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球と戯れる女子高生

さぁ!チュートリアル終盤に差し掛かりました!

ユカの選定前に少し球ころの調整をしたいとの事でメイガン達は城の中に戻って行った。待たされている間俺は国王とこの国のチェスと将棋を混ぜ合わせた様な駒遊びをして色々と意見の交換やノエルからの神託を少し織り交ぜ情報のやり取りをお互いに楽しみながらしていた。


「まぁ、そう言う事だな。」


「うむ、確かに皆に伝えよう。」


「ほい、王様。これで詰みだ。」


「ああ!しまった!参った。負けてしまった。」


俺の勝ちで勝負が着くと召し使いの様な男性が国王の耳元に囁いて伝言を伝えている。


「ムム、もうそのような時刻か。ふむ、なかなか良い勝負であった。勇者殿。では、大臣達と話を詰めて来るので暫し待っていてくれ。出来れば昼食も共にしたいのでな。」


「ああ、判った。」


「致し方無いがそれでは参るとしよう。」


俺との駒遊びが終わると国王は呼ばれてしぶしぶ城の中に帰って行った。


メイガン達が戻り球ころの方を見るとユカの球ころのスキルチェックが始まろうとしている。


どうしたのでしょう?ユカさんは球ころを右手の人差し指でツンツンと突付いています。

すると球ころに変化が起きています。

ユカの指先が触れる度に微かですが明滅反応が起こります。

これは見極めなければ行けません!

ススーと指先で球ころの表面を滑る様にユカは撫でていく。

球ころは喜ぶ様に明滅をする。


そう大人として男としてではなく大人として!

そう大人としての務め…否。球ころの次なる主としての務めだ!


ユカが指先で球ころを弄ぶだと!ユカーまだそれは早いー!ノエルの仕事だー!と飛び出そうとしていたらユカが球ころを両手で抱き締めた。


「ユカー!まだそれ以上はアカーン!」


何故か関西弁になり俺はたまらずユカ止めようと声を出した瞬間に俺の手足が封じ込められた。

ヌウ!なんのこれしきと振り払おうと思い身体を見るとユージ、ユリア、ケイが俺に纏わりついていた!


「なっ!どうしたんだ!何故、俺を止める!離せ!離せよー!ユカが。ユカー!」


動揺している俺を皆が笑いながら俺の手足に一人つづしがみついている。

ふと、

(何か昔、こんなロボアニメがあった様な)

と頭の中を古い記憶の断片が通り過ぎて行った。


「おっさん!落ち着け!教えてやるから落ち着けって」


俺の右手腕となったユージが叫ぶ。

その時、俺は新たなスキルを覚えた。

とたんに発動し勝手に口が喋り出す。

「五人合身!」

そして何処から途もなく機械音声も聞こえて来る。


『ガシャーン。ジュビーン!アラヤはユージと合体!ユージアームを手に入れた。右腕が重くなった!スキル、ユージソードが装備に加わった。』

「はぁっ?」

ユージが疑問の声をあげる。


『ガシャーン。ジュビーン!アラヤはケイと合体!ケイアームを手に入れた。左腕が重くなった!スキル、ケイスマッシュパンチが使える様になった。』

「嘘だろ!」

ケイが驚いている。


『ガシャーン。ジュビーン!アラヤとユリアとがっ…「チョトマテその表現は不味いだろ!」ユリアフットを手に入れた。右足が重くなった!「少しだけだ!」スキル、ユリアイージスバリアが展開出来る様になった。』

「本当に?アラヤさん?」


ユリアが心配そうな声で聞いてきたので


「ああ。大丈夫だ。少しも重く無いぞ。キリッ」


俺は低音の声でにこやかな笑顔を浮かべてユリアに優しく言う。

笑顔のユリアが頷く。


『ブブー! 警告!警告!パワードパーツが足りません。パワードパーツが足りません!それぞれのパワードパーツのフルパワーをこのままでは引き出せません!』

機械音声が警告してきた。


「ヌウ!足りない…やっぱり…足りない…左足が…足りない…これでは完全合身体になれない!ユージアーム!あっ、そうだ。ユカの事をさっき言いかけたの教えて?」


「なぁ…おっさん…俺が言うのもあれだけだど、急に素戻って聞くの止めてくれ…てか、どうなってんだ!離れられねぇー!こんな状態を人に見られたらハズィンだけど。まぁいいや。あのな、ユカは丸い物が好きなんだよ。猫とかゲームに出て来る青い奴とか…そうしたら球ころがほら青白くて大きな丸いジャン?だから少しだけだから。な?おっさん。少しだけ堪能させてやってくれよ」


なんだと…球ころがユカのどストライクだったとは…

ユカを見ると嬉しいそうに球ころを抱き締めたり撫で撫でしたり何か小さな声で語りかけていた。まるで畑○○さんのようだ…


ふっ、俺も甘いな球ころと戯れているだけじゃないか。


…ン?ちょっと待て!今あんなことしていたら…!球ころがっ!!球ころが滅茶苦茶速く明滅して輝いている!

