世界最強
”師匠!”
これは、俺の記憶?
”なんでどこかに行っちまうんだよ!”
俺が地面に仰向けで倒れこんだまま泣いてる。これは、俺の師匠が冒険に出る日の記憶か
”クロス、わりぃな。本当はもっと教えたかったんだけどよ、俺、どうしても冒険したい気持ちを抑えられないんだ”
”そんな!俺まだ教わりたいことたくさんあるのに!”
なんで今これを思い出すんだ
”大丈夫だ、クロス。お前はその年で自分だけの魔法を作り出した。<偽・英雄化>、いい魔法じゃねぇか。弱点も多いが間違いなくクロス、お前の最後の切り札になる魔法だ”
”じゃあ、なんで俺はこんなにボコボコにされて師匠は欠片も疲れてないんだよ!”
”そんなのはクロス、お前が一番分かってるっだろ?”
”…世界最強だから”
”そう!正解!”
”そんな世界最強の俺は、世界中から引っ張りだこなんでな。最後にクロスの成長を見れてよかったよ”
なんでそんなことを言うんだよ
行かないでくれよ
”それに、クロス。お前は強くなったとはいえお前より強いやつなんてたくさんいるぞ。だから、自分より強くて信頼できる人を見つけてそいつに指導してもらえ”
!?
”そうすりゃいつか、お前は世界最強になれるぜ!”
”それは、師匠を超えれるってことか?”
”それはどうかな?俺ってば超天才だからな。まぁ、クロスの頑張りしだいじゃないか?”
この記憶を、今俺が見ている意味
”分かったよ!いつか俺が世界最強になって今度は師匠をボッコボコにするからな”
”そのいきだ。そんじゃあな!”
そういうと師匠は歩きだしてしまう
”師匠!”
”もう俺から伝えることはないぜ?”
”行く前に名前ぐらい教えてくれよ!”
そうだ、俺は結局最後まで師匠に名前を教えてもらってない
”そいつは内緒だ!どうしても知りたかったらクロスが俺を見つけ出せ。俺ははるかな高みで待ってるからよ”
ここで記憶は途切れてしまう
たぶん、この時も気を失ったんだよな
この日以降俺より強い人には会えず、すっかり忘れてたがこんな約束を師匠としていたのか
だけど、ようやく出会えた。全力を出しても勝てない相手に
待ってろよ師匠、すぐに追いついてやるからな
「おい、どうしたんだ???。急に立ち止まるなんて。何か見つけたのか?」
「いや、俺の弟子たちの誰かが俺のことを呼んだ気がしてな」
「それは別にいいけどよ。依頼にちゃんと集中してくれよ?」
「そう心配すんなよ。俺に任せとけ」
「お前にそう言われるとなんでか安心するんだよな。さすが勇者ランキング元連続一位だ」
「お前がランク上げ手伝ってほしいって言うから来たんだぜ?俺は」
「そういうくせにお前、俺よりもやる気満々だったじゃねぇか。本当は目指してんだろ?勇者ランキング一位を」
「当然だろ?世界最強はこの俺だ。今の一位のやつが歴代最強とか言われてるらしいが、真に最強なのはどっちか分からせてやるぜ。だから、お前も最後まで手伝えよ?勇者ランキング元二位様」
そういいながら、二人は獄炎龍の亡骸の山の上で笑いあう