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いずれ最強伝説  作者: piccle
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狂気の惨状2

お待たせ

 何か、この状況をどうにかできる手がかりはないか

 そう思いながら周囲をもう一度調べていると


 突然


 ギャハハハハハハハハハハハハハ

 ギャハハハハハハハハハハハハハ

 ギャハハハハハハハハハハハハハ


 数百人という人間の、嘲笑うかのような醜い笑い声が施設中に響き始めた


 今度はなんだ?


 そう思いながら警戒していると


「お前たちが計画してやったのか」


 どこかで聞き覚えのある声が聞こえて来る


 この声は…アレンか?まさかアイツが助けに来てくれたのか?だが、


 声がした方を向くとやはりアレンがいた

 しかし、


「…」


 あれはどういう表情なんだ、


 そのアレンの様子は、どこかおかしかった

 服装も、まるでたった今冒険から帰ってきたかのようなほど傷だらけの鎧を装備していた

 なにより、普段は抜くことすらない剣を抜いた状態で二つ装備していた


「俺は間違っていたのか?俺のしたことは間違っていたのか?人は生まれ育ち関係なくキッカケさえあれば誰でも変わることができると、そう考えていた俺は間違っていたのか?」


 まるで自分自身に問いかけるような口調でアレンの口からこぼれた言葉、そんな言葉を


「変われるわけねぇーだろ!」

「バカなんじゃねぇか!」


 醜い声たちがバカにするような口調で否定する


「人は変われねぇんだよ!俺たちは生まれながらに犯罪を繰り返すようにできてんだよ!」

「そうだぜ!そんな俺たちを更正させようなんて考えがちゃんちゃらおかしいぜ」


 なんだこれは、俺はなにを見せられてるんだ。…そういえば場所が変わる前に、あの日のことを知りたければどうのこうのって言ってたな。もしかして俺は、この施設が封鎖されるようになった問題の日の光景を見せられているのか?


 そんなクロスの考えは、間違ってなかった


「何かの手違いでこんなことしたってわけではないんだな」

「まだそんなこと言ってんのかよ!」

「俺たちは同じ最下層のスラム出身の癖に英雄だのなんだの崇めれていて、しかも、俺たちにいい人になれとか上から目線で説教してくるお前にむかついてたんだよ!」


 それにしても、なんだこいつらは


「お前の妻を殺したときはすっきりしたぜ。お前が苦しむ顔を想像してな!」

「最後までお前が助けに来てくれるとかほざいてたけどよ。俺たちがちょっといじめただけで死んじまったぜ」


 ちょっと話を聞いてただけでも気分がわるくなる。なんて、美しくない魂をもつ人間どもなんだ

 不愉快だ


 そうクロスが考えていたことで


 これが、あの日の夜、私たちが犯した間違い


 クロスの頭に中に突然、声が響きだした


 この感じ、<念話>じゃない。どうやっているんだ

 ここでそのことを話す必要性は私たちにはない。だが、お前には、私たちが受けた苦痛を()()()()()()()()

 なに、それはどういう意味だ


 クロスの問いに声は答えない

 代わりに、


「そうか、なら、」


 ()()()()()()()()()


 粛清騎士が行動でもって示した


 スッ


 急に粛清騎士が姿をくらませた

 そのことが予想外だったのか牢屋の中の囚人たちは戸惑い、笑い声をとめる


 あの野郎どこにいったんだ?


 そう誰かが口にした瞬間


 ギィヤァァァァアアアアアアア!


 それに答えるかのように施設中を悲鳴が響き始めた


 なんだ、なにが起きてる


 至る所から響いてくる悲鳴、しかし、その場所を見ようにも鉄格子が邪魔でそっちまで覗くことができない。それをどうにか見ようと鉄格子から身体を密着させたとき、


 ダァンッ!