3分間だけの巨人の胸の色時計の様に!!音は鳴っていないが!


風前之灯(ふうぜんのともしび)~』


何処から不吉な婆さんの声が聞こえた気がした…


「ユカーっ!球ころから離れろーっ!球ころーっ!皆!目を瞑れー!」


俺は急いで大股で歩いてユカを止めようとユカに向かっていた。


ユカは嬉しそうに頬擦りしていて俺の声が伝わっていない!!

俺が声をかけた瞬間、球ころの輝きが激しくスパークした…

昼過ぎなのに辺りが一瞬で白くなり見えなくなった。


これはきっとこの城の何処かで男の子と女の子が手を繋ぎ唱えた呪文だ!…んな訳ないか。


俺はユージアームとケイアームで肘が曲げられずまともにスパークを見てしまった。


暫く目を開けているのか閉じているのかわからなくなった。

だんだんと視界が戻って来るとか細い声が聞こえて来た…

俺は四人合身状態で声の聞こえて来た方向に歩いて行く。


「ユージ、目はどうだ?」


「おっさん悪ィまともに見てまだ目見えねぇ。」


「判った。ケイ、目はどうだ?」


「悪い俺も左に同じだ。」


「判った。ユリア、目はどうだ?」


「アラヤさん私も右足に同じです。」


「「「ブハッ」」」

ユリアの返事が男三人の壺に入り吹き出した。


「判った!このまま行くぞ。もうすぐだユカー!待ってろー!」


「うん…おじさん…球ころが~球ころが~…」


もうユカのそばに来ているはずだ。

ぼんやり見えて来た。

金ぴかのカートだ。

白いブラウスとスカートのグレーと茶色い頭。うんユカだ。


「待たせたな。」


俺は声を低くして片膝を立てて座ろうとしたが…

出来ない。ユリアフットが挟まってしまう。

四人合身状態だもの。

腕も持ち上がらない。ケイアームとユージアームが重すぎる。

仕方ない…


「くっドッキングパージ!」


そう俺が叫ぶとユージとケイとユリアが俺から離れた。

「「「クスクス」」」

と笑い声が聞こえる。こいつら…さては。


「おっさんマジでパネェ!なんだよ今のスキル。クッハッハッハッハ!」


「あんたすげぇな!体がマジで離れなくて焦ったわ。あっはっはっはっは!」


「アラヤさんごめんなさい!でも凄く楽しかったです。ウフフフフフフフ」


「なんだよ…皆見えていたのか?俺だけか見えなくなっていたのは」


「目が!目が~!」


メイガンの情けない声が離れた所から聞こえて来るが放っておく。

男にかける情などない。


「ユカ、目は大丈夫か?ゼロポイントにいたから直接スパークを見たんじゃないのか?」


「ううん丁度目を閉じて頬擦りしてたから大丈夫かな?もう見えてるよ?」


ユカの言葉に心から安堵した。


「ユカ、スキルは何が出ていた?」


「えーと…見なかった…てへっ」


ユカがぺ○ちゃん顔をして誤魔化した。

可愛かったが俺は無表情でとりあえずユカのこめかみに両拳を当ててグリグリしておいた。


「痛たたたたた!ごめんなさい。本当にごめんなさい痛たたたたた!」


とりあえず五人集まったので何時もやつを!


