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いずれ最強伝説  作者: piccle
109/114

別れ

 ダイアとアイク、アークの戦いは


「ちっ、また防がれた」

「俺たちは君の全てを認識している。俺たちには勝てない。諦めろ」

「うるさいな!」


 膠着状態にあった

 あらゆる攻撃を放とうと、そのことごとくを防がれる。ダイアは今、攻めあぐねていた


「俺の能力<私はあなたあなたは私(レゾン・デートル)>はただ能力をコピーするだけじゃない。俺は君と同一になる事で君の思考までをも共有する。君が何を考え何をするのか、その全てが俺にはわかる」

「君は今、さらに時を加速させて僕たちを振り切ろうと考えている。君自身にとっても未完成の能力、僕たちがコピーしてもすぐ対応できないぐらい成長させるつもりだ」

「へー、そこまで分かってるんだったら止めた方がいいんじゃない?」

「いや、問題ない。俺たちはただ」

「お前を足止めするだけだからな」

「あっそう!」


 そう言いながらもダイアは


 少しずつだけど…掴めてきた。この加速の行き着く最終地点が


 この戦いの活路を見出し始めていた


 私のこの思考が読まれてないってことは、向こうは私の能力の本当の力に気づいてない。私ですら半信半疑のこの能力に

 でも、これは、もはやただゼロにするだけじゃない

 これは運命にすら干渉する能力だ

 こんなこと、本当にできていいの?


「…?なにかおかしいぞ」


 そして、その影響が大きくなるまで2人は気づかなかった

 それは、一つ一つの影響が小さかったのもある


「ダイアの思考と行動がズレてる」

「あぁ、ダイアが考えて行動した瞬間には、俺たちが対応した行動への対処がされている」

「これじゃあまるで、俺たちの思考が読まれてるみたいじゃないか」


 もしかして、これが私のオーバーロードとしての最終段階の能力 希望を扱えるようになるっていうのは実は、まだ途中の段階だった

 オーバーロードには、さらにその先があった


 ダイアが目覚めようとしていた能力は未完成ながらに


「くっ、対処が」

「間に合わない!守りじゃダメだ!攻めに」


 アイクとアークを圧倒し始めていた

 能力的には全員が同等、しかし、扱える能力の数、人数の差を考えればアイクとアークの方が圧倒的に有利であるはずなのに


「ダメだ!無理やり押し切られる!」

「嘘だろ!僕たちがこんな、ゴリ押しで!」


 ダイアの覚醒途中の能力と、生まれ持った天才の才能が2人を突き放す

 戦いの均衡は完全に崩れ、ついには


「グァァァ!」

「!アイク!」


 ダイアの剣がアイクを捉えた

 ダイアの剣に触れれば誰だろうと消滅することは免れない。アイクの身体は今、胴体が消し飛ばされていた

 そして、その消滅の力は


「!マズイ! 身体がどんどん消えていっている!」


 胴体から全身へと広がろうとしていた


「ふんふん、まだ規模は小さいけど、なるほど、これは使えるな」

「どうにかしなくては このままではアイクが消えてしまう」

「もう無理だよ アイクは無限の希望エネルギーをまともに喰らった もうどうすることもできないよ そして、次はアンタの番!」


 ダイアがアークに向かって一歩踏み出した

 ダイアの攻撃をまともに受けたアイクはまだ絶命してはいなかったが、それでも能力は解除され、もはやアークには回避することも、防御することもできない

 終わった


「やっぱ2人じゃキツかったか<世界を隔てる闇(ダークカーテン)>」


 そう思われた瞬間、突然、ダイアとアークたちを分断するような、巨大な闇の壁が地面の底から現れた


「あぁ?なにこれ」


 急に現れた漆黒の壁に、ダイアは一瞬足をとめ


「これは…」


 アークはその存在に困惑したが、同時に全てを理解した


「消滅は…してないな。よし、」

「クロス!」

「待たせたな」


 クロスの儀式が完了した


「お前ら2人の能力で止めきれなくなったか」

「すまない、助かった」

「だが…どうやらこれは俺が想定していた展開とは少しちがうな。ダイアは本当の能力に気づかないで別の方向へと進化したのか。うん、この程度なら、なんの問題もない。俺が行こう」

「なっ、なにを言ってるんだクロス。俺たちの計画で最も重要なお前を戦わせるわけには」

「いいから、それよりもお前らはどっかに避難しとけ。もう来るぞ」


 そう、クロスが言った瞬間


 ピシッ


 闇の壁に亀裂が生じた


「いいか?俺の闇は無限じゃない。そろそろ破られるぞ」

「だが」

「そうだな…<私はあなたあなたは私(レゾン・デートル)>を使って水の都 ウィンディーネに避難しておいてくれ できれば例のものの回収も 俺は後から向かう」

「…分かった。あとは任せたぞ」


 アイクとアークの身体は純粋な光に包まれると、即座に消え去った


「ふぅ、計画に必要なアイクが消されなくてよかった。アイクが消されたら本当に困る。希望の力でアイクが消されたら存在していたという事実も消滅して別世界にも存在しなくなる。<Re.world(ダイアモンドロジック)>は別世界から連れてくることはできても存在しないものを連れてくることはできない。本当に間に合ってよかった。そして、」


