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いずれ最強伝説  作者: piccle
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俺はまだ知らない

 事件の翌日、冒険者ギルドでの事情聴取を待つ間に俺とダイアはできたばかりのカフェで時間をつぶしていた

 ケーキなどのスイーツを食べ、くだらない話をしながらある程度時間が経ったところで


「ねぇ、クロス。あの夜のこと、ちゃんと私に話してくれるんだよね?」

「…」


 ダイアの方から切り出してきた


 まぁ、当然の質問だよな。記憶を消さなかったんだし、それに、いつかは話さなきゃいけないことでもあったんだろうしな

 本当は俺自身の記憶からも消して、一生元の俺のままでダイアたちと接してた方が関係も今まで通りで問題なかったんだろうけど


「話すよ」


 全部正直に


 それから俺は、ゴブリンロードと戦った時に俺の身体に起こった変化、魔法、そして、俺の精神が変わってしまうことを恐れている、というのを話した

 話を聞いている際中、ダイアは一言も発することなく真剣に俺の話を聞いてくれた


 そういえば、ダイアに嘘をついたことはあっても隠し事をしたことはなかったな

 きっと、怒るだろうな


 そんなことを考えながら顔をあげてダイアの顔を見た俺は


「そっか、クロスも悩んでたんだね」

「なっ…」


 驚いた

 ダイアが微笑みながら俺を見ていたのだ


「怒ら、ないのか?」

「怒らないよ。だって、自分の記憶を封印して、本来の実力も封印して、普通のとはいかないけど人間であろうとしたのって、クロスが私たちとずっと一緒にいたいって思ったからでしょ。それってさ、私たちのことを大切に思ってくれているってことじゃん」

「そう、なのか?」

「そうだよ。そうじゃなきゃ封印なんてする必要なんてなかったよね」


 確かに、そうだな。それに、もしそうじゃなくても、俺がダイアたちとずっと一緒にいたいっていう想いは絶対に間違ってない。あれから今まで封印を解除したままだけど、その想いは何一つ変わってない


「クロスってさ、自分のことを分かってるようで全然わかってないよね」

「え?」

「クロスは自分が思ってるよりも優しいし、自分が思ってるよりも冷たくないし、自分が思ってるより芯がしっかりしてる。たとえ人間じゃなくなったとしてもクロスであることに変わりはないよ」

「!……ダイア」

「だからクロス、もしこのことみたいに悩んで、自分一人で抱え込んで、それで自分の記憶ごと消しちゃおうって考えるくらいなら私に正直に言ってよね。他の人が受け入れられないようなことでもさ、私はクロスのことなんでも受け入れるから」

「ダイア…」

「!…クロス」


 その時、俺は一筋の雫が頬を伝うのを感じていた。


「あ、あれ、なんで」

「あんまり気にしてないつもりでも実は凄い気にしてて、それで安心したら涙があふれるなんてよくあることだよ」

「俺は」

「クロス」


 ギュゥ


 ダイアの優しい声が耳元で聞こえると、俺はいつの間にかすぐそばに立っていたダイアに頭を胸の位置で抱えられた


 …あったかい、感じがする。抱きかかえられてる頭じゃなくて、胸のあたりが、なんだか、明るい感じがする


「ダイアにも、そんな経験があるのか?」

「あるよ。何度もね。まぁ、誰が原因かは、いつか分かってほしいかな」

「あぁ」


 …分かってるつもりだよ。でも、まだ、良く分らないんだ。俺の気持ちというやつが

 昔からそうだ。俺自身がダイアのことをどう思ってるのか分からない。だから、ひどい話だと思うけど、ダイア以外の女の子と交際してみて自分の本当の気持ちを確かめたかった。けど、俺はモテないからそれもできなかった