「召喚ミラージュ・ガード・ドーム。で、球ころはどうだ?」


ミラージュ・ガード・ドームの中に球ころも取り込んで反応を見ていた。


ペタペタ触っても両手で触れて見ても全く反応がない。


はんのうがない。ただのデカイすいしょうのようだ。


「完全に逝ったみたいだな…球ころよ…永久に眠れ…さぁ共に行こう星の海へ…」


そう言って球ころに左手を置いて持ち出す事を考えていたら


「おいおい、おっさん、おっさん…球ころとは、出会ってまだ三時間位しか経ってねぇって。あっはっはっはっは。」

ユージは腹を抱えて笑っていた。


「教えて教えて星の海ってどこ、どこ、おじさんプフフフフ」

ユカは俺の顔を下から覗き込んで口に両掌を当てて吹き出している。


俺は無言で右手を上にあげ人差し指を空に向ける。


宇宙(そら)の事だ。…くっ、これが有名なジェネレーションギャップか…あ~でも多分ここの夜空は…星がよく見えるのかも知れないな…」


「アラヤさんそんなに空気の差で星が見えやすいんですか?」


「いや、ユリア、空気だけじゃ無いんだ。街の明かりの明るさで星が見えなくなるんだ。ここは城塞都市だろう?」


「「「「ウンウン」」」」


「魔法国家の夜はどうなのか知らないけど日本みたいにネオンがギラギラしてなかったら沢山の星が見えるだろうな。」


「あんた星が好きなのか?」


「うーん、子供の頃のアニメはほとんど宇宙物だったからかな?刷り込みみたいな物かもな。」


「あー小さい時の体験が大人になると出て来るって奴?おじさん何か以外とロマンチスト?」


「ドーダローナー…」


「おっさん…照れてんの照れてんの?」


「この、こら~ユージこら~」


ユージを捕まえてこめかみグリグリをしてやる。

勿論ユカの倍程の力で男にかける容赦はない。


「イテテテテテテマジでごめんマジでごめんイテテテテテテおっさんマジでごめんイテテテテテテ」


ユージをグリグリしていると腹が減っている事に気が付いた。


「なぁ皆腹へった?」


「「「「腹へった!!」」」」


「よし、まずは球ころ攻略は成功したから次は奪取作戦だけどその前にメイガンを捕まえて旨い飯でもを食わせて貰おう。異存は?」


「「「「無し!!」」」」





俺達はミラージュ・ガード・ドームから出てメイガンを探す。


「「「「「おーい、メーイガーン、メーイガーン!」」」」」


「勇者様ー!目をやられました!敵襲です!」


メイガンはどこも怪我はしていない様だ。


「大丈夫だ。敵襲じゃない。球ころ…いや能力選定球に選定負荷がかかり過ぎてスパークを起こしたんだ。一応運んでは来たけど反応が全くない。」


メイガンは、顔面蒼白になりオロオロと狼狽え始めた。


「…私が…私がいけないのです…興味本位で勇者様方の魔法力も測定しようと能力選定球の感度を上げた事が原因だと思われます。」


言われて見れば確かにユカが指先で突付いても反応していた。


「あーそれでユカが触れていたときにスパークを起こしたのか。ユカのスキルを確認して貰おうとメイガンを探しに行こうとして俺もスパークをまともに視たから目が暫く見えなくなったよ。まぁメイガンも無事で良かった。」


さらりとメイガンに貸しを付けておく。

また、メイガンが片膝を立てて座り頭を下げている。


「本当に申し訳ありません…勇者能力選定球をご厚意で計測させて頂いていたのですが本当に申し訳ありません。反応が全くないあの状態では…」


「フム…計測結果は見れないしユカと残り二人のスキルも確認出来ないと言うわけか?」


(色々遊ぼうと考えていたのに遊べなくなったな)

と思っていて何となく右足で軽くトントンと床にしているとメイガンが小刻みに震え出した。

どうやら俺達がまた怒り始めたと思っている様だ。

召喚(しょうかん)()の時と違い今はメイガン一人。

恐怖に震えるのも当たり前だ。


「…フム…」


俺はトントンするのを止めて右脚に少しずつ力をかけて行く。ミシミシと足元から音が聞こえて来たので力を抜く。


「おじさん!メイガンを許してやってよー!ちょっとだけ好奇心が出ちゃっただけなんだから!ね、ね?」


いいタイミングでユカがメイガンに救いの手を差し伸べる。

ならば俺は悪役(ヒール)となろう!!

