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いずれ最強伝説  作者: piccle
111/114

託された希望

「ここは、どこ」


 ここは夢の世界 クロスによってダイアは現実には存在しない夢の世界へと入り込んでいた

 もちろんダイアはそんなこと知らないし、自分がどこにいるかなんて分からない


 ここは幸福な世界 望めば全てが思い通りになり、希望だけが産み出され続ける


 まさに 欲望だけが存在する世界

 そこは、


「醜い」


 ()()

 ここでは誰もが心の内に秘めていた ドス黒い欲望 を曝け出す

 酒、女、金、薬、そして犯罪 社会に縛られ心の奥底に押し込めてきた邪悪な願いすらもこの世界は叶えてしまう

 それでも 希望 は産み出される


「これがクロスのしたいことなの?」


 すでにダイアは、クロスが行おうとしていることの本質に近づきつつあった


 大量の人間たちの魂 それを集めて膨大な希望のエネルギーを産み出している これを、一体何に使うつもり?

 クロスがしようとしてるのって、もしかして絶望の悪魔を殺すことなの?

 いや、だとしても、あまりに()()()()


 それに、この身体 私だけは人の形を保ってるけど、他の魂たちはもはや化け物だ

 もしかしてこれが魂の本来の姿なの?


 解放された魂たち 全ての呪縛から解き放たれた魂

 それは、肉体という器を捨て、精神と魂のみの存在

 あぁ、これが この醜く悍ましい姿こそが


「全ての生物の至るべき最終到達地点 これこそが、オーバーロードの本来の姿 俺は、全ての生物を強制的にオーバーロードへと押し上げた」

「なるほどね、私の真実を知りたいっていう願いも、叶えられるんだ」

「俺は、世界線を変更する能力を持っている。それは、実際に起こった出来事すらなかったことにできる。俺はその能力で、ダイアの能力が発動しなかった世界線を連続して選択し続けた。だから、能力は発動しているが発動しなかった時と同じ結果がもたらされた 未来での行動すらも俺が選択した結果だ」

「なにそれ、ズルッ。そんなのどうやって勝てっていうの。」

「フッ、まぁな。なにせ俺は、最強だから」

「まったく」


 …あぁ、これはクロスだ。今私の目の前にいるこの存在は間違いなくクロスだ。私が心の底から愛したクロスその人だ

 なのに、なんで


「大丈夫か?」


 そう言いながらクロスはダイアを抱きしめるが


 悲しさが込み上げてくるの?


 ダイアは瞳から涙を流していた


 私はクロスを止められなかった。あぁ、クロスは


 もう手の届かないところまで行ってしまった


 それに、私はここから出ることができない


 ダイアは何度も強く願った この夢の世界から抜け出したいと、そして知った それこそが、この世界で唯一叶えられない望みだと

 世界を切り裂こうと希望の力を使おうとも、それが世界の輪郭に触れることすらない

 もはや、


「私にできることは、ない、のか…」


 ダイアは項垂れていた

 目の前の惨状をただ眺めながら、己の無力さに打ちひしがれていた

 私の力じゃ何もできない、この状況をどうにかすることができない だから


 だが


 私は私の運命を信じる!


 諦めたわけではなかった


 この世界には、一つの大きな矛盾がある。それは、叶えられない願いが存在すること なんでも夢を叶えられる世界だというのに、この世界から抜け出したいという願いは叶えられない その矛盾にこそ、この世界から抜け出す鍵があるはず!それに、


 ダイアは先ほどとは違うことを願った それは、


「やっぱり どういうわけか、()()()()ちゃんはこっちにきてないみたい」


 アッシュに出会うこと ダイアが選んだのは、自分以外の誰かに頼るという道だった


「さぁ、話してもらうよ。クロス。これはあなたが作った()()なんだからね。縛りの影響を受けるのはクロス、あなたも例外じゃない。さぁ、話してもらうよ この世界の抜け方を」

「………フッ、ハハッ、ハハハハハ!」


 ダイアのその言葉に、クロスは声をあげて笑った


「アイク、聞いたかよ」

「嬉しそうだな」

「そうか?」

「揺籠の弱点 揺籠の矛盾点に気づいたのはさすがと言うべきか まったく面倒だ」

「とはいえだ、ダイアが揺籠から抜け出せるかどうか、それはダイアの手から離れているものだ 」


 ダイアが揺り籠から抜け出すための条件は俺が決めた 条件としては難しくないが、条件をクリアするのはかなり難しいはずだ さて、あの子は俺が決めた条件をクリアすることができるのかな?