 クロスが亀裂を見つめた瞬間


「こんなもので私を止められるとでも!すぐにトドメを  え!?クロス!」


 ダイアによって闇の壁が完全に消し飛ばされた


「相変わらずだな。実際の時間にしたら数時間しか空いてないはずなのに、何ヶ月もあってなかったみたいに感じるよ」

「え、あれ?いつここに、アイクたちは、いや、それよりも」


 ダイアは剣を鞘に収めると


「クロス!ずっと会いたかったよ!」


 クロスの元へと走っていき、飛んで抱きついた。クロスの存在を確かめるように腕を背中まで回し力の限り抱きしめ、頭をクロスの身体にぐりぐりと押し付ける

 それに対しクロスは抵抗する事なく、むしろ優しく抱きしめた

 側から見ればかなり異様な光景に映るだろう

 生存者が1人も存在せず、瓦礫しか残らない街の中心で2人は今、


「ダイア。俺もダイアに会いたかった。愛してる」

「!!! やっと、言ってくれた」


 お互いの気持ちを交わらせていた


「何年もその言葉を、待ってたんだよ?」

「うん、分かってる」


 胸の辺りがじんわりと湿っていくのを感じながらクロスは、ダイアの頭を優しく撫でた


 これが


「ダイア、君のことを愛している。昔からずっと、ダイアのことだけを愛している。だから、」


 最期の時だ

 俺とダイアが、一緒にいられる最後の時間だ


「俺は、行かなくちゃならない」


 嫌な予感 ダイアが抱いたのはまさにその感覚だった

 クロスの身体に押し付けていた頭を上げ、クロスの顔を見た瞬間に理解した

 クロスはまた


「い、いやだ。行かせない。もうどこにも、1人で行かせない」

「ごめんな」


 1人で何かをしようとしているのだ


「絶対に行かせない」


 ダイアは即座に剣を抜くと、全身に希望のエネルギーを迸らせた

 ダイアはもう、分かってしまった

 言葉じゃクロスは止まらないと、力づくでないとクロスを止めることができないと

 今のクロスは、もう覚悟を決めた後なのだと


「さっきの戦いを観ていたから君の能力は完全に理解している。加速の行き着く最終地点にダイアは未来を選んだんだな。俺とは、そこが違うんだろうな。そうだよな、普通希望は未来を望むよな」

「<未来へ手を伸ばす(ホープ)>この能力で私は常に未来に存在する。未来での私の行動は現実へと反映される。つまりは、私は常に相手より数秒速く行動できる」

「強力だが、所詮はその程度。<re.world(ダイアモンドロジック)>は本来の能力へと還った。全てはあるべき世界へと回帰する」


 クロスとダイア、2人は生まれて初めて、本気で対峙していた

 2人の間に達人の間合いだとか、心理的な駆け引きは存在しない。ただ、全力で全てをぶつけ合うだけ

 互いの想いも全部を載せてぶつかり合うだけ

 それしかできなかった


 先に動き出したのは、


「!私の未来視が遅れた?!」


 クロスの方だった

 常に数秒先の未来が見えているはずのダイアは、常にクロスに先手を打たれ続け、さらに加速させて遠くの未来に到達しようとも、その状況は何も変わらなかった


 クロスは常に、ダイアの先に存在し続けた

 いや、正確には


「これが<re・world(ダイアモンドロジック)>の真の能力。俺は常に過去に存在した。定められた過去を変えることは何者だろうとできない。 俺以外にはな」

「どういうこと…?」

「今の君には分からない領域に俺はいる 世界は俺に平伏した。この世界も運命も俺の望むがまま。まさに最強 そう言えるだろう」

「待って!クロス!」

「…さよなら…」


<虚世界・天国 幸福な世界>


 ダイアはこの世界線から消えた


 これでいい、これでいいはずなんだ。この世界ではもうダイアに会えることはないだろうけど、俺が世界を創り直すことで世界はあるべき正しいものへと還る


「…向かうか」


 胸に大きな喪失感を抱きながらも、クロスはウィンディーネにいるはずのアイクたちを探知して


「ちょっと待て、どうなってる」


 今どちらかがおかしな状況にあることに気づいた。いや、この表現は正確にいうと正しくない


「どうして1人しか反応がない。しかもこの反応、誰だ」


 どういうわけか、ウィンディーネにはオーバーロードの反応がひとつしかなかったのだ

 しかも、その反応がどちらのものかは判別できない


 アイクの受けた希望は俺の闇で打ち消したはず、まさか、まさかだろ

 とりあえずすぐに飛ぶか と、その前に


「おい、そろそろ起きろよ」


 クロスはダイアによって倒されていたアレンを起こしに向かった


「…すまん」

「いや、あれは無理だろ。むしろよく数分もったとおも…その眼」

「状況は?」

「とりあえずダイアは隔離した。<虚世界・天国 幸福な世界>が発動してるからアイクとのリンクは切れてないはずなんだが」

「…そういうことか」

「とりあえず向かうぞ。確認しなきゃならない」


 …アークの能力も使えるままなんだよな


<私はあなたあなたは私(レゾン・デートル)>


 クロスたちは一瞬にしてその場から消えた


 その場に残ったのは


 弱々しい力を放ち続ける<世界を照らす希望の光(サン)>のみだった




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