ユカにウィンクをしてニヤリと笑う。

ユカも俺の出方に気付いた様にニヤリと笑う。

ユージとケイとユリアもニヤリと笑う。

メイガンの見えない位置で悪魔の微笑みが五つあった。



「ユカ俺はまぁ良いんだ。だけどユリアも厚意で選定を受けたんだ。その後でこそこそと細工をやる様な奴らとは俺は一緒に居たくはない。それに俺はまだ召喚の事も許した訳じゃない。メイガン。俺は世界樹の為に還りたいと言ったのは覚えているか?」


メイガンは震えながらコクコクと頷く。


「もしかすると世界樹はなんとかなるかも知れないが俺は還りたい理由がもう一つ出来たんだ。顔を上げろ。メイガンなんだか解るか?」


俺はメイガンの鼻が触れる寸前まで顔を近付けた。無表情で。


メイガンの歯がカチカチと鳴っている。

メイガンは答えにも迷っているようだ。

少しばかりイラついて来た。

すると召喚をされた部屋よりも大気が震えている事に気付いた。

少し離れた森から鳥が一斉に飛び去って行った。


「落ち着けって!おっさんの怒りもわかるでもおっさん少し落ち着こうぜ…俺…マジでおっさん怖えと思った。アン時の俺もこんな感じだったのか?ユカ。」


「うん。でもあの時のおじさんの方が怖かったよ。」


ユカは今はそうでもないと言っている様だ。

ウム、だって演技だもの。


「アラヤさん落ち着きましょう。深呼吸です。すーはー。すーはー。」


「そうそう、あんた腹減ってるって言ってたよな?飯食おうぜ。ここは王都なんだろう?メイガンうまい飯食わせてくれよ。この人を俺達に任せて飯屋に案内してくれりゃいいからよ。な?いいよな?ほらあんたもそんな事してないで立てよ。」


ユリアとケイがまたも絶妙なコンビネーションを見せる…

この二人を夜は二人きりにさせてあげねばなるまい。


ケイに促される様に俺は立ち上がる。


「メイガン。俺がどうしても還りたい理由はこの四人の為にだ。俺はどうなってもいい。せめてもこの四人だけでも無事に日本に還して上げたいとこの短時間で思い直せたんだ。赤の他人のメイガンを四人が助けたんだ。この四人に感謝しろ…ふん!!」


俺は魔法力を軽く込めた鳥脅しを召喚して空に向けて立ち上げ爆発させた。

尺玉花火みたいな良い爆発音が響き渡る。


「「「「たまや~」」」」


四人がハモった。





異変に気付いた魔法使い達が六人程出て来た。


「何事ですか!!敵襲ですか!」


「いや、違う。俺の単なる憂晴らしだ。心配ない。メイガンが腰を抜かしたみたいなんだ。あと勇者能力選定球が使い物にならなくなった。いらないのなら俺達で引き取ってもいいぞ。もうただのデカイ水晶玉で邪魔になるならな。この街での最高級のウマイ飯を食わせる店に案内してくれ。勿論、俺達への賠償金から引いといてくれ。」


俺は少し早口でまくし立て相手からの有無を言わせない様に仕向けた。


「はい…そうですか。解りました。すぐに店の手配を行います。賠償金についても国王陛下と大臣が話しを進めておられます。勇者様方の勇者能力選定球の処分については国王陛下に速やかにお伺いを立てて参ります。メイガン様をお連れしろ。治癒魔法師団にも連絡を直ちに行え!」


「「「「「はっ!」」」」


「ああ、あと手配が終わるまでここにいる。呼びに来てくれ。」


魔法使い達がいなくなるまで俺はしかめっ面をしていた。

ケイとユージが何処からかベンチを運んで来た。

中々座り心地の良いベンチだ。

ここを離れる時に国王に言って貰って行くとするか。

ベンチごとミラージュ・ガード・ドームの中に入れて喋っていた。


「このベンチいいな。でもよーさっきの芝居だってわかっちゃいたけどさ、にらめっこはやり過ぎだよ…俺あんたがメイガン捻り潰すかもって冷や汗出たわ。もうあそこまですんなよ?」


さっきの芝居があまりに迫真過ぎだとケイに怒られた。

ケイもベンチはお気に入りの様だ。貰って行こう。


「いやぁメイガンの顔を間近で見ていたらフラストレーションが溜まって…つい」


「ギャハハハハハハおっさんがあんな事するからギャハハハハハハおっさんメイガンとキスすんのかと思った。」


「森から鳥がバァて飛んだ時、鬼ヤバ面白かった。あれアタシも出来るかな?」


ユージとユカには受けた。だからよし。


「あ~あれ簡単だぞ。魔法力を軽く込めるだけ。ほらユカ、球ころを撫で捲ってた時みたいにやればいいぞ。」


「えっ!アタシも出来る?」


「ウンウン、球ころの時出来ていたよ?ユカちゃん球ころピカピカしてたよ。」


フム、ユリアはユカと喋っているときは敬語じゃないんだな。

フムフム。


「なぁ、球ころって貰えんのかな?」


ケイが球ころに食いついきた。


「どうだろうな?今の所は五分五分位で貰えるかもしれないなぁ。」


「五分五分か~球ころが無いと皆と離れたらスマホ使えないんだっけ?」


「遠くに離れると通話出来ないらしい。球ころを高い所に置けば良いらしい。この星がどの位の大きさとか山の高い所は何処なのかとか調べないと適当な山に置くわけにいかない。地下だとどうなんだろうな?この城の材質のせいなのかは解らないけどこの城の中にはノエルの加護が通っていなかったみたいだしなぁ。それとも…球ころの中に問題があったのかだな。」


