漆黒の光たちvs無限の希望
「俺に必要なのは精神的な力だ。俺が持つ本来の力を発揮するためにはそれが必要だ。次に、希望の結界を破る鍵。世界から絶望を消し去るために一度希望による守護を消し去らなくてはならない。だが、その時に必ずダイアは邪魔になる。だから」
ダイアを仲間とすることはできない
「よく分からないが、ダイアを消せばいいのか?」
「いや、それはできない。俺たちは魂の格が高位の存在になりすぎた。もはや俺たちは概念に等しい。アレンもだが、俺たちには真の死は訪れない」
「ではどうしろと?」
「ひたすら足止めし、遠ざけ、逃げる。とにかく俺たちに干渉させない。それが1番だ」
「そうか。なら、俺たちが行こう」
「任せた。アイク、アーク」
クロスが言い終わると同時に、2人はクロスの世界から消えた
…アレンがやられたか。痛いな
「…俺はこの儀式を終わらせるか。儀式魔法<死転戒神>」
ダイアが本当の自分の能力に気づいてしまったら、その時は俺が直接行くしかないのか
「痛いな」
「やっと見つけた」
アレンとの戦いが終わってから数秒も経たないうちに、
「クロスはどこ?」
ダイアはアイクとアークを見つけていた
「はぁ…また足止め?悪いけど、あなたたちは一瞬で殺すよ?粛清騎士は時間を無限に加速した上で数分かせがれたけど、あなたたちはそこまで強くないでしょ」
そう言いながらダイアは、先ほどのアレンとの戦闘を思い出していた
…今思い出しても本当に意味が分かんない。1を無限で割れば0に等しくなるはずなのに、なんでその状態で数分粘れるの。私だけ移動速度が加速し続けてるのに、その状態の私の攻撃から耐えるだけじゃなくて反撃までしてこれるの
そう考えながらダイアは、先ほどアレンから攻撃を受けた箇所を手でさすっていた
…まだ微妙に痛む。傷が治るまでの時間も加速させたからよかったけど、前までの私だったら即死だったな
しかもそれを、10発以上も
本当にふざけてる。アイツなんなの?
これは、誰にも、そしてアレン自身にも想像できなかった
アイツ、途中から私の加速に追いつきそうな速度で力が増してきた
アレンは、クロスの血を吸収したことにより、<断裁>が<願う者>に戻っていた
そして、<願う者>がアレンの願いに応え、能力自体がさらなる成長を迎えていた
そしてそれこそが、アレンのオーバーロードとしての能力でもあった
クロスやダイアたちのように、実際に目で見て体感できるものではないが、確実に世界の理を超越する
アレンにしか扱えない究極の能力が
「君に会うのは初めてだな。ダイア君。私の名前はアーク。今回の騒動の首謀者だ」
「! いや、おかしい、なんで首謀者のあんたがここで出てくるの?普通は、1番最後でしょ」
「確かにそうだな。普通は1番最後だ。普通はな。一応君には伝えておこう。君の愛する彼、クロスだが、彼は私たちの救世主となった」
「は?…は?」
アークの唐突な発言。クロスが救世主になる。それが指す意味とは
「嘘だ」
「嘘ではない。今は彼が私たちを希望ある未来へと引っ張る先導者なのだ。彼と私たちは志を共にする同士であり、私たちは彼の希望ある救世論に賛同した。だから、」
「もういい!これ以上話を聞きたくない!」
「…」
「あんたたちを殺した後に、クロスから直接聞く」
「まぁ、そうなるよな。アイク」
「あぁ <融解する夢と現>」
世界は夢へと至った
「またそれ?悪いけど、こんな程度の能力じゃ私には勝てない。ゆっくり考えて分かったんだよね。この能力。確かに強力ではあるけど、弱点が一個ある。それは、一度に一個までしか夢を叶えられない。同時に複数は叶えられない。一個一個順番に叶えていく必要がある。どんな夢でも叶えられるけど、それだけはどうしようもない」
「弱点か。確かに君からしたらそうなのか。だが、」
「だからこそ、私がいる」
「ふぅーん どんな能力か知らないけど、」
そう言いながらダイアは手を剣へと伸ばし、次の瞬間
「能力を使われる前に消せば問題ない」
アイクとアークに向けて剣を振るっていた
だが
「! うそ!」
「なるほど、いい能力だ」
それは、アークの剣によって防がれていた
…今の動き。今の感触 まさか
「能力のコピー それがあなたの能力なの」
「今のでもうバレたか。そう、私の能力<|私はあなた・あなたは私>は相手の能力を一つ完全にコピーする」
いや、それだとおかしい。もしそれが能力なら、私の攻撃にちょうどで合わせたり、逆に同じ威力の剣撃を振るえるわけがない !そうか
