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泉の女神は戦がお好き  作者: 久能 柑子
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金の魔剣

もうお終いだ。なんなんだよこの人生。


血だらけの頭を抱え、膝を折る。


涙がボロボロこぼれてくる。


声も漏れて、辺りにこだまする。


鳥たちが、木々が俺を笑っている気がする。




薄暗く、生きていく自信を失っていった。










---そのもの。顔を上げなさい。










誰かが呼ぶ。


女性の声。えらく透き通った美声。


耳が、頭が浄化され行く感覚。


俺を気遣ってくれている。


だが相手にしてほしくなかった。






「うるせぇよ・・・ほっといてくれよ・・・」


嗚咽を交え、鼻をすすりながら絞り出すように答える。










---謝りなさい。










は?








顔を上げる。


すると泉の水面が輝いていた。


白いベールに身を包み、膝まである長髪をなびかせて


女性は煌めく泉の上に浮かんでいた。






俺のパンツ持ってるけど。






顔を見ると、こちらを睨みつけ、歪んだ口角からは純白の奥歯。


でもそこから歯ぎしりが聞こえていた。




唖然としている俺に続ける。






---謝りなさい。ここをどこだと思って。私をなんだと思っているのですか。


3000年の間でこんな屈辱的なものを放り投げられたのは初めてです。


先ずは謝りなさい。








はあ。








少し頭が回ってきた。


いやいやいや。何で謝るんだよ俺が。


あいつパンツ泥棒じゃねえか。






「あの、どちら様ですかね。それ俺のパンツなんで返してもらえます?????


人のパンツ盗んでおいて何様なんですかあんた!!上からものを言うなんて失礼だろが!!!!!!!」








すると女性は目を見開いて、


俺に手を向ける。






瞬間-----。




ズドンという轟音と共に身体がはじけ飛んだ。








胴体に大きな穴が開き、四肢が四散していく--------。




首から上は無事だが、これはもう助からない。






と思いきや。


即座に身体が修復され、飛び散った四肢が元通りに繋ぎ止められた。








メルか?






バッと仲間のいる方に目をやる。






ぐっすり寝ており、尻をかいていた。






どういう・・・・?






ハッとして女性に目を戻す。


すると女性は真顔で淡々と言った。




---私はこの泉の女神です。


この神聖な泉にこんな汚物を投げ込んだことを悔い改め、謝罪なさい。


3秒以内に真摯な対応が見られない場合は、次は殺す。






頭が理解するよりも早く身体を縮こませて、首を垂れる。






ジークフリート・フルフロンタル。


この半生で数え切れぬほど土下座をしたが、今回のはその人生の中で一番見事な土下座だったと思う。






「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」






本気の命乞いは初めてだったから。












俺の悲鳴ともとれる謝罪のこだまが鳴り終わり、しばらくしてから女神様は口をお開きになった。






---あんたねこの泉はな聖水なんだけど。わかる?


それをこんなに汚しちゃって。1000年程前に悪魔に穢されたとき並みの屈辱だわ。


これがどういうことかあんたにわかる!!??










返す言葉もない。










---いいでしょう。今回は。










ため息交じりに許される。










---それよりあなたが落としたのは


この汁の染みついたオエ!クッッッッッッッサ!!なにこのパンツ!!!!!










俺のパンツを顔の高さまで上げたせいで、


ゴホゴホと咳する女神様。




すみません。本当にごめんなさい。






---はぁはぁ・・・。このパンツですか?


それともこの銀のパンツですか?それとも金のパンツですか?








金のパンツってなんだよ






ポカンとする。


そしてハッとした。


女神様が目の前にいる。


しかもちょっと近い。


よく見ると薄いベールを上下で分けて着ている。


ほぼほぼ全裸では?






その綺麗な肢体に関心しながらちらちら見えるおへそに気を取られる。






??






違和感。




何とも言えない違和感。




本来であれば縦に綺麗なラインをのぞかせるおへそ。


スタイルが良ければそうなっているハズ。






けど見覚えのある、というか俺みたいにぽつんとした穴。


少し横に伸びているようにも見えなくもない。




更におへそを凝視していると


下のベールをまとった跡が付いていた。








太ってるんか?????


女神様。








---おい。私の気が変わらないうちに早く答えろ。


あと何考えてるか声に出してんじゃねぇぞ。てめえ。








美しい風貌からは想像もできないドスの効いた声で俺を脅す。








とはいっても質問の意味が分からないし、嘘ついたら殺されそうなので正直に答える。








「その汚物で黄色く染まった白いパンツが俺のパンツです」








こんな惨めな自己申告が存在しただろうか。


女神様に顔を向けながら答える。






女神様は短く舌打ちをして、


マジかよと小さくボヤいた後に


---あなたは正直者です。このすべてのパンツを与えましょう。






と言い、3つのパンツを俺の目の前に浮遊させた。


2つは輝きを放ち、1つは異臭を放っていた。






「クッッッッッッッサ!!!!!!!!」






女神様はうろたえる俺を尻目に








---神はあなたをいつも見ていますよ----------。








そう言い残して泉の奥深くへ消えていった。


そして----------。








白いのは捨てた。












俺は座り込んで考えていた。


女神様から与えてもらったこのパンツ。




金を履くか銀を履くか。


金を履いて銀を売るか。


金を売って銀を履くか。




大変悩ましかった。






軽く考えて、まずは履き心地を確かめることにした。






金のパンツを手に取って履いてみる。






別に特段変わったことは無いようだ。


ただのパンツか???


女神様のパンツがそんなわけあるか????






女神様のパンツという単語に興奮を覚える。






魔剣が反応する。






すると----------。










ビーーーーーーーーー!!!!ズドン!!!!!!!!!










巨大な光柱(ビーム)が森を貫き、その向こう


高さ2700mはあろう山を爆砕した。











しばらく遅れて衝撃波がやってくる。強風とともに鳥たちが飛ばされていった。


辺りの土は火をくすぶらせ、石は液状化していた。


森と山は円状に消し飛び、泉は波を荒立てた。






「ジル!何があった!!!」




「敵!?うちが移動魔法をかけるから早く逃げましょう!!?」






あまりの爆音に仲間たちが驚き目を覚ます。










「・・・すまん。起こしちまったな」








金のパンツをもっこりさせて泣きながら呆然と答える。

女神の名前ちゃんとあるけど、出したら刺されるよねこれ。

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