「球ころの中って魔法力とか?」


「おお!その通りなのかも知れないぞ!ユカお手柄だ!ノエルも選定に使えなくなった球ころをってメールに書いてあるんだ。」


「おっさんマジで?」


「ああ、だから球ころをオーバーフローさせて壊した訳だしな。折角のチュートリアルクリアトロフィーにして世界樹に飾ろうと思っていたんだけど貰えないかな…」


「アラヤさん今さらっと世界樹に飾るて言いました?」


「?ウンウンユリア言ったよ?何で?」


「おじさん!ねぇって今凄い事言ったんだよ?気付いてる?」


「ン?ユカ解んない」


「あちゃーおっさん…そう言う所がおっさんのポンコツポイントだったのか。」


「ン?ン?ン?」


「なぁ、あんた、いや、俺もアラヤさんて呼ぶわ。世界樹に球ころ置くってアラヤさんは決めていたんだよな。何で?」


「ああ、それは世界樹ならどんどん成長するから高い位置に設置するには持って来いだと思ってな。でも世界樹を植えるのには広い土地が必要だけどまだ土地が無いからなぁ。」


「アラヤさん今世界樹どのくらい成長してんの?」

「チョトマテよ…ほい。」

「すげぇ動画で見たままだ。世界樹ジャン」

「凄いおじさん世界樹の葉の収穫の時は見せて!」

「勿論♪皆で葉は収穫する?交代でポチポチと」

「うわ~大きい!まだ成長するんですか?凄い!」

「おいおいデケェなぁアラヤさん畑の広さは?面積足りるのかこれ」

「一応世界樹の植えているこの畑の面積は最大値まで広げてる。それが世界樹を植える為のポイントだから。」

「マジか。なら俺も苗木があれば植えれるのか?」

「畑状態が最良状態じゃないと駄目だからな」

「アウトだわ。俺の畑、良状態だ。」

「良からだと迷うんだよな。水か肥料か~」

「「「「判る判る」」」」

「今俺もそこなんだよ。畑を最大値まで広げてるとバランスが難しくなってさ。」

「判る水も肥料も目盛り二~三違うだけで普通になるんだよな」

「アタシ最大値まで上げてなくて良かった~」

「大きな菜園じゃなければ収穫も安定してLVあげやすいからな~マジで畑の面積最大値はギャンブルだよな…」

「確かに。でも稲刈りが超楽しいよな!コンバイン全機並べて刈り取るとめちゃくちゃ楽しいんだよな!」

「ぶっ!あれな、アラヤさん判ってるね~流石だわ。爽快感がすげえの。でさ、世界樹植えたあともずっと最良状態維持なん?」

「いや良でも普通でも良いみたい。たまたま最良状態なだけ」

「「「「あー気まぐれ最良状態か~」」」」

「そうそう」


話しが盛り上がって来た所でミラージュ・ガード・ドームにノック音が聞こえて来た。


「皆、スマホを仕舞え。解除するぞ?」

「「「「OK」」」」





外にいたのはさっきの魔法使いだった。


「御待たせ致しました。ご案内致します。私はビゲル・アルデメルトと申します。ビゲルとお呼び下さい。お名前を教えて頂けますか?」


「よろしくビゲル。悪いな俺達の世界じゃあ親しくならないと名前を教えない風習があるんだ。ああ、それに名前で呼び会う事も少ないしな。メイガンから聞いてないか?」


「申し訳ありません、聞いておりませんでした。ではお呼びの際は?」


気に入らないな…目付きも良くない。俺達を明らかに見下している。こいつは丁寧な物腰だが全くメイガンからの情報を聞いていない?俺達の事を知らずに来た?

