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いずれ最強伝説  作者: piccle
112/114

マリカの実力

「はぁぁぁああ!?アンタ、なにしてくれてんの?」


 アッシュが殺された直後、マリカの口から出てきたのはそんな言葉だった


「なにして、とは。剣を守っただけだが」

「だから、そのことを言ってるんでしょうが!」

「? 何を言いたい?」


 マリカに対して困惑するアレン


「これは私とアッシュちゃんの勝負でしょうが!」

「……」

「なんでその勝負にアンタが割り込んでるのよ!」

「…本気で言ってるのか?」


 それは、理解した上で、理解しがたいものだった


「だが、お前は今敗けていただろ?」

「それがなに」

「剣に触れられるわけには」

「これは私とアッシュちゃんとの勝負だよ 邪魔しないで」

「……」

「もういい」


 そう言うと、マリカは剣へとつかつかと足音を立てながら近づいていった

 それは、アレンに近づくことでもあり、


「何をするつもりだ」

「なによ」


 マリカが剣に手を伸ばしたところで、アレンにその手首を掴んで止められた


「まさかとは思うが、剣に触れるつもりじゃないだろうな」

「その通りよ」

「…正気か、」

「正気よ 私は今敗けたの だから、ダイアを解放しなくちゃならない そうでしょ?」


 そう言いながらマリカはアレンの手を振り払おうと、手を一度引いてから


「だから邪魔しないで」


 アレンに向けて 


<終末の炎>


 全魔力を使った炎を放出した

 その炎は大地の全てを焼き尽くし、灰すら消しとばして気体にまで至らせた

 それは連鎖的に爆発を起こし、世界が爆炎に包まれるが


「悪いがそれはできない」


 アレンはダメージを一切負わず、涼しそうな顔で立っていた

 この時、


「ムカつくなぁ」


 マリカは激怒していた 何に対してかは ()()()()()()()()()()()()()()()

 ただ、マリカは アレンのことを許せないという気持ちでいっぱいになっていた

 だから、


「<魂の支配者(クイーン)>」


 マリカは禁忌に触れた

 まだ誰にも披露していないマリカのオーバーロードとしての能力 これが、マリカにとっても初めての発動になるが


「ッ!なに!?」


 マリカは、マリカの手首を掴んで離さないアレンの腕ごと()()()()()


 より正確に言うならば


「ギリギリで避けたか」


 マリカの能力に触れた瞬間、危機を感じたアレンが自らの腕を瞬時に切断、その結果、完全消滅を免れた


「これが私の能力」


 私はたぶん、オーバーロードで唯一、希望による完全消滅以外でオーバーロードを殺せる存在

 私の能力は魂の本質に触れる

 全ての魂を完全に解放することもできるし、破壊することもできる

 それは、オーバーロードだろうと例外じゃない


「一瞬でも手を引くのが遅れていたら、俺は消されていたということか」


 だが、それでも、アレンは動じない


「魂ごと行ったのに、身体がちゃんと直ってる…なるほど、魂はちょっと削るぐらいじゃ補完できるのかな それとも、あなたが特別なだけ?」

「さあな ただ、俺たちの間でハッキリしていることが一つある」

「そうね」


 この時、2人の想いは一致していた


 "俺たちは一時的に敵だ"

 "私たちは敵だ"


 ただ、目の前の敵を倒す(殺す) 

 己の意思を通すために


 2人は()()()()に動いた

 マリカが触れるために近づき、それをアレンが回避する

 この繰り返し

 戦いは驚くことに、マリカから一方的に攻める展開だった

 というのも、


 …どれぐらい手加減すればいいのか分からない


 アレンは、あまりにも強くなりすぎた

 一振り たった一度剣を振るうだけで アレンは()()()()()()()()()()()()()()()

