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第3話 最初の出会い


3.最初の出会い



 向こうの方から何かが出てきそうなのを感じて、わたしは今、心臓が口から出てきそうなくらい ドキドキしている。


 とっさに懐中電灯のスイッチを消した。


 そして、できるだけ自分が今入って来た、この大きな広間の入り口近くの壁側に近づいて身を隠すことにした。


 電気を消すと完全に真っ暗になるので、手探りで歩かないといけないけど、物音のする方からは誰かが松明を持っているのか、ぼんやりとした灯りが見えてくる。


「どうしよう・・・人ならいいけど、何かまた変なのが出てくると嫌だなぁ・・・」


 できるだけ物音を立てないように、息を殺して、灯りの正体を確認したいと思った。






 しばらくすると何か出てきた。


「いち、にー、さん、よん、ご・・・五人いるみたい」


 松明の灯りから、出てきたのが何なのかようやく見えてきた・・・



「ひぃぃっ・・・」


 思わず、小さな悲鳴が漏れた。


 向こうに自分の悲鳴が聞こえたかどうかは分からない。



 

 一度大きく息を吸い込むと、そこから逃げた。


 元来た方向へ急いで走った。



 すると、後ろの方で、何か声が聞こえる。


「何かいるぞ!」


 言葉はよく分からなかったけど、そんなことを言ったような気がした。



「見つかった・・・見つかった・・・変な緑色のバケモノに、見つかっちゃった・・・・・・」



 つぶやきながらも、追いつかれないように必死で走った。



 「こわい、こわい、こわいよー」



 声に出して何とかなるわけではないが、声に出さずにはいられなかった・・・



 そうやってしばらく走ると、何とか、また洞窟から出ることができた。




 外の光があまりにも眩しくて、一瞬目が眩んだ。


 それでも、じっとしているわけにはいかない。


 とにかく走りに走った。



 後ろを振り向くと、緑色のバケモノが5匹、追いかけてくる。


「あれ、確か前にアニメで見たことあるやつだ・・・確かゴブリンとかいうやつだ・・・」



 わたしは恐ろしくなって、できるかぎり早く走った。



「はぁ」



「はぁ」



「はぁ」



 怖くて、必死で逃げ続けている。振り向くと、変な姿の奴は追いかけてきている。



 しかも、その変な奴らがとの距離はどんどん近づいている気がする。


 走りながら、リュックサックの、さっき出した「せんべい」の袋を取り出した。


 近づいてきたら、また投げる。そうしたら、また、せんべいに興味を示すかもしれない。


 自分が走っている道は、だんだん林が深くなってきている。舗装された道路じゃないので走りにくかった。


 こんなところで転んでしまったら、たぶんすぐ追いつかれてしまう。



 その時。わたしはお祭りの時に、お気に入りのおばあちゃんが買ってくれた紺色のワンピースを着ていた。


 幸い、今はいている靴は運動靴なので、走るのは何とか大丈夫。でも少し、走りにくかった。



 これ以上近づかれると嫌だし、作戦をまた実行することにした。


 せんべいの袋を開けて匂いがするようにして、少し道から外れた所に向かって投げた。


 でも、あまり遠くに飛ばなかったけど・・・・



 すると、少し前に進むと、崖のようになっていて、大きな一本の木が、その根を張り出しているところが見えた。


 それで、とっさにその木の下に飛び降りた。


 高さは3メートルくらいあるのでちょっと勇気がいったけれど、この木の下なら隠れられるかもと思った。


 大きな木のすぐ横は崖のようになってるけど、わたしは勇気を振り絞って飛ぶことにした。


 飛び降りると、ちょうど、その木の下に、子どもがちょうど隠れられそうな穴があった。それで、何も考えずにその飛び込んだ。



「はぁ はぁ はぁ」


 まだ、息が上がってしょうがない。


 慌てて、口を押さえ、何とか声が外に出ないようにした。


 あとは祈りるしかない。


 心臓はバクバクと音を立てている。





 しばらくすると、その木の上にある道のところに、数匹のゴブリンがきょろきょろしている。


 とにかく黙って祈る。今のわたしにできるのはそれしかない。



「神様助けて、神様助けて、神様助けて」



 何度も何度も、呪文のように唱え続けるた・・・・



 しばらく息を殺してじっいとしていた。すると、最初は緑色をしたゴブリンは木の上の方に来て探しているようだったが、今は静かになっている。


 どうやら行ってしまったようだ。


 でも、まだ心臓はバクバクと激しい音を立てている。


 しばらくして、目を開け、上の方の気配を探って、周りを見渡してみることにした。どうやら、どこかに行ってしまったみたいだ。




「はーっ」



 大きく深呼吸をした。 これで、一息つけそうだと思った。


 少し落ち着いて、自分が潜り込んだ大きな木の根元にできた空間を見てみた。


 すると、自分の目の前に何かいる!


 わたしは目を大きく見開いた。



 よく見ると、それはふわふわの雪のような白い毛に身を包んだ犬のように見える。


 もし犬だとしてもかなり大きな犬だ。



 家でも犬を飼っていた。ラブラドールレトリバーという犬種だ。だから犬は嫌いじゃない。でも、吠える犬は嫌いだった。それもこんな大きな犬のいるところに突然入り込んだ来たら、怒るんじゃないか? 急に怖いという気持ちが出て来た。


 落ち着いたはずの心臓が、再びバクバクと音を立て始める。




 しかし、その犬のような生き物は、「はぁはぁ」と苦しそうに息を切らしていているようだった。


「ねぇ、あなた喉が乾いてるの?お水飲む? あっ、お水じゃなくて麦茶だけど、飲んでみる?」


 わたしは水筒の麦茶を、右手をお椀のようにして、犬?の口元に持って行って、飲ませてみようと思った。


 白い犬のような生き物は、わたしの手からお茶をペロペロと舐め始めた。



「よかったー。可愛いいねぇ あなた名前は何ていうの? うちにも昔あなたみたいな犬がいたのよ。ラブラドール・レトリバーっていうの。知ってる?」



 麦茶を飲んで、その白い犬は少し落ち着いたようだ。


「じゃぁお腹も空いてるでしょ。わたしも、昨日から何も食べてないからお腹ペコペコ」


 そう言って、リュックサックからお菓子を漁った。



「確か、犬ってチョコレートは食べられないのよね? だから、これはわたしの。でも、このクッキーならあげる」


 ヨシノは、夜店の射的で取ったクッキーを一枚、その犬の口元に置いた。そして、自分も一枚口に入れて、食べた。


「大丈夫よ、食べられるわ。ほら、美味しいよ」


 わたしが2枚目のクッキーを食べようとすると、少し安心したのか、犬もクッキーを食べ始めた。


「ザク、ザク、ザク」


「あら、いい音ね。美味しい?」


 犬は、そのクッキーを一枚食べ終えると、物欲しそうに、まだ口元をペロペロやっている。


「じゃあ、もう何枚かあげるね。はい、どうぞ」


 さらに2枚のクッキーを犬の足元に置いた。


 犬は喜んでむしゃむしゃ食べている。


「あなた、真っ白で、ふわふわね。名前あるの?」


「むしゃむしゃ・・・」


「そうね、分からないよね。じゃぁわたしが名前をつけてあげる。わたしが好きな食べ物に似てるから、ユキミってどう?可愛い名前でしょ?」


「むしゃ、むしゃ」


 ユキミと呼ばれた白い犬?は、ひたすらむしゃむしゃとクッキーを食べ続けている。


 ユキミを見ているとわたしは新しい友達ができたみたいな気がして、少し不安な気持ちを忘れられる気持ちになった。



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