いや。違う。

メイガンでもミラージュガードドームをノックをしない。

俺達が出て来るまで中を見ようとはしていたが近付かなかった。

こいつの狙いが何だか直ぐに理解出来た。

こいつの身なりで。

ノエルのメールに書いてあった勇者を使い捨てにしていた奴らと同じ様な態度だ。

なんとか名前を聞き出そうとしているのが感じ取れた。


「勇者様と呼んでくれ。複数の時は勇者様方でいい。」


俺は言葉一度切るとトーンの低い声に変えて少しゆっくりとした口調で話しを続けた。


「俺達はかなり色々感度(ノエルの加護)が高いからな。

感情の沸点が低いぞ(怒りやすい)

特に俺は。

物腰を低く見せても態度に出ているようだな?

ビゲル。

意味が判るか?

あそこは謁見の間か?

それとも召喚の儀式の間か?

俺達の残した破壊の痕跡が残っていたと思うけどな?」



ゴクリとビゲルが唾飲み込む。

自分が竜の目の前にいることに気が付いた様だ。

ようやく緊張感が出たみたいだ。

すると小刻みに建物が震え始めた。


「ビゲルよぉ…てめぇ、俺達を舐めてんだろ。てめぇの喋り方がメイガンに会った時と同じなんだよ。何、名前を聞き出そうとしてんだ?あ?」


ユージの沸点は俺の次に低い。すでにユージの右手はポケットの中。ピロピロリーン、ユージはナイフ(勇者の剣)装備した。


「…おじさんどうする?こいつの用意した店の料理、なんか鬼胡散臭い気がするんだけど。」


ユカの沸点まで下げるとは…こいつはメイガン以下だな。ユカはメイガンを芝居にしても庇う位の優しさがあったが…

賠償金も必要ないか。

球ころだけでも貰って行くか。アバヨ~とっつぁ~んて。

食料の確保は出来ている。

潮時だな。

城から空中庭園ににこやかな笑顔の国王を先頭にゾロゾロと人が歩いて来ていた。

食べ物用のカートなども押して来ていた。国王が約束の昼飯を用意してくれていたのだと思った。


「アラヤさん。球ころ持って来たんだけど、どうするよ?」

ケイが話しかけて来た時にビゲルが動いた。


「馬鹿め!愚か者が!召喚されし勇者アラヤ!ビゲル・アルデメルト我に従え!!貴様の名はこの隷属の指輪に刻み込まれた!さぁ私の命令に従い他の勇者共を取り押さえろ!!」


ビゲルが指輪を嵌めた右手の人差し指を俺に向けアホ面で立って叫んだ。


「馬鹿はお前だ。ビゲル。お前の後ろを見てみろ。皆、ここを、城を潰すぞ。皆我慢はもういい。王様!賠償金代りだ!この城を破壊して俺達は出て行く!!止めるならこの都市いやこの国ごと滅ぼす!!」


「な!何!何故だ!隷属の指輪に反応しない!私に従え!!勇者アラヤ!!」


隷属の指輪か道理で嫌な雰囲気出してたもんな。

そんな物で従わせていたのか。


「馬鹿はお前だ。ビゲル。もう終わりだ。お前が全てをぶち壊した。俺達とのこの国の友好も何もかもな!だいたい隷属して従わせるのは奴隷だ!勇者じゃない。勇者は従う者じゃない!勇ましく勇敢な者の事を勇者と言うんだ。魔王にさえ立ち向かう。何者にも縛らない。縛れない!俺達の世界じゃ常識だ。そんな物に従う者は勇者じゃない!!拐われてきた可哀想な一般人だ!お前達はただの誘拐犯だ!!犯罪者だ!!それを理解しろ!!」


