粛清騎士 新たな協力者
ピチャピチャピチャピチャ
「お前か」
液体が流れ落ちる音がする部屋に、一人の男の声が響く
「お前が俺の裁きの邪魔をしていた人間か?」
そう、男は影に向かって問いかけた
「何の目的で俺の邪魔をしているのか知らないが、流石にこれ以上裁きの邪魔をされるのは看過できない…いい加減姿を現せ。そこにいるのは分かっている」
男がそういうと
「流石粛清騎士」
若い男の声がすると同時に空間が縦に引き裂かれ、そこから若い男が現れた
「…それで俺になんの用だ。お前は俺がここに向かってきていることに気づいて別次元に身を潜めていたんだろ」
「すごいな。何も言っていないのに…さて、なんて言おうか…いや、シンプルにいこう。俺と」
そこまで若い男が口に出したとき
ピシャッ!
勢いよく水がはじけ飛んだような音がなる
何事かと若い男がいぶかしんでいると、
ツー
若い男は首から液体が滴っているような感覚を覚えた。妙に感じ手で首に触れてみると
グラァ
突然男の視界が歪み、だんだんと目線の高さが低くなっていく
そこで、男は気づいた。
自分の首が今の一瞬で切断されたことに
ドサァ
男の首は地面に落下した
「俺は悪人と手を組むつもりはない」
そう言い、粛清騎士がその場から離れようとすると
「まぁ、話ぐらいは聞いてくれよ」
後ろから声をかける存在がいた
「お前、オーバーロードか」
「オーバーロード?なんだそりゃ」
今殺したはずの男だ
粛清騎士に首を切り落されて死んだはずの男が、脇に己の首を抱えた状態で立っていた
「オーバーロードを知らない?自力でその領域に到達したのか。恐るべき才だな。残念だ…お前が悪人でなければきっとこの世界を正しく導くことができただろうに。ここで死んでいけ」
そう言いながら、粛清騎士は腰から漆黒であるのに、真っ赤な剣を取り出した
「頼むから話を聞いてくれ。これはアンタにとっても悪い話じゃないと思うぜ。それに、本気で俺とここで殺しあうつもりなのか?」
その言葉を聞いて、粛清騎士は構えていた剣を下す
「聞かせてみろ。お前の話とやらを」
「前提条件として確認したいんだが、粛清のリストに宰相は入っているのか?」
「……入っているが」
「なら良かった」
その言葉を聞いて、男はほっと胸をなでおろした
「このままいけばアンタはこの街にいるすべての悪人を粛清する。そうだな」
「あぁ」
「だが、ここで一つ障害がある」
「障害だと…思いつかないな。この街に俺の障害となりかねるものは何もない」
「ああ、その通り。この街にはない。だが、外ならどうだ」
「勇者か」
粛清騎士は即答する
「だが、勇者が動くとなれば新聞に載るはずだ」
「言いたいことは分かる。まぁ、それだけアンタはこの国で注目されている存在ってわけだ。よほどアンタを捕まえたいみたいだな。極秘の情報で国の上層部にしか知らされてない。」
「そんな情報をなぜおまえが知っている」
「簡単な話さ。アンタと接触したくて情報を集めているときに、王族や高位貴族たちの記憶を読んだ」
「禁忌魔法<記憶干渉>か。あれはかなり難しい部類の魔法だったはずだ。お前、ほかにも禁忌魔法を覚えているな」
「それは別にいいじゃないか。それで来る勇者たちだが、序列4から7だそうだ」
「…面倒だな。確かその四人のパーティーだったな。時間がかかりそうだな」
「時間がかかりそうで済ませられるのか。まぁ、そこでだ。俺から一つ提案がある。この街での粛清限定だが、俺も力をかそう」
「よっこいしょ」
男が掛け声とともに首をもとの位置に戻すと、首は初めから切断などされていなかったかのようにくっついてしまった
「お前のそれは、どういう理屈なんだ」
「ん?あぁ、これはだな。実際にはつながったままだから簡単にもとに戻せるんだよ。感覚で言うと、ゴムをいくら伸ばしても元の形に戻るのに似てるかな」
「…お前は殺された瞬間に魔法の力で自力で蘇生したのか」
「そうだな。といっても、もう一人の俺にだけどな」
「もう一人だと」
「それよりもだ。さっき言ってたオーバーロードってなんなんだ?」
「…オーバーロードっていうのは魂が肉体から解放されている生物のことを指す。肉体が朽ちようともその魂は朽ちることなく、肉体さえあればいくらでも活動できる。つまりは、生物の本来あるべき形から大きく外れた超越者だと思えばいい」
・オーバーロードⅠ 肉体からの解放