 アレンにとっての普通レベルで身体を動かせば、その衝撃波で大地は引き裂かれ、マリカの肉体は粒子レベルにまで砕かれるだろう

 アレンは今、存在するだけで世界を破壊してしまう そんな領域へと到達していた

 だからアレンは、身体能力のレベルを完全にマリカと同じにすることで手加減をしていた

 もちろん、他の性能は元のままだからマリカの動きは完全に読み切っている マリカからの一撃必消滅の攻撃をギリギリで回避し、逆にマリカの身体能力でも気絶させられる一撃を放とうと首を狙う だが、


「! またか」


 マリカから飛来する()() それだけは読み切った上で回避が難しい マリカの身体能力ではギリギリ避けるのがやっとだった

 魔法自体には脅威はない 毛ほどのダメージも入らない だが


「突き放される」


 そんなことはマリカも想定済みだった マリカは風、波、衝撃波、ありとあらゆる魔法を使ってアレンを近づかせない

 身体へと触れようとするのを許さない


 互いの実力差 そして、アレンの信条 それら全てを考慮した上でマリカは狡猾に立ち回っていた


 それでも


「!あぶなっ!」


 アレンの拳は次第にマリカの輪郭を捉え始めた

 身体能力レベルの微調整 マリカを若干上回るほどの身体能力の獲得

 それは、アレンにとって砂を一粒ずつ小さじで掬い取るが如き繊細な作業だが

 アレンはそれを戦いの中で数百万回と繰り返し、徐々に徐々に、確実に、マリカの身体能力を超越していった

 ついには、攻守が逆転する

 アレンをあと一歩で掠めそうな一撃はもはや存在せず、


「ちっ!ムカつくなぁ!」

「諦めろ もうお前に、勝機はない」


 立場は逆転 今度は完全にアレンのターンだった

 マリカがアレンに敗北するのは時間の問題だろう


 もしマリカがただの凡才だったら の話だが


 クロスが化け物すぎて目立ってなかったが

 マリカはそもそも人類史上最強クラスの天才 


「できる…たぶん私ならできる」

「…? なんだ?この感覚」

「できるできるできる!できるぞ!掴んだ!魂の輪郭を!」


 マリカは禁忌へとさらに一歩踏み出した

 それは人類最大の夢であり、絶望


「死者蘇生」


 ゾワワワワワワ と、得体の知れない感覚がアレンの首筋を撫でる アレンはこの時初めて

 マリカを強者ではなくクロスとは同種、だが異質な怪物だと認めた


 マリカが行ったこと、それは


 帝国で死んだ全ての人間を蘇らせた


 マリカは


「なに!コイツらは!」


 自らの能力の最悪の使い道に気づいてしまった


「アンタたち、アレンを消しなさい」

「「「承知しました」」」


 マリカが以前から使っていた 魔物や生物を意のままに操る能力 あれはその生物の持つ魂を強制的に支配することで操っていた

 まともな倫理観を持っていれば、その時点で止まる そこから先は試そうなんて考えてはいけない


「やっぱり 私よりも下等な魂を持ったもの全てを操れるみたい」


 マリカは、死者の魂を冒涜し、自らの配下とした


 アレンは今自分が抱いている感情の名前を知っていた


 悍ましい


 クロードと戦った時にも抱いた、邪悪なものへの潜在的な恐怖 人類が絶対に踏み入ってはならない狂気

 そして、


「うん、まだいける、いけそう、大丈夫私ならできる、できるんだ、できるできるできる!」


 マリカの能力にはまだ先がある。さらに恐ろしい力が残されている そう直感が告げる


 これは、この世に存在していいものなのか?


