思いの籠められた重い槍
勇者が街に現れた!どうしますか?
せいだいにかんげいする
すこしかんげいする
いちおうかんげいしたふりをする
かみてーぷをなげる
がむてーぷでゆうしゃをまきあげる
とらっくのにだいにのせる
えんじんをかける
ゆうしゃががむてーぷをひきちぎる
ゆうしゃがじゆうになる
ようすをみる←
俺達がユニバース・ベヒモスで帝都ベグラム・ダイムの前に辿り着くと帝都ベグラム・ダイムの関所の大門は大きく開かれていた。
更には大門左右に帝都守備隊が並び一切の兵装も携帯せずに制服姿で整列し敬礼でお出迎えをしてくれていた。
(フム…この手で来たか…さて、ならば私はこの手で行く!)
「それじゃ皆朝の手筈通りに、球コロ奪還作戦を開始する!キリッ」
「ハイよ!おっさん。」
「うん、おじさん任せて!」
「気分で、イエッサー、コマンダーアラヤ!、何てな」
「//ハイ!アラヤさん任せて下さい!♥///」
既にユージ、ユカ、ケイ、ユリアはユニバース・ベヒモスから降りる前ら陽炎を纏い臨戦態勢でこちらは行く。
俺は屈み大地に右掌を付けて土の状態を調べる。
(なっ…なんだと!?改善不能だと…ではこの大地は…死んでいると言うことか…ここまでとはなベヒモス達で耕しても…だが土は土だ。何か出来る事がある筈だ。そう、砂漠を緑化したと話題があったではないか!まだやれる事はある。フフ、初めての事で少々驚きはしたがこの程度ではまだまだ、終わらんよ。では、ワタシが行こう。左右前腰弾倉補充良し!腰部左右帯剣装備良し!背部格納兵装準備良し!背部長剣装備良し!自動防壁展開装置異常無し!更に各召喚機獣隊状態万全!機体状態万全!白兵戦特化型アラヤ出る!)
四人の姿を見た整列している者達にも少なからず動揺が見て取れた。
それもこちらの一手の一つ。
俺のデニムパンツの左右のポケットは向日葵の種でパンパンに膨れ後ろポケットには細目の乾燥トウモロコシが二本づつ無理やり刺さっているので少々歩き辛いが問題は無い。背中には二本の握り安い板を細く鉈で割り切り程よい長刀の様に加工したモノに握りに細い縄で柄巻きをしたモノをベルトに通し両腰にも板を加工したモノを二本づつ縄で結わえ装備している。
(フフ、ワタシは白兵戦も得意なのだよ。)
『我らは豊穣の女神ノエル様の代弁者で有り執行者である。これより帝都ベグラム・ダイムに入都市に進行し神々の祭壇より永きに渡り奪われし宝球を奪還の執行を行う。我らの進行を阻止するものには容赦せぬ!意図せず呪縛に囚われし民達怒りやその心のままに静かに生を営む者達に負の力を振るうこと無く暫し呪縛からの解放を待たれよ。我らこれより進行を開始する!』
帝都大門をくぐると真っ直ぐに綺麗に石畳で舗装された道を目にする。しかし馬車などは無いのか轍の痕跡もない。
帝都と言われる程はある。
整地された大地に家屋が建ち並び重機など無い筈だが五階建ての建物もある。
築年数もそれ程古くはない。
しかし材質に多少の難がある。
石材ではなく砂を固めた物の様だ。
(待て、これは!この世界でのコンクリートなのか!…だがこれでは耐震性に問題が出るかも知れない。フム、どうしたものか…)
「おじさん、どうしたの?心臓苦しい?」
ユカが建物に俺が左手を着けて立っていたことを疲れて休んでいるように見えたらしく心配させてしまった。
「いや、大丈夫だ。ありがとうな。ユカ。」
いつもの様にユカの頭を撫でる。
「エヘヘ」
ユカの顔に笑顔が戻る。
「今日はアラヤさん重装備だしな。少しオレが持とうか?」
「いや、大丈夫だ。それにこれは武器として持って来た。ケイに武器を持たせる訳には行かない。これは俺の仕事だ。」
「アラヤさん…判った荒事はあんたに任せる。」
ケイはユリアを守る様に歩き出す。
「おっさん剣術の経験者だな?それに剣道も。後で少し稽古を着けてくれよな♪」
ユージにこれ以上誤魔化しは出来ない様だ。
「いいぞ。ただ我流も混ざるけどいいか?」
「おう!なんか楽しみが増えてきたな。」
ユージの陽炎の形がますます洗練されて揺らぎをなくせば完全に真紅の和甲冑の若武者だ。
歩き形もまさに武者だ。
ユカの露払いの若武者の様に颯爽と歩いていく。
(フム、馬に乗せるとなかなかの物だろう。いいな。実にいい。)
やはり車などの生産はされていない様だ。
技師などが誘拐されて来ていたとしてもやはり無理だったのだろうか?
