真実
「我の名はクロード
吸血鬼の真祖にして神であり、この世で最も強き存在である
そんな我がなぜこんな状態になっているのかというと、それは今から十数年前にさかのぼる」
うん、この時点で突っ込みどころが多すぎる。吸血鬼って遥か昔に絶滅した種族のはずなのに生き残り?がいたのか。これは本当のことなら大発見だぞ
あと…本名クロードなのな
「これはある日の夜のことだ。我がいつものように寝室で本を読んでいると、我の弟が部屋に入ってきたのだ。普段だったらありえないことだったので我は思わずどうした?と尋ねた。すると、弟はなんて答えたと思う?」
「…世界平…」
「そう!自分だけの都市が欲しいと言ったのだ!」
あ、別に俺に訊いてきたわけではないのね
「我はその言葉に思わず感激した。吸血鬼が都市を持つといことはすなわち、数百年間秘匿し続けてきた我々の存在を世間に露見させるということ。最上位種族である我らがいつまでも日陰に生き続けるのもおかしい話だ。そう思った我はすぐさま行動にでた」
「我は近くにあった人間たちの都市を数個壊滅させた」
「!もしかしてお前、十二年前に聖都ウィンディーネを攻撃した魔族か?」
「聖都とやらがどの都市をさすのかは分らんが、妙に水属性と神聖属性が強い都市が一つあったことは覚えているぞ。その都市こそが我がこの姿になるきっかけの都市だからな」
「まじかよ」
あれ、ちょっと待てよ。その時の魔族は当時、英雄のアレンに倒されたって記録には書いてあったはずだが。だとしたら、なんでコイツはここにいるんだ
「我はそれまでに滅ぼした都市と同じようにその都市も滅ぼそうとした。が、その都市には我でも驚愕する程強い人間がおった。時間にしたら十分にも満たないだろう。我とそ奴はこの世のどんな生物も体験したことがないような濃密で超高度な戦いを繰り広げた」
「それで、お前は負けたのか?」
「ああ。我の肉体はやつの剣技により再生ができないほど細切れにされた。あの技は凄まじかった。殺されるというのに我は奴のその剣技に心底感動していた」
へぇ、それは一度みたいな
「では、なぜ殺されたはずの我がここにいるのか、気になるんじゃないか?」
「確かに、気になるな。…俺の記憶が正しければだが、吸血鬼に関する文献に、吸血鬼はその肉体を滅ぼしたとしても再生して蘇ってしまうという記述があったはずだ。これが関係しているのか」
「ふむ、着眼点はあっている。が、もしお主が言ったとおりに文献に書かれているならその文献は間違ったことを記載していることになるな」
「間違っているか…そうだな、滅ぼした肉体が再生しているっていう点か?」
「ほう、よく分かったな」
「いや、目の前のお前の姿を見ればなんとなく分かるだろ。だが、そう考えるとおかしな点がある。どんな生物も肉体が滅んだ時点で絶命する運命にある。だが、お前が言ったことが正しいならお前は肉体が滅んだうえで生きていることになる」
「なぜだと思う?お前の見解を我に聞かせてみるがいい」
「そうだな。これは、錬金術における概念としてだが、すべての生物は魂と肉体が精神によって結びつくことでこの世で活動することができる」
「ふむ」
「だが、この世にはアンデットという魔物が存在する。それらは決まった身体を持たない。腐った肉体や鎧、中には依り代すら必要としないやつもいるらしい
俺は思うんだが、肉体は単なる魂の器にすぎないんじゃないか?」
「というと?」
「俺の説はこうだ。お前は肉体が滅んだ瞬間、魂が肉体から引き剝がされたがすぐさま近くにいた魔物の肉体を奪い取った。それが偶然この闇のスライムだった。どうだ?あってるか?」
「ふむ、お主は人間だというのにずいぶんと賢いようだな。いつものあの振る舞いはわざとなんじゃないかと我に思わせるほどに」
「…えっ」
コイツ、もしかしてずっと俺の行動を見てたのか?いや、今こうして話せてるっていうことはそうに違いない。やべー、なんか恥ずかしくなってきた
「だが、惜しいな。お主の説にはある考えが抜けている」
「ある考えだと?」
「そうだ。お主の説に足りなかったもの、それは、我が最強だということだ!」
?
「お主の言う通り我は肉体が滅ぼされた瞬間に魂が肉体から剝がされた。だが、血統魔法を使って付近にいた我と最も親和性の高い魔物、スライムの肉体に受肉することに成功した」
「なに!?血統魔法だと!」
「なんだ、そんなに驚くことか?」
血統魔法、存在することは知っていたがその使い手は世界中でもごく少数に限られる。それこそ勇者や聖女のような人間にしか扱えない魔法だ
すげー それを使えるやつなんて初めて見た
「我の血統魔法は血族魔法でもある。高位の吸血鬼は皆、肉体が滅んだ際に自身と最も親和性の高い肉体に強制的に魂を結びつけることで自己蘇生するができる」
「やっぱり、そういう感じなんだな。それで、そこにお前が強すぎることとどう関係するんだよ」
「まぁ、そう焦るでない。これは常識だが、魔力が強すぎると魔法も強くなりすぎてしまい制御が難しくなることは知っているな」
「もちろん知っている。俺もそのタイプだしな」
「お主が読んだ文献にあった、吸血鬼が肉体を再生させて蘇生するというのはな、肉体が滅んだ瞬間に一時的に付近の魔物の身体を奪い取って逃走し、その後あらかじめ用意しておいた自分用の肉体に魂を移し替えることで可能としている」
「…もしかしてだけど、魂がスライムに強く結びつきすぎて別の肉体に移し替えられなかったなんてことはないよな?」
「いや、その通りだが?」
それを聞いて俺は、目を見開くほど驚いた
「嘘だろ?そんな馬鹿な話があるか?血統魔法だぞ?血統魔法は完成された究極の魔法じゃないのか」
「何言ってる。血統魔法は自身の魂と契約を結ぶことで選択した魔法を子孫がなんの練習をしなくとも使えるようにしただけだぞ。つまりは誰にでも扱える魔法ではあるんだ。ただ、その魔法に関する情報がなさすぎて誰も再現できないというだけでな」
「…それで、なんでただのスライムから闇のスライムに変化したんだ」
「スライムとして生活するようになってから数年、我はずっと肉体と魂の結びつきを弱める方法を探し続けていた。そしてある日、我は純粋な闇と出会った。その瞬間我は直感した
これ、闇に触れたら上手いこといくのではないかと」
「それで成功したんだな」
「いや、今度はうまく行き過ぎた」
「?」
「闇に触れた我は魂と肉体の乖離に成功した。が、今度は離れすぎてしまって肉体の主人として意識を保つことが難しくなってしまった。つまりは肉体の制御をすることができなくなってしまった」
「…もしかしてだが、今日になって話しかけてきたのは偶然意識がはっきりしているからなのか?」
「いや、偶然ではない。我は肉体の主導権をつい最近取り戻したのだ。お主のおげでな」
「俺のおかげ?」
「ああ。つい先日お主は我に血肉と膨大な魔力を捧げたであろう?」
…!腕を溶かしながら撫でた日のことか!
「おかげで我の吸血鬼としての能力を一時的に使えるようになり、また、お主が我に対して<念話>を使ってくれたことで我は意識を安定化させることができた」
まさか、俺が知らないところでそんな風になっていたとはな
「だから、我はお主に感謝しているのだ」




