国際問題
こっから先、暗めの話し多くなる
「やっと帰ってきたか、お前たち」
冒険者ギルドに着き、ギルド長の部屋へと案内された俺たちは、開口一番にそんなことを言われた
「なんだ?そんなに急ぎの要件だったのか?」
「ああ、そうだ。とても急ぎの案件だ。お前たちにしか頼めない緊急の案件なんだ」
「俺たちだけにしか?」
「あぁ、そうだ。そもそもの話だが、お前たち、あの後各国がどんな動きをしてたかしっているか?」
「俺たちが知るわけないだろ」
「ちょっとクロス、たちって言わないでよ」
……え?
「なんだ。ダイア、知ってるのか?」
「私だけじゃなくてマリカとアッシュも知ってると思うよ」
「マジで?」
「そうだね。一般の人と同じ程度には知ってるよ」
「新聞を読めば一番最初に目につくと思いますしね。クロスさん、新聞を読んでないんですか?」
「……」
「クロスって毎日私たちより遅くまで寝てたし、新聞を読んでるとこ見たことないなぁ~とは思ってたけど」
「クロスさん、新聞は読んだ方がいいですよ」
「そうだぞ。お前も英雄になるのだから新聞を読む習慣はあったほうがいいぞ」
「なんだよもうみんなして新聞、新聞って。そんなに新聞が大事なのかよ!俺のことをもっと大事にしてよ!」
「えぇ~どういうキレ方?」
「逆ギレ?なんですか、これは」
「ところで一つ気になったんだが、英雄になるのだからとはどういう意味だ?俺たちはまだ英雄になるための条件を満たしてないだろ。」
「お前の情緒はどうなってるんだ。急にスンとなるな。気持ち悪い」
「それにこの前の粛清騎士の一件。俺たちは一応依頼失敗という扱いになるはずだが。依頼失敗直後に英雄へと昇格というのも変な話だ。なにか俺たちにやらせたいことがある。そしてそれは、今回俺たちを呼び出したことに関係している。違うか?」
「いや、間違ってないが」
「聞かせてみろ。話によっては受けてやらんでもない」
「なぜ上から目線なんだ。まぁ、それでもお前たちにしか頼めないから話すが」
「…」
妙だな。なぜ俺たちにこだわる。俺たちに依頼が来るということは必ず戦いが起こる依頼であるということ。だが、それならば別に俺たちでなくてもかまわないはずだ
「粛清騎士の一件の後、各国の王が集い会議が行われた」
「だろうな」
もう終わったということは転移門を使ったのか。一回の使用でも大きな費用がかかるはずだが
粛清騎士がリークした情報をそれだけ重く受け止めたのか
「いろいろと省略するが、会議の結果、世界中の英雄以上の冒険者はみな召集をかけられることとなった。」
「へー、そんなことになってたんだ」
「…つまりあれか?本来は英雄以上が対象の依頼を俺たちに受けてほしいと」
「そうだ。引き受けてくれるか?」
「…概要は。内容しだいだ」
はじめての英雄級の依頼か。楽しみだな
そう考えていた俺は、すぐさま考えを改めさせられることになるのだった
「お前は精霊国家エルフーンを知ってるか?」
精霊国家エルフーン 世界の中でも一番規模が小さい国
人口は3000人程度 神樹のある聖域を住処としており、自然と共存していると言っていいほど、自然に依存した生活をしているらしい
そして、最大の特徴は、すべての住人がエルフであるということ
「知ってるが、そこで何が出たんだ?」
「出たというのは正しくはないな。正確には消えた、が正しい」
「消えた?どういうことだ?」
「精霊国家エルフーンでは今、かつてないほど大規模な誘拐事件が起きている」
「は?意味が分からん」
誘拐が起きているというのはまだ理解できる。エルフは人間よりも優れた容姿、魔力、精霊との高い親和性、そして、倍以上もある寿命を持っている。奴隷や、戦争兵器、または実験材料としても有用性がある。
だから昔からエルフ狩りが密かに行われていて人類とエルフの仲が悪い。
だが、それは今に始まった事ではない。かつてないほど大規模だとはどういうことだ?
「例年の誘拐数は分かるか?」
「…10人ほど」
「知ってたか」
まぁ、エルフと人間の歴史を学んだ時にな。嫌だと思ったことは案外忘れないもんだ
「なら、この一週間で何人誘拐されたか当ててみろ」
例年10人だから、多かったしても10よりはすくないくらいだよな。それも一週間だし
「…6人ぐらいか」
そう考えて言った俺は
「違う。24人だ」
「なんだと?!」
ギルド長の言葉に心底驚いた。
と、同時に何かに、自分の物ではないような激しい怒りを感じた
「ギルド長さん、それ、本当のことなんですか?」
ダイアたちも、信じられない、とでも言いたげな表情をしている
だが、
「悪いがこれは本当のことだ。」
「そんな」
どうやら変えようのない事実らしい
「まさか俺たちが帰ってくるまで何もせずにいたわけじゃないよな。他の冒険者たちはどうなった?」
「今日までにプラチナ以上の冒険者を20組ほど送り込んだ」
「20組も!?」
20組。それは数十年前に起こった魔物の異常増殖による大氾濫、スタンピードの際に動員された冒険者の組の数と同じだ。この時の被害は凄まじく都市は数個壊滅。この時の冒険者たちが皆プラチナ以上なのかは定かではないが、それでもかなりの数だ。戦力にしたら相当なものだろう。王都には多くの冒険者がいるが、それでもプラチナ以上となるとそんなにはいない。おそらく他の都市、国からも派遣されているはずだ
だが、俺たちに依頼が来るということはまだ依頼が解決してないってこと
「それで?進捗は」
「…全組消息不明だ」
「は?」
全組消息不明だと?
「その事を知ってて全ての国は英雄以上を召集したのか。ありえないだろ。これはもう、一つの国だけで解決できる問題じゃない」
「クロス、お前なら分かるだろ、優先順位というものが」
「…エルフーンはその事を受け入れているのか?」
「この誘拐事件が終わってから召集に行くということだ」
「早く場所を教えろ。今すぐ行く。みんなもそれでいいな」
「いいけど、クロス」
「なんだ?」
「ちょっと怖いよ?」
怖い?なにが?エルフを攫ってる敵に対してか?…いや、
「…俺がか?」
「うん、よく分かんないけど、凄い怒ってるのは分かる」
「そうだな…俺は怒ってる。自分でもよく分からないが、今、激しく怒ってる」
「行くのはいいけど、ちゃんと調査と準備をしなくちゃ、ね?」
「そうだな。…ありがとう、ダイアのおかげでちょっと冷静になれたよ」
「それならよかったよ」
「お前たち、気をつけろよ。これは、」
「国が絡んでる。だろ?」
「…」
冒険者の英雄以上の召集なんてのは国のトップや、権力を持つ人間、そして俺たちのような高位の冒険者にしか知り得ない情報だ
さっきダイアが、そんなことになってたんだ、と言っていた。そこからも一般の記事には書かれてないことが分かる
そんな中で、英雄以上を動かさないこのタイミングで、エルフの大量誘拐なんてのをやってくれた
確実に国際問題になるし、場合によっては戦争になりかねない。つまり今回の依頼は、誘拐の妨害、誘拐されたエルフの救助、誘拐グループの壊滅、黒幕の判明、そして、国際問題にならないよう事態を収めるように動く必要があるということ
まぁ、なんにせよ、卑劣で不愉快な事件には違いない
「各自準備が整ったらギルドに集まってくれ」




