問題児爆誕
冒険者ギルドの受付嬢、人はそこにどんな幻想を抱くだろうか
若くて綺麗な女性、依頼を何度も受けるうちに仲良くなって、そして気づいたら相手から惚れられていて、それで最終的に……そんな妄想を男なら誰でもするのではないだろうか
「なんだいその目は。アタシじゃ不満だってのかい?」
俺よりもはるかに背が高く、そこらへんにいる冒険者よりもさらに筋肉がある老婆が見下ろしてくる
神様、俺にはそんな妄想をする権利すら与えてくれないのですか?
「あぁ、気にしないでください。どうせいつもどおりバカなことを考えてるだけですから」
「いつもどおりねぇ…それで仲良く冒険者登録に来たってわけかい」
「なぁぁぁ!仲良くって!そんなつもりじゃ!」
「俺とは仲良くないってこと?」
「そうじゃなくって、ああぁ、もう!なんでそんなとこに反応してくるの!いつもどおりバカなこと考えてて!」
これって…俺がわるいのか?というか、バカて…
「皮肉のつもりで言ったのにまさか目の前でイチャつかれるとはねぇ」
この老婆も呆れ顔である。
「アタシはこの年になるまでに多くの冒険者を見てきた。それこそアンタ達みたいなのもね。あらかじめ言っておくよ。冒険者はアンタ達が思っているほど楽じゃない。それこそ一歩間違えれば命を落とすこともある。それでもアンタ達は冒険者になるってのかい?」
ギロリと鋭い目で俺たちのことを見てくる。というか冒険者ってそんな危ない職業だっけ?俺の師匠は
”冒険者になりたい?いいんじゃね?いけるっしょ!”
”魔物は強いかって?俺にかかれば魔物なんて指先を振るだけで十分”
”死にかけたことがあるかって?無いに決まってんじゃん。俺、世界最強だから(笑)”
って言ってたんだけどな
でもまぁ、いけるだろ
「俺、強いから大丈夫」
「……………」
「まぁ、アンタ達がそれでいいならアタシは構わないけどね。ほらこれが登録用紙だよ。とっとと記入しな」
ほらうまくいった。俺はすかさず爽やかな笑顔でダイアにサムズアップする
ん?顔が赤いな。もしや俺の完璧すぎる対応に惚れたのか?そうかそうか、ダイアお前の気持ちは良く分った。だから笑顔で近づくのをやめろ。なんかその笑顔怖いんだが
「…バカ」
いってぇぇぇ!
笑顔で俺の脇腹をつねるダイアと、痛みを表に出さないように必死に耐える俺みて
「アンタ…苦労してんだねぇ」
一言老婆がつぶやいた
そうだよね。苦労してんの俺だよね?