「そのためのアイクなのね」
「さすがだな。そう、私の能力は今、アイクの能力によって二つまでコピーできるようになっている。だが、それだけじゃないぞ」
「ダイア、君の能力は僕達と相性が悪い。諦めて大人しく帰ることをオススメするよ」
「なるほど、めんどくさいな」
ダイアは人類史上初めて、オーバーロード複数人を同時に相手にしていた
そもそもの話、オーバーロードたちはお互いに干渉しない。それは、オーバーロードが生物として究極の先へと到達した孤高の存在であるからだ
この時のダイアの めんどくさいな には複数の意味が込められていた
アレンを倒し実質的に世界最強となったダイアだが、それでもオーバーロード2人というのは キツイ
しかも、2人の能力同士の相性がよく、そして自分が強く不利
現時点で分かっているのは
・自分が持っている能力を2つとも相手が使用することができる
・アークはさらにもう一つ能力を持っている
・先に倒すべきはアイクだということ
これら全ての考えをまとめたうえで
時間がかかりそう
ダイアの頭にあったのは己の勝利のみだった
アイクさえ倒してしまえば私の勝ちだ。私の能力は<無限へと続く道>がなければまともには使用できない
まずは、アイクから潰す
無限の希望エネルギー、それはダイアに全てを可能にさせる
それこそ
<消失する白>
街全てを消し去るなんてのは造作もない
そんな威力の攻撃をノータイムで連続して撃ち続けることさえも可能だ
だが
「<消失する白>」
「!技までコピーできるの」
アークはそれに対して全く同じ威力の攻撃をぶつけ、そのことごとくを相殺していく
…めんどくさいなぁ
「ここに来てまさかだよ」
結局のところ、この戦いの勝敗を左右することになるのは
「使うの久しぶりだから威力落ちてないといいけど!<アイシクルスピア>!」
「! なに!<火炎そ…」
オーバーロードの能力を抜きにした素の実力だ
ダイアの放った氷の槍は、アークが魔法を完成させるよりも先に、アークの身体に着弾し、貫いた
そしてそれは、
「ぐっ、肉体が凍っている」
アークの身体を凍りつかせていた
「結局のところ、オーバーロードは肉体に依存している。魔法や能力の発動はできても、肉体を伴う攻撃はできない」
「こんなもの、すぐに」
「させると思うの?」
氷が溶けるまでの時間をゼロにしようとするアークをダイアは許さない。先ほどよりもかなり威力は低いが、魂ごと消滅させるには十分な威力の純粋な希望エネルギーをアークに向けて放ちつづける
「これで完封、と。さて、ナイトはいなくなったけど、どうするの?」
そう言いながらも、ダイアはすでに、アイクに向けて剣を振り下ろしていた
アイクに向けて無慈悲に振り下ろされた剣、それは
「言っただろ、それだけじゃないって<もう1人のわたし>!俺とアイクは2人で1人だ!」
ガキン!
甲高い音を立てて、アイクの振るった剣に弾かれた
「は?アンタも?!アンタも私の能力が使えるってわけ?」
「これこそが、僕たちの本来の能力」
「これが俺たちの本来の能力の使い方だ」
ギリィ 「めんどくさいな!もう!」
ダイアとアイク、2人の勝負は再び開幕した
「アイツらに、ダイアはどう勝つ」
半径10メートルに及ぶ巨大な魔法陣の中心で、クロスはダイアのことを考えていた
「俺の能力だったらなんの問題もなくあの2人に勝てるだろう。だが、ダイア、あいつの能力は相性が最悪すぎる」
クロスの下にある魔法陣は薄暗い不気味な光を放ち、その光はクロスの身体を包み込むように集まりつつあった
「アークの能力の本質は、自己と他人を完全に同一のものにすることにある。おそらくアークは、ダイアと同一になって無限の希望エネルギーをコピーするだろう。そしたら、今度は並列してアイクと同一化し、アイクに無限の希望エネルギーを使えるようにする。能力をコピーし、さらに別の人間に与える。これは本来なら希望の消費が大きすぎてできないものだが、無限の希望エネルギーを手にしたアークならなんの制限なく可能。おそらく、ゼロへと至らせる能力まで渡せるだろう。ダイア、君はどうやって勝つ。それとも、負けてくれるか?…いや、ダイアが負けることはないか。俺もさっさとこれを終わらせるか。そろそろ戒めも書き換えられたか
<生誕解神>」
魔法陣は眩いほどの光を放ち
「これで俺は、また一つ究極に近づいた」
次の瞬間には完全に砕けて散った
「さて、まだやってるだろうし、ちょっと見に行くか」