ユニバース・ベヒモスを見て整列していた者うち何人かは目を見開いていた。
三十分程歩くと何とも言えない建て増しを繰り返しし過ぎた歪な城?に着いた。
やはり出迎えに左右に整列し敬礼をしている。
(彼等…フム、この世界の者の隷属者達のようだな。瞳に光がない。もうしばらくの辛抱だ待っていろ。)
一人の若い制服の男性が俺達の前に足早に来ると挨拶を始める。
「申し遅れました。本日帝城ローミ・コシワテの案内をさせていただきます、マルガと申します。執行者様宜しくお願い致します。」
「ああ、宜しく。この城は…何とも言えないバランスで増改築された様だな?」
「あぁ、はい…常に帝国は戦時状態なので…その言いにくいのですが…勇者達の中に数年に何人か建築家が来られまして…隷属後に城の改築を任せていたようで…元の城は中央部に一応元のままあるのです。」
「君も解放者か?」
「はい、ですがこの頃無性に何とも言えない怒りの様な感情が噴き出しそうになるので妻とは別居を始めました。」
「まぁ、あんたは完全に隷属から解放されてねぇからだよ。別居生活は今日までだ。今帝都にどのくらい暴れ出した奴らは収監されてんだ?」
ケイがマルガに必要な情報をさりげなく聞く。
「正確には解りませんが主に隷属された住人が多く収監されています。」
「別の世界から来た人達は暴れ始めた人はいませんか?」
翡翠色の重武装騎兵の陽炎を纏ったユリアが心配そうに聞く。
「えっ!女性の方でしたか!装備は重くないですか?」
見た目は重武装の兵士にしか見えないユリアの陽炎。
ほとんど揺らめきがないので完全な武装兵士しか見えない。
ユリアの陽炎に触ると俺のユカはユリアを普通に触れるがケイやユージは陽炎の鎧の堅さを認識出来る様だ。
「はい、大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
「今のところそう言った報告はありません。別の世界からの女性で自由意思のある方と話せて光栄です!」
マルガの顔が紅くなっているがまぁ、いいだろう。
「マルガ君、君はこの世界に来てどのくらい経つ?」
俺はストレートに聞く。
「あ、正確には…六、七年かと思います。」
「マルガ君、少し触るぞ。」
「ハイ!」
俺はそう言うとマルガの身体を軽く触り持ち上げる。
マルガは驚いていたが俺にされるがままだった。
触った感触と持ち上げた重さは青年よりもしっかりとしていた。
帝都の解放者達の食事状態はそう悪くはない様だ。
(フム、なるほど食糧が大量必要なのは彼等の生体維持の為か。色々見えてきたな。…リュート大佐。君は一人ではないな。独立した組織を…流石だな。)
「あの、私は何か異常があるのですか?」
マルガは少し青ざめている。
「いや、この世界に順応している様だがまだ救える。歩きながらだがマルガ君これを食べられるか?」
俺はファクトリーで育てた苺を一粒手渡す。
マルガは両掌で受け取り匂い嗅ぐ。
「何て芳醇な薫りなんだ…妻に…食べさせたいです…」
涙を溢しマルガは俺にそう言う。
「マルガ君それは君が食べろ。まだある。土産にも渡す。」
俺はマルガに食べる事を促す。
彼が食べる事が出来るのなら…
「はい、では失礼して、少し堅いですがなんてみずみずしいんだ!口の中にこの果物の果汁が…旨い…とても美味しいです。」
マルガは苺を食べられた。
(フム、では彼等と面会してあれを還す者を探さねばな。)
「オオー、あんた食えたな!良かったな。おっさんこの人食えたぞ!」
「ああ、これで光りが見えた。さぁこの城の城主達と面会としよか!」
「「「オオー!」」」
俺達の歩く足が軽くなった。
この城の外見はかなり歪だが内側は案外まともな広々とした通路となかなかの装飾された階段だった。
城のあちらこちらにやはり長い牙のライオンのオブジェが飾られている。