 クロスの目の前に粛清騎士が降り立った


「!ア…」


 アレン、そう口にする間もなく

 クロスは顔を掴まれ、勢いよく壁に叩きつけられることでミンチ状になって死亡した

 しかし、


「っは!なんだったんだ今の」


 次の瞬間には意識を取り戻していた

 ただし、


「また別人の身体だ」


 施設中には相変わらず悲鳴が響いていた


 今ので理解した。この施設が封鎖される原因になったできごとは粛清騎士が、そして、俺がまた別の人間の身体にいれられているということは


 そこまで考えたところで


 クロスは再び、しゃぶしゃぶ用の肉のように薄切りされて殺された


 ……


 それからどれほどの時間が過ぎただろうか、クロスは何百という死の記憶を追体験することで


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


 体力的にも、精神的にも弱っていた

 どんなに精神が強いものでも発狂してしまいそうなほどの経験をしたのにまだ自我を保てていることを凄いと呼ぶべきか


 よくもまぁわたしたち全員分の記憶を見て正気でいられるものだ。今までの連中は途中で気が狂ったというのに


 クロスにその記憶を見せた存在すら驚いているようだった


「はぁ、はぁ、俺にこの記憶を見せて、どういうつもりだ」


 全ての記憶を見せ終わったからか、クロスは元の身体に戻っていた

 しかし、場所はやはり変わっていたようで、全方位の壁が反り返っており、まるでボールのような空間の中に一人閉じ込められていた


 お前が今ので正気を失ってくれれば楽に取り込むことができたというのに

「取り込むだと、それはどういう」

 だが、お前を取り込む手段がないというわけではない


 そう謎の声が言った瞬間


 ガシッ


 クロスは両側から腕をがっしりと掴まれた

 思わず後ろを振り返ると、そこには


 全身をめちゃくちゃにされた者たちがクロスの後ろにゾロゾロと並んでいた

 この異様な光景に、今さら驚いたりはしない


 クロスが考えるのは


 さっきの殺されかたで元の肉体がまだ残ってるのか


 という、妙に冷静で、特にこの場を切り抜けられるようなものでもないくだらないことばかりだった


 そこには一種の諦めがあったのかもしれない

 魔法が通じない、世界の理が意味をなさない

 そんな存在に対して自分ができることは特にないという、ある意味この状況を受け入れていたのだ


 これがわたしたちが最後に受けた苦しみだ


 そう謎の声が言うと、ボールと縁の上に立つものがいた。悍ましいほどの狂気、激しい怒り、そして、なにより、海のそこよりも深い哀しみをその身に纏う男、粛清騎士だ


 …もし俺がアレンだったら、この状況をどうにかできたんだろうな。もし俺がアレンだった…ら…!俺がアレンだったら?


「苦しみ?当然の報いの間違いだろ?」


 そう言いながら、クロスは不敵な笑みを浮かべる

 俺が正気を保てた理由、それは、俺がアレンの事を知っていたからかもしれない


 なんだと…


 謎の声に若干だが怒りが篭るのを感じるが、そんなのは気にしない


 もし、アレンのことを知らなかったらただの狂人に一方的に殺され続けるだけだが、俺には、仲間が苦しんでるように感じた。

 俺が知ってる温厚で、優しくて、真っ直ぐで、歪んでるアレンが妻を死に追いやったクズどもを殺すときにすら苦しんでるように感じた。

 俺は少し、アレンの深い部分に触れたような気がする

 だから、


「お前らがどうやって俺様を取り込むつもりかしらねぇけどな!ここで完全に消滅させてやるぜ!」


 俺はもう、この魔法を覚醒させられる


 ほざけ!貴様はソイツの手によってミンチとなりわたしたちの身体の一部になるのだ!


 粛清騎士が縁から天高く飛び上がる。手に持っている剣は姿を変え巨大なハンマーとなり、ボールの中にいるクロスたちに逃げ場などないだろう

 だが、


「その英雄は激しい憎悪を身に纏いこの世の悪を斬り裂いた。彼の心に迷いはあれど一度決めた道を違えることはない。彼こそがいずれ世界をタダスモノ!」


 クロスはそのことを一切恐れず、それどころか笑みを浮かべながら大きな声で詠唱する


 …ぐっ、さすがにキツイな


 クロスの身体からかつてないほど大量の魔力が消費されていく。気づけば


 クロスの手に白銀の光を発する一振りの剣が握られていた


 なんだ!なんだそれは!なんだその力は!


