はじまりのパンツ
今ほかにSF小説を書いているのですが、お酒やたばこをやるほど下劣になってしまいます。
そんな中で生まれたのが本作品です。
つまり余り物です。
ご賞味ください。
泉の女神の話はご存じだろうか。
そう。泉に斧を投げ入れたら女神が出てくるあれである。
女神の問いに正直に答えると、元の斧より大変優れた斧をおまけとしてプレゼントされるという
大変女神が太っ腹な話である。
・・・決して女神がデブということではない。
女性は男性よりも1つ臓器が多いから、その分お腹が膨れているだけでデブではない。
きっと神様は人間より少し大きく見えるだけでデブじゃないんだ。
そう、デブじゃない。
ちょっとだけ、ちょっとふくよかなだけだ。
それか丁度あさごはんを食べた後なだけ---。
---おい。私の気が変わらないうちに早く答えろ。
あと何考えてるか声に出してんじゃねぇぞ。てめえ。
俺は今、正座で女神と対峙している。
全裸で。
~すこし前~
プルタイアの町で朝まで飲んでいた俺たちは、少し山を登ったところにある山荘への帰路についていた。
山荘への道は馬車の通った跡はなく、獣道同然。
枝をかき分け、裸足で小石を踏み抜き、ツタをよじ登っているうちに酔いなんか覚めていた。
何で町の宿じゃないのかって?
町の宿は出禁になった。
記憶にないが、先ほど酒でやらかしたらしい。
聞くところによると、飲みすぎた俺は店のテーブルの上にゲロをぶちまけちまったらしい。
それだけならよかったのだか、仲間のアルフレッドが
「ジル、任せとけ!酒が入ってんなら火ぃつけて焼却処分すんぞ!」
と火炎魔法を店内で放った。
まだまだまだまだこれだけならマシだったらしいんだが、
「うちに任せなさい!」
とメルが後追いでゲロ追加。
しかも何を思ったか、火の精霊を呼び出す魔法陣をゲロで描いた。
ゲロなんかでも火が付けば精霊は呼び出せるらしい。
酸っぱ臭い中で呼び出された精霊は無論大激怒。
店内を燃やし尽くさんばかりに、爆炎魔法を放ってしまった。
まだ、まだ、これだけなら消火の手伝いと俺たちの装備を質屋に入れれば何とかなったかもしれない。
当時の俺たちもそう考えたのだろう。
だからって。
「おい!アルぅ!水の精霊呼び出すから手伝ってくれ!」
「あぁ?酒でやりゃいいんか?ジル様よぉ!おーいねーちゃん!酒もっと持ってきてーー!!」
「バカがよぉ!それだと火にちんぽだろうが!
出すんだよぉ!ちんぽをよぅ!!」
「そっかぁ!!おっしゃ、やってやるぜ!20の頃に50のストリッパーを4人抱いたアルフレッド・ビーナス!!!
その熟女のストリップスキルとくと味わえやコラァ!!!!!」
俺たちは一瞬で服を脱ぎ捨てると、床にホースを向けてちんならぬ陣を描く。
アンモニア臭漂う中で俺たちは低俗極まる魔法陣を限られた残弾の中で描くことに成功した。
爆炎とゲロとションベンの渦のど真ん中で呼び出された水の精霊は、それはもう怒り狂ったらしい。
精霊たちは自分たちを呼び出した媒体で能力を操ることが出来る。
そう。まだメルの母乳で描いたほうが2億倍はマシだった。
少なくとも俺たちは。
~30代の男のションベンの悪臭と切れの悪さをご存じだろうか~
基本肉と酒を嗜み、野菜は取らない。コーヒーばかりを愛飲し、タンパク質が混じっている。
出し切ったと思ってパンツに納刀すると、「あ、ごめんまだ間に合う?」みたいな感じで
飛び込み発射をくらう。
それを媒体とした水の精霊は考えうる限り最大で最悪の量を俺たちに浴びせた。
「おろろろろろろろろろろろろろろ」
「メルっっ!ごぽっ大丈、ぶほぉ!おえ!クッッッッッッッサ!!!おろろろろろろろろろろろろ」
「おろろろろ、おろろろろろろ、おろおろろ」
精霊は容赦なく、店を黄色い貯水樽に変えてしまった。
精霊はマジで俺たちを殺しにかかったらしい。
そのすさまじい水圧でドアと窓が破壊され、俺たちはなんとか尿で溺死するという不名誉を逃れた。
火の精霊は残機が減った。
うん。消火の手伝いはしたっちゃした。けど装備は全焼。もう無理だ。
メルが言うには
半焼し汚物まみれの店を背に、店長は泣きながら請求書に今回起こったことを添えて俺のでこに貼り付けたらしい。
ビショビショのパンツと頭の悪いパーティメンバーを抱えて山道を歩く。
借金はもう4000万Gもあるというのに、また増えた。
メルは奇跡的に装備も無事だったけど、俺とアルはパンツ以外の全てを失った。
パンツがあるだけ助かっているのだろう。
12の村と3つの町、2つの街でお尋ね者なんだから命あるだけ運がいい。
・・・多分朝には町1つ追加されてるだろうけど。
にしても臭い。
前に討伐した1200年も洞窟に引き籠っていた悪魔の臭いよりひどい。
鼻をつまんでも、口で息をする度に鼻に入った僅かな空気で失神しかけるほどだった。
臭すぎるという理由で討伐依頼が出ていたそれを半ば半ギレで倒した時を思い出した。