俺の言葉のあと一度激しく大きく揺れ召喚の部屋の時よりも激しく城だけではなく城塞都市その物が震動している。

食事の乗った台車が横にひっくり返って悲鳴があがる。

このままでも城は崩れそうだ。


ユージ、ユカ、ケイ、ユリアの身体から陽炎が出ている。


ユージはナイフを展開して下に向けているがナイフから幅20cm長さ2m程の陽炎が伸びて切先が床に突き刺さっている。体に日本の鎧の様な陽炎を纏っている。


ケイはファイティングポーズでステップをして身体を動かしている。両手の拳が真っ赤に燃える様に光り輝いていた。


ユリアの陽炎は全身に鎧の様な形で揺らめき左腕に大きな盾の陽炎が揺らめき右手に剣の様な形の陽炎が揺らめき握られていた。


ユカの陽炎は背中から二対四枚の翼の様な陽炎で右手に2m近くの杖の様な形をしていた。


ユージとケイはユカとユリアの前に守る様に立っている。

皆の目がいつでも行けると言っている。

誰ももうここに留まると言わないだろう。


国王が人を沢山連れて俺達に笑顔で手を振っていた所に馬鹿ビゲルの浅はかな行動。

メイガンは途中で指輪をはずしていたし国王も球ころを持って来ていた魔法使い達も指輪もブレスレットも着けていなかった。

今も国王は身に付けていない。

こいつの指輪や装飾品の多さが無駄に目立っていた。


国王が笑顔の消え真っ青な顔で這う様に俺の前に来て片膝を立てて座ると頭を下げた。

後ろにいた人達全員もその場で同じ姿勢で座って頭を下げている。

それを見たビゲルはへたりと座った。


「勇者殿!!申し訳ない!!しかし猶予を!城を破壊しても良い!!せめて、せめて城の者達の避難だけでもさせてくだされ。この通りだ!!」


またもや国王の最上級の謝罪。何度目だよ…


「さて…どうするよ皆ぁ?俺、王様とまた駒遊びやりたかったよ…マジで楽しかったからさ。ああ、王様これまだ使う?」


ケイがカートを引っ張って持って来た球ころを指さして国王に聞く。国王は首を左右に振ると


「いや、もう使えぬ置物となった水晶など使い道がない。好きなように処分してくれて構わない。」


「王様ならそう言うと思ってた。カートごと貰って行く。いいかな?あとここのベンチをいくつか。」


「勿論だ!この城に有る物は何でも持って行ってくれ。勇者殿済まぬ!あの袋の乗った台車十数台はかき集めた賠償金の一部だが少ないと思うが納めてくれぬか?」


「判ったよ。王様。さらばだ。すれ違えば友で無くなるが見送るのならまだ友だ。また会えたら酒でも飲もう。だが厄災は自分達で乗り越えろよ?あの時に話した通り女神ノエル様からのお告げだ。約束通りもうこの国で勇者召喚はするな。次は滅びるぞ。さぁ急いで避難しろ。宝物庫とか何かは後からでも掘り返せ。命を無駄にするな。命は大事にだ。」


「本当に申し訳なかった…これを勇者殿。共に昼食でもと用意した良い酒だ。持っていってくれ!」


「ああ、頂こう。王様からの直々の贈り物だ。あとで飲ませて貰う。さぁ行け王様、必ず避難しろよ?手加減しないからな。」


国王は目に涙を貯めていた。そして叫ぶ。


「手の空いているものは伝令に走れ!!念話の出来るものは直ちに伝えよ!城は勇者殿を裏切った者への代償としてその者(ビゲル・アルデメルト)と共に破壊されると!!避難の猶予があるうちに城から離れよと!」


その言葉あと国王はビゲル以外が空中庭園から避難した事を確認すると俺達に深く頭を下げて避難して行った。

その隙にこそこそとよつん這いでその場から離れようとしている者がいた。


「おいおいビゲル。何処に行くつもりだ?」


「避難しろと勇者様が仰ったではありませんかそれを反古するおつもりですか?」


「いや、城の者達と俺は言ったんだ。お前やっぱり馬鹿だな。お前も一緒に破壊されると王様が言っただろう?お前も観念しろ。いい死に様じゃないかこんな大きな城と一緒に破壊されるんだ。それとも逃げて避難所で捕まり処刑を待つか?お前はもう直ぐ死ぬか城の破壊を見たあとに群集の前で死ぬしか選択肢は無いんだ。」


「私はアルデメルト家を継ぐ者だ!お前たちの様な下賎なものが話しかけていい者ではない!」


「アラヤさん…これが貴族意識ですか?私は貴族はもっと物静かな人達だと思っていたんですけどがっかりしました。」


「あ~漫画とかの貴族達ね。ウンウン、貴族の印象はあんな感じだな。あと王様もか。あれこそ王族、貴族て感じじゃない?ユリア」


「馬鹿め!!召喚されし勇者ユリア!!ビゲル・アルデメルト我に従え!!お前の名前は…」

俺はビゲルの言葉は続かなかった。

言葉の解らない奴にはこうするしかない。

ビゲルの伸ばした右手を俺の左手で掴み握り潰す。

ゆで卵を握り潰すよりも簡単だった。


「いぎゃいー!」


「だからな、馬鹿はお前だ。同じ事何度も繰り返すな。あ~もういいや逃げて見ろ。どうなるか自分で判った方が幸せかもな。最後の一瞬迄後悔しろ。お前の未来は城の外には無いぞ?」