(ほほう、城の内部の石材はかなりの強度のようだな。フム…この感触は…成る程気は抜けないな。)
「マルガ君あの動物は存在するのか?オブジェとしてよく色んな国でも見かけるのだか?」
俺はマルガに問う。
「ああ、ファンガレオですか。昔は南の大陸にいたようですが今は見かける事はないそうです。一説にはファンガレオは精霊の一種だったのではと云われていますね。」
マルガは歩きながら丁寧に教えてくれた。
「えっ!いねぇのか…はぁ…」
「まだ諦めない!ユージ!見かけなくなっただけで見えない所にいるかもじゃん!アタシも探す時手伝うから!」
落ち込むユージをユカが励ます。
「ユージ、地球でも絶滅したって云われていたがまだ生きていた動物や植物見付かっている。希望を捨てるな。」
「マジで!待ってろ!牙ライオン!」
俺もユージを励ます。
「フフ、いいですね。こんな感じは。」
「だろう?持ち獲る感情を君達にも取り戻してやるからな。」
「ハイ!」
元の城はの回廊の先に装飾された大きな扉が見えてきた。
「あの扉の先が謁見の間になります。」
………
ケイが小さな声でスキルを展開した様だ。
「アラヤさん。レッドは玉座を中心に左五人と右六人、十一人。
イエローが大半だ、玉座もイエロー…て変だな?皇帝がレッドじゃないぞ?…左右のイエローは隷属された人間達と思っていた方がいいなこいつは…陣形配置だしな。レッドに軍人がいたら厄介だな。」
ケイの警戒反応と戦略シュミレーションゲームの知識が謁見の間は戦場だと伝えて来た。
「確かにこの人員配置は陣形だな。成る程。誘い込まれたか。」
「そんな!私は…丁重におもてなしをして謁見の間に案内をと指令をリザメル皇帝陛下からの勅命としてご案内をさせていただいていたのに…私は執行者様方に敵意は一切ありません!謁見の間の前に整列している者達です!執行者様どうか信じていただけないでしょうか!」
マルガは立て膝で座り俺達に許しを乞うように必死だ。
「マルガ君、立ちなさい。俺達が謁見の間に入ったら出来るだけこの城にいる大勢の人達を脱出させろ。謁見の間の前に整列している者達にも伝えて出来るだけ早く帝都中央広場辺りまで逃がせ。城は潰すかも知れない。まぁ、相手の出方次第だが。先に渡しておく。このパックは持てるか?」
俺はいつもの前準備をマルガにも手伝わせることにした。
お土産に苺のパック詰めを二つ渡す。
「はい!兵装に比べれば軽いです。必ず伝えて出来るだけ多くの人を城から遠ざけます!お任せ下さい!」
マルガの両手は苺のパック二つを持っているので敬礼が出来ない。
代わりに腰から45度程曲げて頭を下げた。
「ああ、宜しく頼む。俺達も出来るだけ穏便にしたいんだけどな。殺らなくてはならない時もあるからな。」
「はっ!戦にならない事を祈っています!」
俺達マルガを先頭に謁見の間に向かう。
ユージの陽炎の揺らめきが無くなり本物の和甲冑の様になる。
ケイの全身を覆う焔の様なモノが俺のよく知るモ○ルファイター
の造形に近いモノになる。ケイの右拳に何かの紋章が浮かんでいるが見なかった事にしたがユリアがケイ聞く。
「ケイ君、顔はロボットにしなくていいの?」
「ああ、こういう形態の時もこのファイターはあるからいいんだ。暴れ始めたら顔もロボ仮面みたいになる。こんな風に。」
「ケイ君凄い!格好いい!」
ケイの姿は映像化する事は出来ない…俺が大好きなモビ○ファイターなのだが完成度が高過ぎるぞケイ…
ボクサーのケイだからアメリカのファイターだと思っていたのにまさかの主人公機の二号機とは…あの今下がっているケイの背中のあの六枚の羽は闘う時には展開するのだろうが…必殺技だけは叫ぶんじゃないぞ…頼むぞケイ…
「凄い…こんなに凄い完成度のオーラスーツを覆う人達を私は見た事がありません…」
マルガは驚き俺の危惧していた案件の糸口を教えてくれた。
「マルガ君、帝国にも纏える人間が何人かはいるんだな?」