 アレンは、<月光の吸血姫(ルナ)>に、実に十数年ぶりに、()()を灯らせた


「故人たちよ、蘇ったところすまないが、再び永き眠りについてもらうぞ」


 もうアレンに、手加減するという考えは消えていた


<月光の吸血姫(ルナ)>に灯った希望は、漆黒の世界を明るく照らす


「世界を照らす希望よ」

「…?」

「輪廻の輪より外れし穢れた魂を再び永劫輪廻の循環へと戻したまえ」

「    まさか!」


 これは 祝詞 今からこの瞬間、アレンがこの瞬間のためだけに創り出した希望への祈り そして


「ありとあらゆる効果を消失させる希望に別の効果を付与する?!そんなことできるわけが!」


 クロスの理からの逸脱


「覚悟はいいな」

「ハ!来なよ!私は負けない!確信があるんだ まだ私は先に進めるって」

「…」


 その確信は、俺にもある

 コレを放てば確実にマリカはさらなる化け物になる だが、


「魂の冒涜はさせない」


 放つ それがアレンの答えだ


<消失する白(ホワイト・ブレス)>


 アレンの希望は都市ごと全てを飲み込んだ 眩いまでの純白が世界を埋め尽くした 後に残るものはまっさらになった大地


「ふぅ、危なかった もう少しで消滅するところだった」


 無傷の状態のマリカ そして、


「ふぅん、盾としては優秀じゃん?」


 希望の光を肉体に灯らせた死者の大群だった


「まさか、そういうことなのか?」

「えぇ、どうやら私にもできるみたい。クロスがやってみせたように魂の格を強制的に押し上げることで無理やりオーバーロードにする。しかも、その状態でも私はこいつらを操ることができる。これがどういうことか分かるよね?」


 オーバーロードとしての力に目覚めた数万人もの死者、肉体の破壊は何の意味も持たず、倒す方法は存在しない。そして、オーバーロードを意のままに操ることができるマリカ


 はっきり言って詰みだ この状況 たとえクロスでさえも覆すことはできないだろう

 それでも


「面倒だな」


 アレンはぶれない

 たとえこの状況でもマリカに勝利する それがどれほど難しいことでも諦めない 

 それが その意志がアレンに力を与える


 オーバーロード終焉領域<超越(ダイアモンド・)(ブレーカー)>


「想像はついてると思うけど、希望を纏えるこいつらは、オーバーロードとしての能力もちゃんと使える 世界の理を超えた理不尽な力を」


 もうアレンは希望を諦めない


 再びアレンの剣へと希望の力が収束していく


「終わりよ」

「あぁ、これで終わりだ」


 数万ものオーバーロードたちが一斉に能力を発動 それは世界を歪め、ありとあらゆる法則を無視してアレンを襲う もはや世界どうこうのレベルではない 空間が、次元が違う


「俺はこの世のありとあらゆるものを斬り伏せる 俺が世界の"断裁者"だ」


 だがアレンは、それすらも超越していく 諦めない限りどこまでも強くなる それが


「それが 俺のオーバーロードとしての能力 クロスが創り出したこの世界の理すらも俺は超越する」

「!クソォ!」

「勝ったのは俺だ」


 マリカが蘇らせた死者たちは全て消えた 決して楽な道のりではなかった アレンの肉体は砕かれ、切り刻まれ、焼かれ、潰され、それでも諦めずに剣を振い続けアレンは


 全てのオーバーロードを斬った


「さぁ、俺の言うことを聞いてもらうぞ」


 そして、最後に残ったオーバーロード マリカに剣を突きつけることで戦いは終結した


 !


 だが


「なにぃー?!」


 それで終わるほどマリカは単純ではない

 マリカの能力は単純ではない

 魂と核を押し上げたことで産まれたオーバーロードたち 強制的に強くさせられたことで産まれた強者 その中に

 唯一マリカのことを超越した者がいた


「お前は!」

「アッシュ!」


 イレギュラー 闇の力を潜在的に有している魔族である彼女 魂の核が上昇したことによる希望の力の顕現 それは、アッシュに多大な成長を促した

 陰陽兼ね備えた完全な状態 アッシュは今、マリカの手によってクロスと同等の存在 神へとなりつつあった

 そして、その手には


「これでダイアさんは蘇りますよね」


<世界を照らす希望の光(サン)>が握られていた


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