予想内の想定外
勇者がこちらを見…
それはいつもの如く城をジェネシス・ベヒモスで耕している時に俺達のスマホにノエルから予想外に届いた緊急メールだった。
『守屋克哉様…懸念していた事がやはり起きてしまいました。ですがその反動で機幻界ルセリアに向かい安全に潜り抜けられるゲートが開いた事は幸いです。彼の遺体がゲートを繋げる依り代になるとは思いもよらない事でしたが…どうかお願いです。彼女達を元の世界に帰還させてあげて下さい。ゲートの最長開通期間はおよそ二十日間です。そちらの整地が終わり次第にと慌ただしくなりますが…宜しくお願いします。今日も素敵な召還でしたよ❤️私の最愛の最強の召喚士アラヤ様へ❤️貴方の豊穣の女神ノエルより❤️』
(フム、やはり言葉を聴かぬ愚か者共が出たか。仕方が無い。この世界の支配者気取りの為政者共は変態と愚か者の比率が多いからな。少々忙しくなるが彼女達が安全に帰還出来るのであればプラスと考えるとしよう。しかし、一体どれだけの命と引き換えになった反動なのやら想像するだけでも恐ろしいな…いや、それは考えまい。終わった事は元に戻りはしないのだ。この国の後の事はリュート君達に任せるとするか。私は私のやるべき事をやるだけだ。ム?いつもの締めくくりと違っている様だ。読み直してみるか。)
俺はもう一度メールを見返すと見逃せない一文を見つけ歓喜に震えながら右腕を振り上げその一文を脳と心に深く刻みつけた。
俺は大きく深呼吸を一度し落ち着きを取り戻すと結論と右の鼻の穴から鮮血を垂らし出しつつジェネシス・ベヒモスが耕す大地を見守った。
質の良い石材が混ざりこれまでの城跡よりも格段に良い畑へと変わって行く。
(ホホウ。これはなかなかの土ではないか。良いぞ良いぞ。)
膝まづき大地の変化を観察していた俺に陽炎を纏ったユージとユカが不安そうな顔をして話し掛けて来る。
「おっさん想像したかねぇけど…反動ってこっちに来たての時にノエルが心配事の一つってメールに書いていたあれの事だよな?あんだけ何度もおっさんが忠告をしたのに無視したのかよ!?信じられねぇ…」
「でもおじさん…還られるあの子達にはなんて説明するの?」
俺は立ち上がり二人の不安を然り気無く和らげる様に言葉を紡ぐ。
鼻血を滴しながら。
ユージとユカは小さな声でやり取りをする。
『おじさん鼻血出てるけどスッゴい優しい顔してるね?ユージ。』
『ああ、おっさんスッゲー鼻血垂れてんなユカ。良いこと言い始めそーだから黙っとこその方が面白そうだし。』
『ウンウン!そーしよユージ!』
「ああ、残念だが…ユージの想像した事で正解だ。ユカ、大丈夫だ。彼女達には詳しくは説明はしない。帰還の方法を探しているとそれとなく話した事がある。だから偶然帰還出来る方法が見つかったと言うつもりだ。詳しく説明を聞けば彼女達は還れる事を躊躇う可能性があるからな。こんなチャンスがそうそう起きることはない。彼女達が帰還出来る事だけを伝えてゲートに送り届けよう。それにあそこにゲートが開いたのなら丁度良く誤魔化せる。あ…ユージ、彼女達を嫁さんに出来なくなったが笑顔で彼女達を送り還そう、本当の家族の元に。」
「まぁ、そーゆー事ならしゃーねな!おっさん賛成するぜ!」
「ウン!アタシも賛成する!」
「話しは聞いた。俺とユリアも賛成だぜアラヤさん!」
「ハイ!アラヤさん私も賛成です!」
ユージとユカ、ケイとユリアも俺に同意してくれたようだ。
このチャンスを逃す手はない。
大きな犠牲の上の事なのだが彼女達には知る必要の無いことだ。
(大事の前の小事と切り捨てよ。アラヤ、我よ。我が彼ら達を無事に帰還させる手段を探し出す事が最も優先される事象。その事をしかと肝に命ぜよ。我よ。)
そう結論付けた。
爪が食い込み血を滴らせるほど強く握り締めた左拳の痛みにも俺は気にも止めずに轟々と力強い大音響を響かせ巨大な数枚の刃で抉り砕き彫り進み痩せた大地を肥沃な大地へと生まれ変えて行くジェネシス・ベヒモスを食い入る様に見守り続けていた。
『アラヤさんよ…その鼻血がなければキマッてたぜ』
『どんなアラヤさんも素敵です♥️』
「ファッ!?ユリア?」
大地を揺るがすジェネシス・ベヒモスの巨大な刃の轟音にケイの声は書き消されていった。
想定外の入院部屋でスマホ禁止でしたがI'll be backしました!
正月明けにもまた病院にリターンしますがスマホ可能の部屋に行けるらしいので不定期にですが更新して行きます!
ナガーイ目で生暖かく見守ってクダサイマセ。