俺は声を落としてマルガの耳そばで語りかける。
「は、はい、います!大佐や将軍達にいます。ですので御注意下さい。」
マルガも小さな声で応えてくれた。
「あの扉からが俺達には戦場となる。扉が閉まるのが合図だ。行動を始めてくれ。ここまでの案内をありがとう。マルガ君。下がっていろ。」
俺の中の警戒信号が警報を鳴らし始める。
(総員第一種戦闘警報発令!繰り返す、総員、第一種戦闘警報発令!全ての砲門を開け!アラヤ機出撃体勢で待機せよ!アラヤ機の全ての拘束機構の解除を許可する!アラヤ機全機能解放!三、二、一!アラヤ機全機能解放を確認!)
俺が謁見の間の扉のを開き中に入る右側にケイとユリアが並び左側にユージとユカが並ぶ。
謁見の間の重厚な扉か閉まる。
微かに施錠音が俺の耳に聴こえた。
(やはり誘い込まれたのだな。虎穴に入らずんば虎児を獲ず。その通りだ。あれを還す日が来たぞ。坊や。私が必ず還して殺るからな!)
「フハハハハ、面白いな、そなたらは余に謁見するにオーラスーツで武装してくるとは大したものだ。中央のお前はオーラスーツが纏えぬのか。なんだその貧相な物は児童の遊びの装備か?フハハハハ木材で武装しているつもりか!フハハハハよい余興だ。フハハハハ!頭を垂れよ!余は、皇帝だ!そして名乗る事を許す!さぁ、名乗れ異界の者達。」
豪華な玉座に座るキチンと豪華な衣装を着た三十代前半の男がよく通る高めの声でいい放つ。
(ほほう悪くない。いい声だ。殺すには惜しい。)
「だが断る!」
俺は一言いい放つ。
「何!!恐れおおくも皇帝陛下直々のお言葉を断るとは!ならば名乗れ異界勇者ども!私が!宰相の私が貴様達を…隷属し…お?…ガメル…将…軍グハッいっ…たい…ガメ…ル」
どうやら帝国内部は一枚岩ではないようだ。
宰相は隣に立っていたガメル将軍の素手で後ろから貫かれ息を引き取った。
「ガメル将軍これは?」
皇帝が無表情のまま倒れた宰相を瞳だけ動かし見下しながらガメル将軍に問い掛ける。
「恐れながら陛下、あの者と一度逢い見舞えた事があります。あの者の持つ得物、二振りの剣を私は気に入りました。その剣を我が物するためには隷属されては困るのです。更にお伝え致します。あの者が装備している木材はただの木材ではない様で御座います。あの者が振るえばオミエルコンの剣などでは太刀打ち出来ない物だと推測します。」
ガメル将軍血に塗れた右腕を胸当て腰を少し曲げて頭を下げ皇帝に説明をしている。
「ほほう、あの者の装備がか。あの木材がオミエルコンよりも強い?フムしかしそちの眼力を疑わぬ。そちが気に入るほどの剣か…ならばこの所業余が許す!すまぬなガメル将軍、余もそちの楽しみを奪う処であった許せ。」
「いえ、勿体無き御言葉を有り難く受け取ります。」
皇帝はガメル将軍をあっさりと許した。
余程ガメル将軍を気に入っている様だ。
「な!陛下!メメル宰相殿を殺めた不埒な勇者ごときのガメル将軍を許すのですか!!我が友のメメル宰相殿を殺めた不埒な勇者め!名乗れ!!ガメル将軍!!真の名を名乗れ!!私が貴様を隷属下においてやる!名乗れ!!リュート大佐!貴様達もだ!」
何だか内輪揉めが始まった。
帝国の大臣達が皇帝を横においてガメル将軍や軍服の者達に名前を名乗れと騒ぎ始める。
軍服を着た若い男性が一人だけ皇帝の椅子ほどではないが立派な装飾のされた椅子に脚を組んで座っている。
彼に対しては俺の警戒警報は発令されていない。
彼はむしろ皇帝と同じ様にこの場を楽しんでいる様だ。
皇帝の前で椅子座る事が許される人物。
暫くすると椅子に座っている彼が右腕を真っ直ぐ上に振り上げた。
途端に騒いでいた者達が静かになり彼等が立っていた元の位置に戻る。
「陛下、すみません。独断でスキルを発動させた事を御許し下さい。」
椅子に座ったまま皇帝に頭を下げている。
