歯痒い次の段階
(・||チラッ
(世界は破壊と再生で形成されているなどと語られていたがここは破壊のあとは滅びしか道筋がないんだがな…)
アラヤはジェネシス・ベヒモスのコックピット上部の屋根の上で胡座をかいて座り景色を眺めていた。
元の世界では良い眺めの景色であれば胸に来る想いがあったがこの世界ではただの景色でしかなかった。
この世界の景色には生命の息吹きが感じられない。
アラヤ達がいる惑星だけでなくこの世界そのものを維持する活力が感じられないのだ。
それも仕方がない。
この世界での生命の循環が追い付かない。
残存している神々が見放し放棄した箱庭世界。
次々と発生する〘厄災〙。
厄災〘魔王の配下の復活〙達は大陸全土に広がって行った。
例属の装飾具が存在する限り彼らは装飾具の反応を目指しさ迷い続ける。
停める手立てはない。
到来者達にも彼らと交えるなと伝えてある。
理性の箍の外れた獣と化した彼らには到来者達では太刀打ち出来ない。
彼らの気がすむまで見守る他はない。
(フッ私達の力では殺し兼ねない。新たな到達点のわからないゲートを作る気も無いのでな。それにあの子達には血化粧は似合いはしない)
こうしていても大量に生命活動魔素を消費され摩耗していくほかない衰退しつつある惑星。
(この惑星にも今しばらくは持ちこたえてもわらねばならない。底の抜けたバケツみたいなモノだが。思わぬところで帰還用のゲートキーは手に入ったところだが今すぐにでもゲートを開き送り届けたい…しかし必要要素の準備もまだだ。未完成のままの兵装で戦場に立つ気はない。焦る事ではないな。私の時はまだあるのだ。私もまだまだ未熟者だ。解っていながら。なぁアラヤ君?)
フム、とアラヤは焦りをぬぐい去る。
しかし到来者達の存在が更に崩壊の後押ししているのも事実。
この世界の住人約1万人分の生命活動魔素を一人の到来者が消費しているのだ。
『想像してみよう!ツインターボチャージャー搭載MOS全開噴射、更におまけのロケットブースターのスイッチを「ポチっとなぁ~!」とONにしアクセル全開に踏み込んだバケモノF1マシンが子供用のカート専用オーバルコースサーキットに乱入し凄まじいエンジン音と爆音のエキゾーストサウンドをけたたましく響かせ、路面との摩擦で焼き焦げたタイヤの匂いを振り撒き、濛々と後輪から吹き上げた白煙でコースを真っ白に包み、辺り一面にタイヤカスを撒き散らしながら我が物顔でドリフト走行し続けているような光景だ!』
これが〘魔王の配下の復活〙と化した到来者達だ。
…迷惑極まりない。
残り僅かな魔素がガリガリと消費されている状況なのだ。
魔素の供給される量よりも消費される方が多いのだ。
最近では大きな戦場跡地で発生する手の回らないゲートまでもが魔法力や魔素を吸引している。
それを僅かでも軽減しようとアラヤは救えた到来者達に生活の居住はミラージュ・ガード・ドームで移動にはワイルド・ベヒモスを与え活動するようにと促した。
ドーム内とベヒモスコックピット内はそれぞれの生命活動魔素生成循環システムが内蔵されている。
余剰分の魔素と魔法力は大気に放出しているので幾分かは軽減されている。
幾分かだけ。
だからその為にアラヤ達は行き先の解ったゲートから元の世界に帰還出来る者達を優先に帰還させてた。
リンメル草原の土地にはアラヤ特製液体肥料が毎日スプリンクラーから撒かれ畑としての機能を取り戻しつつある。
だがこれだけでは次のフェーズには移行出来ない。
(土地は良いものが健造されつつある。だがまだだ。更にこの土地に亜空間ワープエンジンを積み込み稼働させる燃料がなさすぎるのだ!まだ宇宙には旅立てない。すまない。諸君…)
世界樹さえ植えられればあとはどうにか出来るのだが
今のままの大地では世界樹の素材を分解養分にする微生物の強さが足りていない。
だから安易にも世界樹の素材を肥料にしたモノを撒くわけにもいかないのだ。
それこそ劇薬となり大地を弱らせてしまい兼ねない。
完全に手詰まりだ。
空を見上げ毎日思案するアラヤ。
遥か上空に自身の陽炎が微かに揺らめくのが見える。
(いったい私の陽炎はどれ程の大きさなのだ…どこまで覆いどれ程の能力なのか…何故私の陽炎だけがこれ程巨大なのか…わからない…ノエル達でさえわからない正確な姿…これは本当に私自身の陽炎なのか…?)
アラヤは大きなため息を一つ吐き出し先ほど畑で取れたパセリを一口食べる。
食感とみずみずしさは申し分ない。
だが味と風味がまだまだ薄い。
ファンタジー・ファーマー・ファクトリーで取れるパセリとは程遠い。
(フム、改良の余地有りじゃな)
残り4ヵ所の世界樹の育成も植林する他の土地の目星もついていない。
順調に終了したフェーズ1からフェーズ2に移行出来ずに三ヶ月が過ぎようとしていた。
(*・ω・)ヒョコッ!