぜなら一度に大量の子供が必要になるから。そうでなきゃこんな時期にわざわざ国際問題になるような事件を起こすわけがない
これは推測の域を出ない妄想に近い話だけど、今回の事件、誘拐犯を見つけて壊滅させるだけじゃすまないな
大量の子供たちを使って何をするつもりだ?
いや、そんなのはどうでもいいことだ
「任せろ。俺たちが全員救ってみせる」
「本当か?」
「ああ。だからそんな不安そうな顔をするな。俺たちに任せておけ」
「クロス殿、俺たちというのは。もしかしてクロス殿と同じぐらい強いお仲間がいるのですか?」
「俺と同じぐらいか。そうだな、」
三人とも俺とは違うベクトルで強いからな。ダイアは一対一、マリカは対生物、アッシュは暗殺
俺は手数が多いからなんでもできるけど、一番得意なのは超広域を超火力で一瞬で消し飛ばす殲滅なんだよな。ほんとは細かいのはあんまり得意じゃない。
「そうですか。では、そのお仲間たちは美しいですか?」
「……それはどういう意味だ?」
「エルフの価値観に、美しいものは魂も清く正しいというものがありまして、それで」
ああ、そういうことね
「言いたいことは分かった。それなら大丈夫だと思うぞ。むしろ、俺が受け入れられるか心配だ」
「?クロス殿が心配?まさか、むしろ大歓迎されますぞ」
「いや、お前らさっき俺の顔を見たうえで殺そうとしてきたじゃねぇか」
「アレはクロスが身体中に精霊様の怨念を纏っていたからだぞ」
「そうじゃなきゃお前を攻撃するなんて誰もしねぇよ。たとえクロスが悪いことをしても誰も疑いすらしないぜ」
「それはそれでどうなんだ」
たびたび思っていたが、エルフはちょっと偏った思考を持っているよな。いや、まぁ、その国の文化によって考え方が変わるのは当然なんだが、それでもいささか変だと思う。
それに、自然信仰という話だったが、どっちかというと精霊信仰に近いものを感じるな
自然を愛するのは精霊が自然の化身だから、ってのに近いと思う
ほう、よく精霊が自然の化身だと分かったな
!急に話しかけてくんなよ。……そういやお前精霊凱って名前だったよな。お前は何の精霊なんだ?
言ったであろう。我は光、我は希望。この世界で唯一の存在であり、すべての精霊の原点であると
前の部分以外は今初めて聞いたよ。てことはあれか?この世の精霊はお前から生み出されたってことか?
そうだ。我はそもそもこの世の希望が集約して生み出された存在だ。だが、我一人では見ることができる世界は限られる。だから、我は我の力を分散させ、世界にあふれている自然と力を同化させることで世界中の至る所に力の弱い精霊を生み出した。結果的に精霊は自然に依存した存在となったが、ここのように自然に満ち溢れている場所では精霊たちは多大な力を振るうことができる
なるほどな。そして、エルフは人間には分からない精霊を知覚できる存在。必然的にここに住み着くようになり、精霊への信仰ができたってわけか
「ついたぞ。ここが私たちの里だ」
「へ~ここが、ってどこだよ」
「?私たちのことを認識できたのにこれが分からないの?ほらここだよ」
そう言いながら姫さまは近くの木に触れると、そのまま木の中へと消えて行ってしまった
「なにこれ」
そう言いながらも、クロス姫さま同様木に触れると、クロスの手は触れた部分から透明になった
これは、隠蔽魔法、いや、領域魔法?それも俺が感知できないほど高度な……アレンがこの国に行くのを俺に進めるわけだ。この国についてちょっとしか経ってないのにもう多くのことを学ばせてもらった
……アレン。アイツ、今頃なにしてんのかな。粛清してんのかな、それとも、魔死領域の魔物を間引いてるのか。いや、普通にカウンセラーをしてんのかな
世界の危機を考えたら、こんなところにいないで俺もアレンと一緒に魔死領域の魔物を殺すべきなんだろうな。アイツからしたら、このエルフの誘拐はどう写るんだ。世界を救うためだったら……
「どうしたのだ?クロス。こっちだぞ」
そう言いながら、頭だけをひょっこりとだした姫さまが俺の顔を覗き込んでくる
「…あぁ、今行くよ」
こんなことを考えるのはやめよう。まだ時間はあるんだ。考えるのは…全部終わってからでいい
「きゃー!イケメンよ!とびっきりのイケメンよ!」
「あなたどこから来たの?私イレイナっていうの。向こうにおいしいケーキ屋さんがあるんだけど一緒に行かない?」
「いや、この子は私と行くのよ。ねぇ、お兄さん。向こうで一緒に休憩しない?」
「ねぇ、君。名前はなんていうの?良かったらエルフだけにしか許されていない、歴史書を一緒に読まないか?」
「……これは」
「こら!クロスは私が連れてきたんだから私のものだよ!」
「えぇ~!姫さまずるい!」
「そうだそうだ!姫さまの横暴だ!」
「うるさい!」
「言ったでろう。クロス殿なら受け入れられると」
そうは言ったけど、エルフって
「ただのメンクイじゃねぇか」
サブの話は、週一関係なく書けたらあげる
と、思う