「よいよい、リュート。余も騒がしく目に余っておったのだ。静まらせようと思っていた処であった。良いタイミングであったぞ。流石リュートだ。フハハハハ。」
「お誉め頂き光栄です。」
どうやら皇帝は軍部の方に肩入れしている様だ。
「アラヤさん、レッドが一人だけ残して居なくなっちまった。」
ケイが小さな声で伝えて来た。
確かに警戒が下がってはいるが皇帝の右側三人目の豪華な衣装の男が俺達を見下す様に睨み続けている。
「ケイ、皇帝の右側三人目の男がレッドか?」
「!?アラヤさんその通りだ。アイツだけレッドだ。気を付けろアイツ隷属の装飾をかなり付けいてる皇帝並みに」
「判った。陽炎の強度を最大値にあげておけ。ユージ達を頼むぞ。」
ケイが頷き元の立ち位置に戻り一言呟く。
「リミッター・ロックオープン・バーストアップ」
するとユージとユカとユリアも続けて呟く。
「「「バーストアップ!」」」
一瞬、謁見の間が揺れるが直ぐに揺れはおさまる。
「ムム!そなたらは代弁者で執行者…なるほどリュートが逢いたいと童子のようにせがむ理由はこれか…なるほど。そなたらに余も許しを乞いたい。すまなかった。女神の使徒である事を余は失念していた。すまなかった。」
皇帝が玉座からおり玉座の階段を降り床に片膝を立て座り俺達に頭を下げている。
「皇帝。名前を教えてくれ。後で話がしたい。」
俺は今の気持ちを素直に話す。
「おお、これは失礼致しました。使徒様、わたくしの名はリザメル・リム…」
「兄上!!勇者ごときに頭を垂れるなど皇帝にあるまじき所業です!玉座に戻るのです兄上!!」
右側三人目の豪華な衣装の男が急に叫び始めた。
「始めから俺が動けばこのような茶番は起きなかった!面妖な勇者どもを取り押さえろ!行け勇者ども!」
「止めよ!!ジケメダ!!カリバナスの時のようにはいかぬ!あの者達はノエル様が遣わした使徒様だ!止めよ!ジケメダ!」
「ハハハハ何が女神の使徒様だ!あれはただの勇者だ。カリバナスの使えないガキや女の勇者達とかわらぬ!勇者ハガメル!私に貴様の力を渡せ!」
「ハイ。ジケメダ様。」
「そうかお前がこの槍の持ち主か?」
ジケメダという何とも言い難い虫の様な名前の男に俺はストレージから古ぼけた槍を取り出し見せる。
「んー?あー、あの槍か?ハハハハ、無駄に多い女の勇者達を間引いて私の指を噛み千切ったくそガキの腹に突き立てたガメルが持って来た無駄に重いあの槍か?私がカリバナスに捨てて来た物だ。くれてやる好きにしろ。」
「そうか。では還すぞ。フン!!」
「バカめ!フィジカルマッスルガード!私にそんな古ぼけ…たグアァー!!」
俺は渾身の力を込めて槍を投げ放った。
ジケメダの左脇腹に狙い通りに突き刺さりそのまま謁見の間の壁に縫い付くように飛んでいった。
爆散して死ぬのかと思ったが到来者のスキルで強くなっていたのだろう。
楽に死ななくて良かった。
「坊や達!約束は守ったぞ!!」
言い難い感情を言葉に乗せて言い放った。
謁見の間に再度振動が起こる。
「そん…な…バカな…今の私に…物…理攻…撃が通る筈が…ググッ!抜けぬ?勇者どもよ…この槍を抜き取り私を…癒せ!!」
ジケメダの言葉に三人の到来者達が反応して壁に縫い付けられたジケメダの腹から槍を抜こうとしているが抜けない。
そして何故か女性の到来者が槍が刺さったままのジケメダに治療魔法をかけた。
「グア!バカ者ー!!槍が刺さったままの私を癒せるものか!槍を抜け!!」
治療魔法で癒しても槍が刺さったままで出血は少し治まるが槍と傷の隙間からじわりじわりと再度出血している。
元気に悪態をつけられるほどに回復している様だ。
楽に簡単には死なせない。
こちらにはユカがいる。
死にかけても元気にしてやる。
「我が槍で…幼子とおなご達を…殺めただと?武器庫から消えた筈の我が槍で…ジケメダ!!貴様ー!!」
鬼の様な形相でジケメダに走りよるガメル将軍。
おやおや、ガメル将軍までお怒りになられたぞ?