 アッシュは




「そこをどいてください マリカさん」


 すでに生命が死滅した大地にて、


「うーん、無理 そもそも、なんでアッシュちゃんは夢の世界に行ってないの?」


 魔族と人間が対峙していた


「そこにある剣 ダイアさんの<世界を照らす希望の光(サン)>に私が触れることでダイアさんが夢の世界から解放される そういう縛りで私はここにいます」

「あー!そういうことか ダイアを閉じ込めるために新しい縛りを付けたんだ 普通の人間たちは夢の世界をそもそも認識できない 抜け出すとか、そういう概念がない だから抜け出せない縛りを入れる必要がなかった でも、ダイアだけは違う だから、ダイアだけに抜け出せない縛りを加えて、他の人間どもには何も影響しないよう縛りを加えたんだ その方が歪みが生じないからね 納得納得」

「勝手に納得しないでください!私は納得してないですよ!クロスさんがしようとしていることにも、マリカさんがそっち側にいることにも!」

「あいかわらず、いい子だなぁ」


 両者の間に、緊張は存在しなかった いつも通りに、ただ日常会話をするかのように


「殺りあう?」

「勝ちます」


 殺意をぶつけ合う


「アッシュちゃんからハッキリと 勝ちます って言葉を聞くとは思わなかったな 舐めてんの?」


 マリカが纏っていた柔らかい雰囲気は ふっと消え、


 世界に闇が訪れた


「こっから先、夜は私の世界だよ そういう縛りを私は入れてる」

「…やっぱり、マリカさんもオーバーロードなんですね」

「アッシュちゃん程度には使ってあげないけどね」


 さてこの状況、どうしよう

 アッシュは考えていた


 私が気絶して夢を見ていた時に、クロスさんが私の夢の中に現れた 告げられたのはさっきの、ダイアさんを復活させるための条件 そして、世界を救うために邪魔しないで欲しいってこと

 でも私は、それが正しいと思えない!


「全力で勝ちに行きます」

「来なよ」


 まずはダイアさんを復活させる 話はそれからだ 幸い、マリカさんは私のことを侮ってる

 私がパーティー内でも飛び抜けて弱かったからこそ、油断してる

 今回の勝利条件は 私が剣に触れる ただそれだけ!

 マリカさんはどこまで覚えていますか?私の本職が

 暗殺者だっていうことを!


<闇の抱擁>


「!面倒な <光あれ>」


 アッシュは全身に闇を纏った 日が堕ちてただでさえ見えずらいのに、さらに全身を漆黒に染めたアッシュをマリカは捉えられない

 だが、流石のマリカ アッシュが魔法を発動し終えるまでに魔法の中身まで看破し、対抗策として世界に灯りを灯す魔法を使っていた

 だが、


「…いない 気配も感じない これも魔法?…いや、実力か」


 マリカはアッシュを捉えることができずにいた


 私の勝利条件は剣に触れるだけ なら、マリカさんの意識を私に最大限引き付け、剣から意識を遠ざけ、その上で私が剣に触れる

 ということは、


 意識の狭間を突く


「! いた! 消えた ! また …なるほど やるね」



 アッシュは無音の歩行術、気配の隠蔽術、相手の死角を突く観察力、そう言った暗殺者としての全ての技術者を使い


 マリカの探知にギリギリ入るラインを往復し続ける


 わざと足音を立て、うっすらと感じる程度に気配を残し、捉えたと思わせた瞬間には死角から殺気をぶつける

 マリカの探知能力ではアッシュを捉えることはできない

 普通ならなす術がないが


「これって精神攻撃だよね アッシュちゃんがこんないやらしいことするとは思わなかったな でも、 あなたこそ、私のことを侮ってるんじゃない?私はそもそも 人間だけの能力でもバケモンだってことを 超広域殲滅魔法<降り注ぐ神の怒り>」