そういえばメルはその時も火の精霊を呼び出してその骸を燃やしてたっけ。
そしてそれを悪魔が使っていたらしきトイレに捨てて、手柄の証を失くしやがったっけ。
報酬3億Gの大手柄。証拠がないからと言われて渡されたのはたった600G。
本気でメルを殺してやろうかと思ったっけ。
累計で50回ほど抱いたパーティメンバーへの感情を抑えながら山を歩く。
やっぱり少しムカついてきたので腹をつねってやる。
すると
「ううぅぅぅ~」
と文字通りのゲロボをあげる。
一生うなされてろこのダボ。
・・・はぁ、よくこんな状況で眠れるなこいつら。
息を切らしながらしばらく歩くと案内板が見えた。
案内板を中心に道が分かれている。
「←キタナイ山荘 →キレイナ泉」
案内板にはそう書かれいた。
このヘロヘロになった体を休めたいが、それにはまず体を綺麗にしてからだ。
汚物まみれで横になっても不快感が増すだけだ。
湖ですべて洗い流してから山荘に行こう。
そう考えて俺は泉への道に黄色い足跡を付けた。
辺りに光が落ち、鳥たちが1日のはじめを知らせる頃にようやく湖に着いた。
水が照らされて、森の動物たちを呼び込む。
向かいの畔には鹿が2頭、水に口をつけて静寂な水面に波紋を広げている。
木々たちは枝を震わせ、喜びの歌を風と共に奏でている。
そして---------。
吐しゃ物まみれの仲間を洗い流す俺(半裸)。
茶色と黄色が混ざり合って、透明な泉を下水に変えていく。
アクセントがあって素晴らしいと思います。
先にアルを洗い終えてからメルを洗う。
メルは装備が無事だから、全部剥がなければいけない。
30過ぎのおっさん2人のパーティに何故か入った21のピチピチ娘。
メール・ロース。
スリーサイズは88-60-86のグラマラス。(寝てる間にアルとこっそり測った)
金髪碧眼でショートヘアが似合う、元気溌剌ボーイッシュな女の子。
魔法力も俺とアルを足して2倍したもので、かなりのポテンシャル。
無言詠唱スキル持ちで、冒険者にしては珍しい「大回復魔法」を取得している。
作る料理は絶品で、料亭からスカウトを何度か受けているところを見たことがある。
パーティに入った当初は、どうやってアルを出し抜いて口説き落とそうか、
策をめぐらして2徹したくらいおっさんの夢と希望と魅力の詰まった女の子だったのだが。
致命的な頭の悪さと足の臭さ、笑い方と口調の汚さと金遣いの荒さっぷりを知ってから、
こいつをパーティメンバーではなく1つの装備品として扱うようになった。
一時はこいつを最低な人形にするか売り払うかアルと一緒に画策して、
薬を盛ったり、クエスト報酬の受領書と風俗の契約書を混ぜてやったのだが、
生まれ持った妙な勘の鋭さでそれらを回避し続られ、ついには諦めて今の状態に落ち着いた。
だがそんなんでも女の子。
身体は丁重に扱わねば紳士として名が廃れる。
鎧に手をかけるたび白い柔肌が手に触れる。
胸の鎧が外れると、夢の詰まった双球が重力に従って外に垂れる。
汚物まみれであるはずの谷間からどこかフローラルな香りが鼻腔を突く。
濡れた黒いインナーが頂のラインを映し出して周りの空気をエロスにする。
あ、やべ。ちょっと鎮まれ。
長さ16cmの魔剣がパンツを押し出す。
だが--------。
無理だ。夢から目が離せない。
これはメルが悪い。おれはわるくない。
すっげ。でっかい。
そうだ。夢を見たっていいじゃないか。
夢を掴んで何が悪い。
寝てるしバレない。
乙女の純潔をこんな形で奪うというのは、なんかこう心の内側を熱くする。
スゥ-----。興奮してきたな。
ちょっと足の鎧だけじゃまになるからとっとと外しt
「クッッッッッッッッッッッッサ!!!!!!!!!!!」
瘴気に当てられ正気に戻った。
魔剣は魔力を失い、なまくらと化してしまった。
正気になった俺はメルをアルと同じように首根っこ掴んでじゃばじゃばと洗う。
足の臭さも落ちればいいのに。
メス猿を洗い終え、ようやく自分の身体が洗える。
洗ったところは汚いから場所を変える。
仲間から目をそらすようにして泉に目を向けてみる。
「いいところだなここ・・・空気がうまい」
2度深呼吸をしてそう呟く。
そして・・・。
飛び込みたくなった。
全裸で。
「Fooooooooooooooooo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
酔いは覚めてなかったらしい。
パンツを脱ぎ、ガニ股で振り回す。
我慢できなくなって泉へ走り出した。
だが、ゲロまみれの足。
グリップなんてあるはずもなく。
小石の上で宙を舞い、派手に顔から打ち付けた。
フルチンで。
30過ぎたおっさんの、汚物パンツが空高く、弧を描いて・・・。
ボチャンと、泉の中心で音を響かせる。
パンツはそのまま沈んでいった。
俺の全財産が・・・・。
きたない