凄まじい形相で刺さった槍を捻るガメル将軍。
痛め付け方をよくご存じのようだ。
あれはさて置いて俺は皇帝の前に立ち語りかける。
「リザメル皇帝と呼んで言いか?」
「はっ。如何様にも。」
「勇者選定球はどこだ?」
「はっ、玉座の後ろの幕の裏に安置しております。」
「判った。ユカ、ユリア、ケイの三人で球コロを頼むぞ。」
「おじさん任せて!」
「アラヤさん任せた下さい!」
「アイよ!おっさん任せろ!」
うん、我ながらいいパーティー編成だ。
「ハハハハ!勇者ごときこの程度で名を明かすとは勇者アラヤ貴様の名はこの指輪に刻まれ…ない!!貴様も貴様達!!真名を名乗れ!!」
…この世界のテンプレが久しぶりに展開された。
ならば。
「屁のへの茂辺地だ」
「ハハハハ!勇者へのへのもへじ貴様の…又偽名か!」
「そんなバカな名前の人間がいるか。」
「何をー!くそ!ググッ!又痛みが!!このままでもいい!癒せ!!痛みを消せ!ググッ!ガメル将軍ー!止めろ!くそが!」
ジケメダは相当なバカだ。
槍が抜けないならば自分を引っ張って貰い貫通すれば抜けるが。
まぁ、槍に少し細工はしている。
槍に召還魔法をかけてある。
槍が貫いたモノに永続的に召還されるように。
俺が解除するまで永続的だ。
誰にも抜けない呪いの槍の完成だ。
輸血を続けたとしても内臓は損傷している。
大腸や腎臓から膀胱に繋がる管も。
「ジケメダ、意識を保ったまま死ね。」
思わず言葉が出てしまった。
「バカな…ググッ!抜けぬ!ググッ!はぁ、はぁググッ!癒せ!!この役立たずの勇者め!ガメル将軍ー!捻るな!グア!」
悪態をつけられた女性の到来者が治療魔法をかけ続ける。
「くそ!ハガメル!ヒスクレム!アルビタ!奴らを殺せ!」
「止めよ!ジケメダ!!ならぬ!ジケメダ!!」
兄の言う事を聞かないバカな弟。
向かって来る三人の到来者達改造されたオミエルコンの剣で斬りかかって来た。
「使徒様ー!」
皇帝が俺を心配して叫んでいる。
やはり到来者であっても隷属されているとただ繰り返し齧った程度動きしか出来ない様だ。
ならば俺の敵ではない。
「ふん!ふん!ふん!…少し寝ていてくれ。」
俺は左肩から長木剣を抜き三人の腹を手加減して一閃づつ叩き込み気絶させた。
彼等ならば死ぬ事はないだろう。
「バカな…ググッ!ガメルに続く猛者の勇者どもがグア!バカな!貴様の能力か!いきなり倒れ伏すなどあるか!!」
…どうやら壁に縫い付けられたままで何が起きたのかが見えなかった様だ。
「アラヤさん抜刀凄え速いのな…最後に倒れた奴の一閃しか見えなかったわ…」
「そうか?親父や弟の方がもっと速かったぞ。俺よりな」
「すまねえ。余計な事を言ったみたいだな。すまねえ。アラヤさん。」
「いや、少し…思い出せて良かった。ケイ。ありがとう。」
俺は親父と友明が木剣で立ち会い試合をしていた事を思い出せ嬉しかった。
(アラヤ!!これは!大丈夫だ。落ち着け。アラヤ。奴は正真正銘アラヤだ。…任せたぞ。アラヤ。)
「なぁアラヤさんよ、まだか?球コロは」
「んー?まぁ、もう少しかかるかもな…もう少ししたら俺達も手伝いに行くか?あ、そうだ。ケイ、ドームの中でファクトリーの畑でもいじってろ、俺は少し話をしてくる。」
