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第1話 えっ、これ異世界転移っていうの?

1. えっ、これ異世界転移っていうの?



 きっかけは夏休みだった。


 夏休みに、ヨシノはおかあさんの実家に来ていた。



 ヨシノにとって、おばあちゃんの家で夏休みを過ごすのは大好きな時間で、中でもお盆休みの時に行われる『洞窟祭り』が一番好きだった。


 


 ヨシノは、去年の夏初めておばあちゃんとおじいちゃんに連れられて「洞窟祭り」に連れて行ってもらった。洞窟に入ったのもその時が初めてだ。


 洞窟と言っても、昔、戦争の頃に造られた防空壕だ。何でもおばあちゃんの家の近くに大きな工場があったとかで、この工場で作られていたものを隠すために作られた洞窟なのだという。ただその洞窟は結構大きくて畑の広がる土地に隣接する山の中に掘られた洞窟は、奥行きが百メール以上もあって、洞窟は途中でいくつかの道に分かれている。外からはさびれた神社があるようにして見えないので、格好の隠し場所になっていたのだろう。


 

 でも、ヨシノにはそのあたりの詳しいことはあまりよく分からなかった。


 この洞窟は、夏休みの「洞窟祭り」の時だけ、一般の人も入れる。このお祭りの時だけの特別イベントだ。


 洞窟お祭りの特に、面白いと思うのは、誰かが地面を通っているコンセントのコードに足を引っかけると、真っ暗になってしまうところだ。


 去年連れて行ってもらったときも、途中で何度も停電になった。


 その度に、「おい、誰がコード踏んだ!」って大きな声が聞こえてくる。


 みんなも慣れているのか、特に大騒ぎはしないが、突然暗い洞穴が真っ暗になる。

 わたしがびっくりして、怖がるのは仕方がないことだと思うんだけど、怖がるわたしを、お母さんが冷やかしてくる。


 でも、お母さんから懐中電灯を貰っていたので、いざという時にはそれをつければいい。そう思えば安心できた。


 真っ暗になった洞窟の中で、自分の懐中電灯をつけられるのがまた楽しかった。


 周りの人たちも、停電の時になるとわたしがつけた懐中電灯のあかりで嬉しそうにしている。


 洞窟の中には、たくさんの屋代が出ていて、金魚すくいや、綿あめ屋さんなんかもある。イカ焼き焼きや、焼きそば屋さんなんかも出てている。洞窟の中でそんなことをしたら煙だらけになる気がするけど、意外に大丈夫だった。何でだろう?ひょっとすると、先に作ってあって、温めているだけなのかもしれない。

 電気が灯れば、真っ暗な洞窟の中で、色とりどりの提灯やランプの明かりがついていて、とても綺麗だった。


 実は、今年は是非行ってみたいと思っている所があった。いつも、行き止まりのところまでくると、誰も入ってはいけないロープが張られている。でも、今回はこっそりそこに入って、その奥がどうなっているかを見てみたいと思っていた。


 大人は、「あそこは発電機が置いてあるだけで何もない」と言うけれど、わたしは自分でその先がどうなっているか見てみたいと思っていた。



 そんなことを考えていたからなのかなぁ・・・



 今年の洞窟祭りで射的をやった。


 はじめて大きな的を倒すことができた。


 倒れたお菓子は全部もらえる。


 今まで食べたことのないほどの沢山のお菓子をもらったので、ちょうど背中に背負っていたリュックサックにお菓子を全部詰め込んだ。


 今度は金魚すくいをしようとおばあちゃんと話していた。


「ああいいよ。じゃあ行っておいで」


 おばあちゃんがそう言ったので、金魚すくいに行った。


 すると、その途中で、また停電になった。


 びっくりしたけれど、リュックサックに懐中電灯を入れたままで、その上に沢山のお菓子を入れてしまったので、すぐには出せないと思った。


 ちょっと怖かったけれど、そのまま電気がつくのを待っていたけど、明かりはなかなかつかなかった。


 ちっとも電気がつかないので、じっとそこで止まっていることができなくて、来た方向と反対方向に行けばおばあちゃんの所に戻ろうと思って動き出した。でもだんだん、人の声が聞こえなくなってしまって・・・でも、それでもわたしはまっくらな洞窟を歩き続けた。


 途中で何度もおかしいと思ったけれど、わたしはこのままどんどん進めば洞窟祭りの入り口に出るはずと思って進んで行った。いざとなればリュックから懐中電灯をだせばいい。そんなふうに思っていた。


 出口にたどり着けると思ってどんどん進んだのに、ちっとも出口に出られない。


 しかも、いつまで行っても人の声も全然聞こえてこない。おかしいと思ったけどどうにもならず・・・ついにわたしは怖くてなって、ちょっと泣いてしまった。



 でも、いくら泣いても誰も来てくれない。



 そのまま泣いていても、誰も来てくれないのでしょうがないと思って泣くのをやめ、リュックサックからランプを探そうとリュクの中を探って、やっと懐中電灯を取り出した。


 それで、やっと周りを照らしたんだけど、お祭りの人たちはどこにも見えなかったし、ぜんぜん知らない場所にいるよな気がした。ライトで照らしてもどこにも誰もいない。それで仕方なく、そのまま一人でどんどん出口を目指して進んで行くことにした。


 しばらく、そのまま進んで行くとやっと出口が見えて来た。


 外はまだ夜だったけど、街灯のランプもないし、お祭りの明かりもどこにもなかった。


「おかーさん。どこいったのー。おかーさーん、おばーちゃーん。おじーちゃーん」


 けっこう大きな声で叫んだし、何度も読んだけど、誰も気づいてくれないし、車も一台も通らなかった。


 それで、心配になってくるし、怖くなってしまって、わたしは洞窟の出口の所でまた泣いてしまいました。






 ・・・・・・





 気が付くと朝になっていた。


 どうやら、そこで眠ってしまっていたみたい。



 でも、朝の光に包まれた目の前の景色を見た。そこはわたしが今まで見たこともない景色でびっくりした。


 そこは全然、知らない場所で、一度も見たことのない景色だった。



「こういうの、アニメで見たことがある・・・」


 たしかどこか知らない世界に転移するはなしだ・・・


「えっこれ、異世界転移ってやつ? うそー」




 そんなことを話していると・・・洞窟の中からなんか出て来た!


「うわ~ 水色のうにうにしてるの なに~ 気持ちわる~」


「スライム!!」


 最初はちょっとテンションが上がって見てたんだけど、これって襲ってくるやつじゃないの?


 わたしは急に怖くなったので、スライムから逃げることにした。


 少し離れたので、落ち着いて持ち物を確認しよう。



名前 ヨシノ

年齢 10歳

性別 女の子

武器 なし

持ち物 リュクサック、おかし(たくさん)、懐中電灯、お財布(1200円)、タオル、水筒


 以上


 えっ これまずいじゃない?


 わたし、泣いてる場合じゃないかも


 どうしよう マジで・・・



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