ビゲルを追い払うように左手を向けて振る。

何故か兵士達がこちらに向かって来る。


「アラヤさん!!近衛兵士達です!」


「ユリア、皆、手を出すな。」


この兵士達に戦闘の意思がないのは直ぐに判った抜刀していなかったからだ。剣に触れずに走って来た。


「勇者様!!その者ビゲル・アルデメルトを引き渡して頂けませぬでしょうか?女王陛下以下王子殿下、姫君殿下、大臣様達や民衆達の怒りを鎮める為に!」


「ああ、丁度良かった引き取ってくれ。人を殺すのは慣れていないから。」


「では引き渡して頂きありがとうございました。」


「じゃ、なるべく城からから離れて避難してくれ。死人や怪我人はなるべく出したくないからな。そいつの後始末は任せた。」


「はっ!御気遣いを頂き感謝致します。」


「何をしているんだ近衛兵士だろう!殺せ!あいつら殺せー!治癒魔法士を呼べー!手が、私の手が!」


「黙らせろ。」


俺と会話していた兵士が後ろの兵士達に短く指示を出す。


「「「はっ!」」」


後ろの兵士達がビゲルを力任せに何発も殴り気を失わせて連行していく。

あの歌が聞こえて来る。子牛の歌が。…気のせいか。





ビゲルがいなくなって静かになったので俺達はマッピングをしながら城を散策していた。

人が残っていないかを確かめる為に。

そして見つけた。

召喚の儀式魔法の部屋を。

俺達が目覚めた部屋よりも小さいが壁や床には大小の破壊の痕跡があった。

やっぱり過去に召喚されてきた人達も暴れていたんだと判った。


「やっぱりこの城は粉砕決定だな。と言うかだな…この世界の城を全部破壊しても良いような気がするするんだけど気のせいか?」


その部屋の本や書類らしき物を手当たり次第に皆のアイテムストレージに入れながら話しをしていた。

決して火事場泥棒ではない。

許可は貰った。キリッ


「ノエルもメールに厄災は放置でって書いてたよおじさん。」


「その辺りの内容は皆同じかな?」


「「「「ウンウン」」」」


「まぁとりあえずこの城を粉砕したあとで考えよう。」




俺達は調理場にたどり着いた。

旨そうな匂いをたどると着いたと言うべきだけど。


「おっさんでもどうやってこんなデカイ建物壊すんだ?魔法か?」


「いや、俺達がこの世界の魔法を使うとどうなると思う?」


「「「「えっ?」」」」


「アラヤさん…あんたが俺達に聞く程使うとまずいのか?」


「うん、かなりな…治癒魔法なら被害は無いけど…さっき手に入れた初期魔法なんだけど皆も覚えたと思うけど竃に火を着ける魔法を見ててくれ。」


俺は竃の中を空にする。多少灰が舞っているが安全第一。


「プチファイア」


俺は竃に向けて唱えると竃を包み込むような炎が出た。

竃のなかは用心の為に空っぽにしていた。

それでもこの勢いの炎だ。

魔法力を極限に押さえていたがこれでは使えない。


「初期魔法でこれだ。俺達には魔法の威力がブーストされているみたいだ。だからこの世界の魔法でこの城は壊せない。危険過ぎる。」


「えっ?じゃ殴って壊しまくるの?」


「いや、フフフ、皆に見せて上げよう農耕機械の強さをその破壊力を!まぁでも、その前にこの旨そうな料理食べてからにしよう~♪」


俺達は調理場にいた。

配膳される前の料理があった。

ユカの検知スキルに毒の反応はなかったので皆で美味しく頂きました。

空中庭園に運ばれた料理は台車がひっくり返っていて食べられなくなっていたから匂いに惹き付けられた。

王様から貰った酒も皆で飲んだ。中々旨い酒だった。

ボトルを空けても大して酔わなかった。


食事のあと皆が持っているスキルを使い適当ぶっ放しながら城の中を破壊し空中庭園を目指していた。

球ころは俺の畑にカートごと入れてある。

俺は召喚士だからこんなこと朝飯前だった。

マーキングしたモノであれば俺のスマホの畑に入れられる。

アイテムストレージに食べ物を入れると保存されて腐らないとスキルの機能が頭に浮かぶので一々覚えなくても使いやすくて便利だ。

空中庭園を目指すのは綺麗な空中庭園を見納めしてからこの城を破壊しようと皆で話し合い決まったからだ。

ピロピロリーン勇者達は球ころを手にいれた!

遠くまで離れても通話が可能になった!

勇者達は本来の装備をした。

勇者達は食事をした。満腹になった!


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