「そだな。畑の改良今日はまだだったわ。ミラージュ・ガード・ドーム・オープン。」
ケイはドームを展開すると胡座で座るとスマホの画面に夢中になりそのまま動かなくなった。
俺からはドームの中のケイの姿は丸見えなのはケイには内緒だ。
「兄上!勇者を御貸し下さい!奴を殺させて下さい!グア!止めろ!ガメル!槍を捻るな!グア!」
「我が槍で女子供を殺した者を許せるものか!癒えても傷口を広げてくれるわ!」
「誰かこやつのジケメダの口に蓋をしろ。こやつの声はもう聞き飽きた。余の言葉を聞かぬ弟など要らぬ。まだ死なせるでないぞ。使徒様の許しが出ておらぬのでな。延命だけ続けよ。」
ジケメダの側で様子を見ていた皇帝がため息をついて命令するとジケメダの顎を押さえ付け口に板の様な物を添えると板がジケメダの顔に歪なマスクのようには張り付いた。
「ふむ、静かになった。使徒様お話し相手は余、いえ私で良いでしょうか?」
「リュート大佐もいいかな?彼にも聞きたい事があるんだ。」
「はっ、仰せのままに。」
俺と皇帝はリュート大佐に向かい歩いて行く
「もしかして彼は歩けないのか?」
「いえ、そうではありませんが長時間立つ事が苦痛のようでして椅子を与えています。」
「そこまで順応していたのか…リュート君辛くはないか?」
「いえいえ、大丈夫です。僕がここに来て色々なことに気付いたのが十代半ば位だったので、今はまぁこんな感じに楽をさせて貰ってます。」
「そうか…ミラージュ・ガード・ドーム・オープン。これで外には会話が漏れない。今食べている物はどんな物を?」
「凄いな!貴方はアイテムマスターだったのか。ああすみません、食糧の話でしたね。肉ならば大量に重ねてプレスを繰り返しそれを大量の調味料を使用してますね。僕らが味を感じるまで漬け込んだ物が主にです。」
「なるほど…そんな物をよく思い付けたな…」
「僕が思い付いた訳ではないです。僕が来る前に基礎レシピ集を遺してくれて…それを元に改良をしていきました。この国は食糧不足だったので戦争を利用しました。多くの人達の命を踏み台にして僕は生きています。」
リュート大佐は膝の上置いた両拳を強く握り俯いた。
この死んだ大地では食糧となる物が育たない。
食糧を大量に輸入する為には対外的な理由が必要となる。
見せ掛けの戦争。
と言う事は。
「相手国も同じ様に芝居戦争を合わせてやっているのか。」
「流石ですね。その通りです。相手国もたくさん召還し過ぎ国内で食糧が足りないんです。」
「よくそんな方法を思い付けたな。君達は」
「何て言うのか…向こうの国に召還されたのが僕の幼友達だったんです。夢中になっていたゲームのユニットの動かし型と彼の独特なユニット配置でお互いがいることに気付いたんです。」
リュート大佐が涙を流しながら話し始めた。
…言い訳はしませんよ?
書いてたら分けて書くのを忘れただけですから!
作者が開き直った!どうします?
取り敢えず正座をさせる
目を見つめる
マスクを渡す
鍬を持たせる
裏庭に連れていく
耕かせる
様子を見る←