 マリカはただ人間の能力だけでも普通には収まらない


 マリカの魔力は元々帝都があった場所だけでなく、半径数十キロにまで展開した


「っ!やっぱり化け物 ふざけてる そんな方法で」

「アハハハハ!これはどうするの?」


 マリカの考えは至ってシンプル。どうしようもなくシンプルで理不尽なものだ


 捉えられないのなら、広範囲全てを消し飛ばしてしまえばいい という、圧倒的強者の考えだ


 そしてそれは、


「♫ 出てくるよね」


 アッシュを強制的にマリカの前へと引きずり出した

 アッシュはマリカの前へと身体を晒すしかなかった


 その直後 ゴロゴロゴロゴロ という、天の唸りが轟いたと思ったら、万物を打ちのめす雷が大地へと降り注いだ


 あ、危なかった 


 アッシュはマリカへと視線を向けつつ、自分のすぐ近くへと飛来した雷を見ていた


 時間差で降り注ぐ雷 それは大地を砕き、焼き尽くす

 そして、それを回避する能力は私にはない


 つまりは、作戦とも呼べないマリカの強引な考えによりアッシュは 死か、それともマリカの前へと身体を晒すかという強制2択を迫られたのだ


 化け物がぁ


「さて、次はどうするの?」

「<幻影><分身>」

「<標的(ターゲット)>」

「<魔法破棄(スペルブレイク)><抗・探知魔法(アンチ・スキャン)>」

「<大地崩落>」

「<天空走行(アナザーグラウンド)>」


 一瞬にして無数の魔法が展開される 人類史上 ここまで濃密に魔法を使った高度な戦いは存在しないだろう

 彼女たちが使っている魔法は、天候を操り、大地を変革し、そして空を翔

 まさに、人類の奇跡を連続して起こしているのだ


「アッシュちゃんってこんなに魔法使えたっけ」

「さっき使えるようになりまし、たぁ!」

「んー、アイクが完全に肉体をあるべき姿へと修復したから、魔族としての眠っていた才能や因子が活性化した?でも、この感じ、まるで」

「<神聖殺し(ダイン・スレイブ)>」

「! <地獄の業火>…アッシュちゃんてもしかしてすごい強い魔族の血を引いてたりする?」

「? なんですか急に」

「なんとなく」


 そう言ったマリカだったが


 神聖殺し なんて、ただの魔族が使えていいような魔法じゃない たしかクロスと一緒に侵入した禁書庫で見た、勇者どころか神すら屠ることができる、神聖属性必殺の一撃

 そんな魔法を、アッシュちゃんが使った?


「ふっ、ふふっ、ははっ!おもしろくなってきた」


 この時、ほんの一瞬の間、マリカは、


 アッシュちゃんに圧倒的な差をつけて倒してやる


 その思考の全てをアッシュだけに向けた。マリカの視線は、アッシュだけに集中しようとして


「!どこにいった」


 アッシュの姿を捉えることができなかった

 思考の全てをアッシュのことで埋め尽くした時点で、マリカは敗北していた


「!まさか!」


 気づいた時点で遅かった アッシュは


 よし!これでダイアさんが復活する


 ほんの一瞬、瞬きをする間もないほどの一瞬の間で既に<世界を照らす希望の光>の目の前まで来ていた

 ここまで来れば


 !間に合わない


 マリカが最速の魔法を放とうとも、アッシュが剣に触れる方が先だろう

 それは、たとえマリカがオーバーロードとしての能力を使ったとしても止めることはできない


 勝った!


 アッシュは身体の勢いに抗うことなく、そのまま剣へと手を伸ばし


「俺の感じた悪い予感はこれか 危なかったな」


 アレンの剣によって完全に消滅させられた





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