「力を貸せ、<世界を照らす希望の光(サン)>」


 詠唱が進むほど手に握られた剣は放つ光を増していく


「今その英雄の力を我が身体に顕現せん!<越・」 

「そこまでだ」


 英雄化>

 そう言い切ろうとしたところでクロスを制止する第三者が現れ、同時に背中に


 ポン


 と、軽く触れる感覚をクロスは覚える


 な!貴様は!


 謎の声は現れたその存在を見て動揺したのか驚いたような声を出すが、


「アレン!?」


 クロスも同じぐらい驚いていた

 なんと、クロスの真後ろにアレンが立っていたのだ


 分かる。これがアイツらが作り出した偽物のアレンじゃないってことぐらい誰でも分かる。なんでアレンがここに


「なぜお前がここにいるかはあえて聞かない。が、その魔法は今すぐ解除しろ」

「だが、この魔法じゃなきゃアイツらを殺さない」

「その必要はない。周りを良く見てみろ」

「?」


 アレンに言われた通り周囲を見渡すと


「…あれ?アイツらどこに行ったんだ」


 そこには施設だけがあり、他には何もなかった


「お前は初めから化かされていた」

「…?どういうことだ」

「…お前は禁忌魔法を使えるのに精神魔法は知らないのか?」

「精神魔法?だと、まさか俺が精神魔法をかけられていたっていうのか?」

「そうだ。」


 精神魔法 生物の精神に干渉することができる魔法 


 だが、これはクロスにとってあり得ないことだった。


 俺は常に日頃から魔法への防御障壁を張ってるし、精神や記憶などの身体への干渉を防ぐ魔法も独自で作り上げて別で発動してる。それなのに俺は精神に干渉されたっていうのか

 だが、もしそうだとしたら納得のいく自分もいる

 精神世界ならば、想像の世界ならば魔法が効かないものなんていくらでも作り出すことができる


「それよりもだ、早くその魔法を解除しろ」


 そうアレンが魔法の解除を急かしてくる


「?分かった」


 アレンのその態度を不思議に思いながらもクロスは発動途中の魔法を解除すると


 ゴバッ


 口から大量の血を吐血した


 何が起きた?血、ケガをしてるのか。吐血ってことは体内で、いつ、さっきのやつらにやられたのか?いや、まずはケガの治療からか


 突然の事にクロスが思わず動揺していると


「それがその魔法のリスクということらしいな」


 アレンがそういう


「リスク…なるほど、そういうことか」


 俺が使おうとしたのはアレンの力、勇者すら子供のようにあしらう人外の力、そりゃあ並大抵の身体の負荷じゃないことは分かってたが、


「俺様の身体でもダメなのか」

「鍛え方が足りないな」

「そういう問題か?」


 発動途中でこの負荷、もし発動してたら解除後に肉体が爆散するんじゃないか?これ、


「…まだ夜は長い、良かったらだが良いところに連れてってやろう。もしかしたら面白くないかもしれないが」


 !…初めてだな。アレンがどっかに行こうなんて誘ってくるのは


「行く」

「そうか、ならついて来い」


 アレンが歩き出したのを見てその後をついていき、施設から出て行く


 本当に変な経験をしたな。まさか、精神魔法をかけられるなんてな…ちょっと待てよ、


 精神魔法をかけられた。誰に?


 そこまで考えたクロスは一度足を止め施設を振り返り、


 !…


 すぐさま施設を見るのをやめ再び歩き出した


 …見間違いだよな。感知にも引っかかってないし


 クロスが見たもの、施設の方では


 遠くからでも分かるほど巨大な肉団子と、歪んだ笑顔を浮かべた大量の人間たちが俺を見ていた






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