遭遇
大聖堂から少し移動した広場にある噴水にて
「はぁ…」
クロスは一人黄昏ていた
「なんで俺だけ入れないんだよ」
ダイアたちと別れてから、近くの店をのぞいたりして時間をつぶしていたクロスだったが、頭の中には常に大聖堂のことが残り続けており、それを紛らわそうと何かをするたびに大聖堂への未練が募るばかりだった
「俺も中見てぇよー」
そう言いながら噴水の腰を掛けれる場所に座り、一人項垂れる
あとでダイアたちに話を聞くつもりだけど、たぶん俺は、結局大聖堂に入れなかったっていう残念さが余計に募るんだろうな。アイツらだけズリィよ。俺も見たかった
今のクロスは誰がどこから見ても落ち込んでいるただ一人の青年だった。たぶんそれが珍しかったんだろな。この街は聖王国の首都で尚且つ観光の名所、そこら中に笑顔の人間であふれてるもんだから
「お兄さん、大丈夫ですか?」
優しい声でクロスに話しかけてくる人物がいた
「……」
しかし、クロスはそれに応えなかった。見ず知らずの人に話しかけられて警戒しているというのもあったが、それ以上に返事をするきにすらならなかったのだ
「ふむ、思った以上に落ち込んでいるようですね。私でよければ話を聞きましょうか」
「……話したところで信じてもらえないからいいよ」
「そこはご心配なく。私、人の嘘を見破るのが得意でして、だから、真実を話してるのも分かるんです。どうですか?私に話してはみませんか?人に話すことで楽になることもありますよ?」
「実は……」
この時、クロスは不思議な気分だった。先ほどまでは喋る気力がわかないくらいに落ち込んでいたのに少し話しただけで心が少し軽くなったこと、なぜかこの男には話しても信じてもらえるという安心感、そして、初めてあった気がしないという謎の感覚
「なるほど、確かにあの結界は邪なるものを弾く。本当に……」
…ちょっと待て、この男の口ぶりから察するに、この男はあの結界を感知できている。マリカとダイアは感知できなかったあの結界を
コイツ、何者だ
「欠陥品ですね」
「え?」
「…え?だってそうでしょう?一定以上の邪なるものを弾くってことは、彼らの宗教では救えない人がいることを自ら宣言しているようなものではないですか」
「……」
「彼らの教義は、困っているすべてのものを救い正しき道へと導くこと。ここに心を救えていない人がいるではありませんか」
凄いな、この人。こんな人が大勢いるところで、だれが聞いているのかもわからないのに堂々と国教を批判するなんて
「アンタ、面白いやつだな。ありがとう、元気出たよ。アンタの名前教えてくれないか」
そう言いながら、顔をあげてその男の顔を見る
「いいですよ。私の名前はレアン。あなたが元気になってくれて本当に、よかっ、」
ここで初めて項垂れるのを止めて、顔をあげた男はクロスの顔を見ると、なぜか、固まってしまう
そんなレアンを見て、
?どうしたんだ
クロスは不思議に感じた
もしかして、どこかであったことがあったのかな?…いや、そんなはずはない。この人の顔に見覚えはないし、あってたとしたらこんな面白い人を俺が忘れるはずがない。ていうか、話し方と声のわりに見た目超若いな。俺と同い年ぐらいか?
顔をあげたクロスの目の前には、最近成人したばかりであろう青年が立っていた。
「なぁ、俺たち、どこかであったことがあるのか?」
クロスがそういうと、レアンは
「……」
無言で腰につけていた剣の刀身を鞘から抜きわずかにクロスに見せる
「?その剣がどうかし…!」
そこでようやくクロスは気付いた。思わず見入ってしまうほどの紅く美しい刀身、忘れようとしてもこの剣の美しさを忘れることはできない。そして、その剣を持ってる人間をクロスは一人しか知らない
「お前、しゅくせいき」
バァッ
最後まで口にしようとしたクロスの口をレアンが手で塞ぐ
「はぁ、また会うことになるとはな」
その男は、クロスが王都で出会った最強の男、粛清騎士だった