 結局分からずじまいだ。いつか、ちゃんと分かる日が来るのかな

 今俺が感じている、この感情をなんていうのか


 俺はまだ知らない




 アレンと別れた翌日


「昨日はどこに行ってたの?」

「そうだよ、夜遅くになっても帰ってこなかったから心配してたんだよ」

「お二人ともクロスさんが帰って来るのをずっとそわそわしながら待ってたんですよ」

「「そわそわしてない!」」


 三人から質問攻めにあっていた


 なんて言えばいいかな。アレンのことを言っても問題はないだろうけど。昨日はいろいろありすぎて何を話せばいいのか分からないな


「まぁ、クロスが無事に帰ってきてくれてよかったよ」


 そう言いながらダイアが笑顔を俺に向けてくる


「ダイア」


 …やっぱりだ、この感覚、この前ダイアに本当のことを話して以来、ダイアと話すたびに胸があったかくなるような気がする。ダイアの笑顔を見るたびに、その笑顔を守りたいっていう気持ちが胸の奥底から湧いてくるような気がする

 これは、


「…クロス?」


 なんていう気持ちなんだろう


 気づけば俺は


「ダイア、今日は二人で遊びに行かないか?」


 みんなの前でダイアを遊びに誘っていた


「え?いいけど」

「…」

「クロスさん」


 あ、やべ。何をしてるんだ。俺のせいで若干変な空気になっちまった。今までちゃんと自分を抑えてきたのに、何も考えてなかった


「前約束したろ?今度二人で遊びに行くって!」


 でも、大丈夫。俺は、気付いてない。俺は気づいてないんだ。少なくとも今までの俺を見て二人はそう思ってるはず

 だから、


「昨日会った人から大人数向けじゃないけど2人でなら楽しめるみたいな場所を教えてもらったんだ!2人で行こうぜ!」


 俺は今までどおり気づいてないフリをして、それっぽいことを言って、女の子にモテるために練習した笑顔で誤魔化す

 そうすれば、


「なんだ、そういうことか!突然そんなこと言うからビックリしちゃったよ!」


 二人は俺が何も考えずに言ってると勘違いしてくれる


「そうだよ!ていうか、それ絶対デートスポットでしょ!」

「え?そうなのか?確かにカフェとか、あとはカップル限定のやつとか教えてもらったけど」

「クロスさん…カップル限定の場所がどうしてデートスポットじゃないって思ったんですか…」

「いや、二人組限定でなんかやるのかなと」

「クロスさん、前から言おうと思ってたんですが、貴方は無自覚な女たらしです。ちゃんと考えてから口にしてください」

「いや、俺今までモテたことないし女たらしじゃないだろ」

「は?いや、そんなわけ」

「アッシュちゃん、ちょっと」

「え?ダイアさん、ちょっと待ってください。これはちゃんと言っておかないとクロスさんは…」

「いいからちょっとぉ!」

「ダイアさん!」


 なんでか分からないがダイアがアッシュを少し離れた場所へと連れて行き何かをゴニョゴニョと話している

 時折


「え?!そんなことしてたんですか?クロスさんが変なふうに歪んでるのって絶対そのせいですよ」


 とかなんとか聴こえてくる。なんだろう、超気になる


「クロス」

「?なんだマリカ」

「それじゃあ今日は二人で遊んでくるんだね」

「そのつもりだぞ」

「そっかぁ」

「…」


 こういう時、本当に気づいてなかったらどうしてるんだろう


「なんだ?俺と二人きりで遊べるダイアが羨ましいのか?」

「なっ、そんなわけないでしょ!」


 俺のその言葉にマリカは顔を真っ赤にして否定する


「いや、大丈夫大丈夫分かってるから。ちゃんとお前の気持ちは分かってるからよ、今度マリカとも遊んでやるから」

「絶対分かってない!」

「おいおい、二年間の空白があったとはいえ、マリカのことだぜ?俺が分からないわけないだろ」


 本当に分かってるんだ。でも、


「はー、そういえばクロスってこういうやつだったよね」

「なんだよこういうやつって」

「全く、今度遊ぶって約束、忘れないでよね?」

「おう!」


 俺はそれを誰かに言うことはできない。特にダイアたちには

 だから、


「俺の未来には楽しいことばかりだな!」


 俺は自分気持ちがちゃんと分かる日まで誤魔化し続ける


 ズキッ


 なんだか、ズルいな





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