粛清2 決着
「安物の中古品だったとはいえ、もう壊れたか」
カラン
そう言うと粛清騎士はその場に折れた剣を放り捨て、懐に手を伸ばし
「今日は月が綺麗な夜だ。お前も嬉しいだろ。月光の吸血姫」
一振りの紅く、美しい剣を取り出した
その剣は意識を吸い込まれそうになる程に美しく、人によっては一日中でも見ていられるんじゃないか。そう俺様に思わせるほどにその剣は美しかった。だが同時に、俺にはその剣が
夥しい量の血が凝集されたような
そんな印象をも抱かせる、そんな剣だった
「力を貸せ<血の狂乱>」
そう粛清騎士が剣に魔力を込めて唱えた瞬間、
ブワッ
粛清騎士が持っていた剣から紅い蒸気が噴き出した。その紅い蒸気はまるで生きているかのように粛清騎士の身体に纏わりつくと、形を変え、粛清騎士の鎧を地獄の処刑人を連想させるような禍々しいものへと変貌させた
そして、
「ピュイ!」
なぜかクロが影から出てきた
…え?どうしたのお前、静かだったからクリスと一緒で気絶してると思ってたぞ
<力が回復していないとはいえ、闘気如きで気絶する我ではないわ!なに、ちょっと此奴から感じる雰囲気がどこかで感じたことがあるものに似ていると思って見ておったのじゃが、あの剣を見て確信した。まさかアヤツだったとはな。10年もの月日は人を変えるのだな>
なんだ、知り合いか?
<まぁ、知り合いと言えばそうなるな>
「闇を取り込んだスライム。お前から感じた邪気はソイツが原因だったの…いや、やはりお前からも邪悪な気を感じる」
「え?」
突然近くで声がし、思わず顔を向けると、いつの間にか粛清騎士が目の前に立っていた
遅れて感知能力にも、目の前に粛清騎士がいるという情報がやってくる
!コイツ、俺の感知能力を超えやがった!
ゾクリ
「お前バケモンかよ。最高だな」
「オーバーロードになった時点でお互いバケモノだ。それよりも、これでお前の言った通りのシナリオになった。」
「あ、あぁ。あとは宰相を殺すだけだが…」
俺がいい終わる前に粛清騎士は歩き出し、宰相の館の扉へと向かってしまう
なんかコイツといると調子狂うな。
そう思いながらも粛清騎士の後に続くクロスだったが
…あれ、そういえばダイアたちはどうなった?戦ってる途中だったよな
そこでようやく、今、目の前を粛清騎士が歩いていることの異常性に気づく
なんでコイツが今俺の目の前にいるんだ?ダイアたちは
そう思い振り返ると、
ダイア含めた勇者の全員が気絶した状態で地面に倒れていた
マジか粛清騎士のやつ。さっきまで対等ではないにせよ戦いにはなっていたはずなのに
「お前、あの5人を一瞬で気絶させられる実力があったのに、わざとそうしなかったのか」
「?お前が言ったんだろうが。ただ気絶させるだけじゃもったいない。俺の裁きが絶対のものであると世界に知らしめるためには、俺の力の強大さを広めるための証人が必要だと。」
「確かに言ったが、それを勇者にやらせるのか」
「こんな程度の実力とはいえコイツらも人類では4〜7番目には強いらしい。そんな奴らが勝てなかったと世界が知れば俺の裁きが逃れられないものだと認識する。」
「たしかにそうだな。…そういえばケガをさせないのは難しいとか言ってたけど、あれはなんだったんだ?」
「俺が身体能力を強化する能力を一つでも使ったらアイツらとの力に差が開きすぎて手加減してもケガを負わせるかもしれないと思ったからな。先に伝えてやろうと思った。まぁ、今日が満月じゃなくてよかった」
…!そう言えばコイツ
そこでまた、クロスはある事に気付いた
最後に能力を使った時以外で魔力を一切使ってない。つまり粛清騎士は、魔法で身体能力を上げ、その上連携を取ってくる5人を相手に生身の肉体だけで圧倒していたってことになる。4人は勇者で、一人は祝福を受けてる人間なんだぞ
つくづく
怪物
「宰相の次はお前だ。」
「…俺?!だから何度も言ってるけど俺は何もしてないって」
「口でそう言おうとも俺の目は誤魔化せない。」
「さっき言ってた邪悪な気ってやつか?」
「そうだ。お前の身体には人間が一人では抱えきれないほどの怨念が纏わりついている。」
「怨念…」
怨念…誰かから恨みを買うようなことは…!
「あっ!」
「身に覚えがあったか」
「いや、あれはしょうがなかったんだって」
「問答無用。お前も後で粛清だ」
「勘弁してくれよ」
そんな冗談を言いながら二人で歩いていると
「ひっ、ひぃ〜。わ、私の身体、なぜ言うことを聞かない。なぜそっちに向かうのだ〜。」
正面から男の声が聞こえて来る
「アイツが宰相なのか?」
「そうだ。」
「へー」
いかにも、
「悪党みたいな見た目してんな。それで、コイツ何したの?」
「魔死領域の魔物を密かに集め、帝国などの敵対国に放とうとしていた」
「…は?」
魔死領域の魔物だと
「普通に国滅ぶじゃん。コイツいかれてんのか」
「自国の利益のためなら平気で大量虐殺も行えるということだ。それにしても、お前、コイツに何をした」
「あぁ、<操り人形>を使ってコッチに歩いてくるようにしただけだ」
「また禁忌魔法か」
「いいだろ別に。使い方を間違えなけりゃ便利なだけなんだから」
「お前は悪用してるけどな」
そういえばそうでした
「お、お前たちは何者なんだ。私が誰か分かっていての狼藉か」
宰相の目に俺たちへの恐怖が浮かぶ
「コイツが集めてた魔死領域の魔物はどうしたんだ?」
「事前に全て殺しておいた。この王都で粛清を始めた後に部下に命令されてばら撒かれでもしたら手遅れになるのでな」
「なるほど、お前の粛清が一度終わると一、二年間開くのはそういうのがあるからなのか」
「おい!私を無視する…」
「ていうか、お前の剣術本当にすげぇな。コイツまだ自分が生きてると思ってやがる。少しぐらい痛めつけてもいいんじゃないか?」
「粛清はあくまでこれ以上犯罪を犯し、無垢な民が傷つかないために行う。過剰な暴力は無用だ」
「そういうもんかね」
「おい!一旦なんの話を」
「だが、さすがにちょっとうるさいな」
「そうだな。はい、トンッ」
「え?」
クロスが宰相の身体に指で軽く触れると
じわぁ
宰相の視界が真っ赤に染まりだす
「なんなんだコレは!どうなっているん…」
宰相が言い切る前に
ドチュン
宰相の身体は粉々に弾け飛んで消えた
「バイバーイ」
・王都 最も金が集まっていると言われる街
魔死領域からは北西方面に位置する
書くペース、たぶん落ちる




