王都暗躍
「なんということだ。我が国の貴族が48人も殺されてしまうとは」
一人で使うにはあまりにも広すぎる寝室にて、ベッドに腰をかけた男が
「なんなのだ。粛清騎士とは一体何者なのだ」
そう愚痴った
しかし、この場に、彼の問いに応えるものはいない。彼は立場上、昔から命を狙われる機会が多かった。常に自分の命を狙うものの存在を警戒しなければならない環境に身を置いているうちにいつしか、誰かがそばにいるだけで落ち着いて寝ることができなくなってしまった。そのため、寝室の近くには誰も近づかせないよう騎士に警備させている
だから、いつも通りこの空間には独り言が溢れるだけ、
「怪物だよ」
「!!!」
そう思っていた男は、答える者の存在に心底驚いた
「誰だ!?」
そう叫びながら声のした方をふり向くと、そこには
「はーい、王様。ご機嫌いかが?☆」
歪なほどに歪んだ笑顔の仮面をつけた何者かがいた
「…ご機嫌だと?せっかく寝室で一人くつろいでいたというのに、貴様のせいで害されたわ」
そう気丈に言い放った王であったが、その手は無意識のうちにベッドの裏へと伸びていた
この時、王に培われた今までの暗殺されかけた経験と勘が
コイツ、ヤバイ
と告げていた
近づいてはいけない!何がキッカケで殺されるか分からない。全力で逃げろ!そんな感覚を王はおぼえていた
「おっと、それは悪いことをした。おわびに今日は良く寝付けるよう特別な魔法をかけてあげるよ」
しかし、それは許されない。王はこの国の頂点に立つ存在であり、何者かから逃亡するなどあってはならない
それが、王国の王というものであり、この世で最も強い国の王を務めるものの責務でもあるのだ
たとえ、目の前の怪物に殺されることになろうとも
「ほう、それはありがたい。最近、粛清騎士のせいでロクに寝ることができなかったのでな」
「犯罪者だったら国の大事な仕事を任せられてる要人も粛清するからねあの人は。王様も大変だね」
そう言いながら近づいてくる男に視線を固定したまま、柄を掴む
「さて、どの魔法がいいかな」
ついに手を伸ばせば触れることができる距離まで近づいたところで
バァッ
「!」
王は素早い動作でベッドから立ち上がると、その勢いのまま手にしたものを振るう
それは、その男に逃げることを許さずそのまま直撃し
ピコッ
という、音を立てた
「痛、勢いつけるとこんなオモチャでも少し痛いんだな」
そんなことを男は言っていたが、
な、何が起きた!
王はそれどころではなかった
王は確実に剣を掴んだつもりだった。ベッドの裏に隠していたはずの、王家の者にしか扱えない特別な魔剣を掴んだつもりだった
それがいつの間にか、変な音のなるハンマーみたいななにかに変えられ、握らされていたのだ
「お、その表情いいね。驚いた?」
「貴様、何者だ!何が目的だ。まさか、貴様が粛清騎士か!」
「違うよ。俺は…そうだな。スマイルマンとでも名乗ろうか。まぁ、どうせ忘れちゃうだろうけど。それで目的だけど」
ただ君を見に来ただけだよ
それを聞いて王は、困惑し、さらに、恐怖した
目の前の明らかに常軌を逸した人間の考えていることが全く分からない。騎士を呼び捕縛を試みようとしても、おそらくは無理だろう。今みたいに遊ばれて終わる。
そして、それほどの実力者がなんの用もなく、ただ、私を見に来ただけだという
「信じられるか!」
「それは君の自由だけどさー、でも用事はもう済んだんだよね〜。まぁ、君に訊いてもいいけど」
「用事はもう済んだだと?」
「そうだよ。この国が持ってる粛清騎士に関する情報の全てが欲しかったんだけど、この王城にいる貴族に片っ端から聞いてったからもう揃ったんだよね。だから、最後にせっかくだからと君の顔を見に来たんだよ。あ、そうだ。剣返しておくよ」
「な!」
スマイルマンが渡してきた剣を受け取った王は驚いた。なんと、その剣が解放形態へと変わっていたのだ
この魔剣は、王家の中でも選ばれた者が契約する事で本来の力を発揮し、解放形態を扱えるようになる
そういうもののはずなのに
目の前のスマイルマンはこの魔剣をいとも簡単に解放形態にしてみせた。それどろか
「その魔剣、いろんな縛りつけてる割には性能イマイチだね。余計な能力までゴチャゴチャ付けてるせいで一つ一つの性能が中途半端だ。この前仲間にあげた能力も何もついてないナイフの方がよっぽど強い。なんでこんなの使ってるの?」
そう言い出すしまつである
分からない。全く意味が分からない
そう考えていたところで
「まぁ、いいや。<意識暗転>ばいばーい」
王の意識は途絶えた
翌朝、目覚めた王のもとへ最初に飛び込んできた情報は、宰相が粛清されたという情報だった




