戦いに抱く幻想
「思ったよりも弱いな」
それがゴブリンに対して俺が抱いた印象だった
俺が放った魔法は決して弱くないのだが、それにしてもあっけなさすぎる
しかも、あいつら
そう考えながらゴブリンたちを見る
ゴブリンたちはただ仲間の死体を見て慌てふためくばかりで俺たちが近くにいることなんて考えてすらないようだ
あまりにも隙だらけすぎる。こんなのが討伐対象になる意味が分からん
「はぁ、終わらせるか」
そう言いながら、俺は二つの魔法を発動てゴブリンたちに突っ込む
俺が発動した魔法は、<身体能力強化>と<鉱石形成>
人の限界を大きく超越した速度でゴブリンに接近した俺はその勢いのまま作りだしたダガーを振り切り、片方の首を切りとばす
そこでようやくゴブリンは俺の存在に気づくが、その時にはすでに二振り目が振りきられておりほぼ同時ぐらいの間隔で二匹のゴブリンの頭が地面におちる
「………」
「ちょっとクロスー!早すぎだよ!片方ずつやるって言ったじゃん!」
「………」
「クロス?」
「いや、なんでもない。それよりも村に着く前にゴブリンを倒しちゃったけどどうする?確か村の畑を荒らしたのはゴブリンだったよな。もう村まで行く必要はなくね?」
「う~ん、それでも一応話を聞きに行くほうがいいと思うな」
「そうか、なら行くか」
村
「そうなんですよ!魔物たちにワシたちが一生懸命育てた作物を食べられてしまって」
「そうだったんですね。それは本当に大変でしたね」
「………」
「それで、どんな魔物が畑を荒らしていたか教えてほしいんです。確か村長さんでしたよね、冒険者ギルドに依頼をしたのは。どんな情報でもいいのでお願いします」
「おお、そんなことでしたらいくらでも協力しますぞ」
「ワシが聞いた話では醜い容姿の人型の魔物が畑の作物を食べていたと言っていました」
「言っていた?」
「はい、それなのでワシはゴブリンだと判断したんですじゃ」
「えっと、直接見た人は今いますか?できればその人にも話を聞きたいんですが」
「いいですが、そんなに参考にならないと思いますぞ」
そう言って村長が連れてきたのは小さい子供だった
「私に教えてくれる?畑を荒らしたのはどんな魔物だったの?」
「うん!えっとね、見た目は人みたいな感じなんだけどね、顔が怖くてね、それでね、お姉ちゃんたちぐらい大きかったの!」
「そうなの!教えてくれてありがとう!」
俺たちぐらい大きかったか。まぁ、顔が怖かったって言ってるしそれでゴブリンが大きく見えたんだろうな
これで俺たちの依頼は達成。あとは魔ウサギとスライムを倒して終わりか
「でもね、その魔物、ケガしててすごい血を流してたよ」
村を離れた俺たちは魔ウサギとスライムの討伐にも成功し、ギルドで依頼の達成報酬を受け取った
今回は大銅貨三枚だった
正直ほぼ一日使ってこんだけしかもらえないのはマズイな
そう考えていると
「ねぇ、クロス。なんか今日ゴブリンと戦ってからあんま元気なかったけどどうかしたの?」
と、ダイアが訊いてくる
ダイアは本当に俺のことをよく見ている。実際俺は少し落ち込んでいた
でも、こんな理由で落ち込んでいたなんて言えるわけがない
本当はもっと死の危険を感じられるような戦いをしたかったなんて
だから俺は
「気のせいじゃね?」
そう言いながら笑ってごまかすのだった