魅惑の女王様降臨!
勇者が発掘をしようとしている!どうしますか?
てつだう
ながめる
しょべるかーでうめる
ようすをみる
俺達九人だけとなった王都マウテレティ城砦正面門を蹴り破りマウテレティ内へ歩みを進める。
正面門から真っ直ぐに伸びた広い道の約500m程先が城砦都市の三分の一の地点だ。
俺達のこの街での第一目標地点だ。
カバリナスと違って石造りこの建物が多い。
高さもほぼ二階建てか平屋だ。
大きめの石畳で整路された道。
頻繁に起こる地震に対しての物だろう。
「ちょっくら行くぜ!エネミー・サーチ・フル・オープン!…マウテレティ街内に敵対反応無しそれどころか人の反応がねぇ。が城には反応ありだ。城下層部から中層、上層に敵対反応あり。アラヤさん敵は城の中だ。ほぼ敵なんだが…あちゃー…やべぇのがいるな。あんたの読み通りだ。」
「…やっぱり…グレー・シグナルがいるのか?」
嫌な予測と言う物は大抵当たってしまう。
「ああ、中層中央の広い部屋に多分あれだろ、謁見の間だろこれ。ホワイト・シグナルも謁見の部屋の王の椅子の周り…椅子にも?まぁ六人にいるぜ。あとイエロー・シグナルも一人いるな。こいつが半端な加護持ちだろ?」
「ケイそいつは謁見の間のどの辺りにいる?」
俺はイエロー・シグナルのを一応警戒する。
「イエロー・シグナルは部屋のほぼ中央に一人でいるな。グレー・シグナルが椅子…かこれ?まぁいい。椅子の後ろに立ってるわ、マジぃな、ゆっくり黒と白に点滅中だ。ホワイト・シグナルとイエロー・シグナル以外は全部レッド・シグナルだ。全部敵だ。こいつら馬鹿なのか?部屋の中の奴らはカバリナスの城と同じ様に壁に沿った配置で待ち構えてやがる。」
「やっぱりか。城の中で立て込もっているから街の外の情報は来て無いんだろうな。兵隊は城に戻りもしないで湖の方に全員逃げたからな。」
「誰もお城に伝えには行って無かったですよね?アラヤさん」
ユリアが人差し指で顎を触りながら可愛く聞いて来る。
「ああ、ミリーシア達みたいに念話が出来そうな魔法使いは見当たらなかったからな。アファルセル王国がやっぱり魔法使いの国だからその違いで情報の伝達網が整っていないんだろうな。」
「あー、兵隊達しかいねぇえなーって俺思った。なぁ、ユカ。」
「うんうん。魔法使いいたら少し驚かせよ~て思ってたけどいないし兵隊達もあっという間に逃げちゃうし~。ホントにマジで街の中、人が全然いないね?」
「だな。まぁあれがやり易くて良いけどな。」
あとから行う俺達のストレス解消の事だ。
俺やユージやユカやユリアも気配を知る事は出来るのだが敵対者かそうでない者かは区別出来ない。
それに索敵精度がケイとは比べ物にならない。
ほぼファンタジー・ファーマー・ファクトリーを起動すると約20Kmの気配は索敵は俺達も出来るのだがあくまでも子猫程の大きさの生き物までしか感知出来ない。
「あれ全部敵~♪やっぱり城は敵だらけなんだ~♪」
「おお、やっと出番かよ~♪」
ユカとユージがウキウキとしている。
「あー、ユージとユカ。忘れてないか?もうすぐあれやるぞ。」
俺はユージとユカに思い出させる。
「「あー!」」
「あれやったら敵の数多分減るぞ。あー、やっぱり歩いて城まで行くのは少し遠いな。」
城までの長い真っ直ぐな距離を見て俺は少しうんざりする。
城までどう見ても約1.5Kmはありそうだ。
「おっさん、それ俺も思った。」
「おじさんアタシも思った~。」
「ったく、だらしねぇぞ。お前らこんぐれぇ朝の散歩だ、散歩。」
「散歩、ウォーキング!うんうん!ウォーキング!」
ユリアは腕を少し大きく振って歩幅を少し開いて歩き始める。
(ほほう、なかなかの揺れだ。見事だ。ユリア。)
「ミリーシア達は大丈夫か?」
「私達はこの程度は狩りの片道にもなりませんのでアラヤ様ご心配なさらずに。」
ミリーシアはニッコリと優しい笑顔を向けてくれる。
ミリーシアの笑顔は俺の心のカンフル剤だ。
ゆっくりと歩いて第一目標地点の広場に到着し我慢していた怒りと鬱憤を魔法力に込めて息を吐き出す。
真正面の道の先にアファルセルの王城よりも大きな城が見える。
城砦都市の壁面の壁の高さと変わらない高さの城門壁。
その奥に見えるいくつかの城の上層部の塔。
その城に到来者達を捕らえて無理強いをしている者がふんぞり反っていると思うと抑えていた怒りと魔法力が俺達全員から次第に漏れ出す。
次第に大気が揺れてと大地が震え出す。
何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。
何故俺達がこんな事にならなければいけないのか!
家族を弔い静かに暮らしていた生活を壊されなければいけない!
見も知らないくだらない馬鹿者達に弄ばれなければいけない!
何故、滅び去る世界の覇権争いの道具にされなければいけない!
あまりの理不尽さに魔法力を言葉に強く込め吐き出す。
『っんでなんだー!殺し合いがしたけりゃお前ら自分達でやればいいだろうー!!他人をー巻き込なー!!お前達に好き放題に利用されてたまるかああああ!吹き飛べエエエエ!!』
俺の右手人差し指を右腕ごと前に突き出すと言葉通りに遠く離れた城の城門壁全体が押し潰された様に爆裂して吹き飛んで行く。
城の守りは無くなった。
門のアーチだけがかろうじて残る。
俺の怒号が雷鳴の様に炸裂して響き渡る。
俺の怒号に呼応して大地が大きく震え建物が激しく揺れる。
『ざけてんじゃねぇぞ!ゴラアア!!俺はてめぇらのオモチャじゃねえぇんだよぉお!!勝手に人を糞見てぇな所に拐いやがってよおお!ざけてんのも大概にしろやああぁ!!くそメイガンがぁぁああ!』
ユージが右手に握るナイフに纏う長刀の日本刀の様な陽炎の柄をを左手でも握り遠く離れた城を袈裟斬りに切り払う。
遠く離れた城の上層半分が切断されずり落ちて砂煙が上がる。
ユージの怒号で空に大爆裂音が鳴り響きユージの周りに魔法力の噴出で強風が巻き起こる。
ユージの怒りの魔法力の衝撃波で城の正面入り口付近を残して城内庭園は吹き飛ばされる。
『マジで冗談じゃ無いんだけどオオオオ!!なんでアタシ達があんた達に奴隷にされなきゃいけないのよオオオオ!!あんた達何様のつもりよオオオオ!!アタシは奴隷じゃ無いイイイ!!』
ユカが杖の陽炎を遠く離れた城に翳すと凄まじい大量の水が城を押し流す様に降り注ぐ。
城の大きな扉が開き兵隊達が飛び出し逃げて行く。
ユカの怒号で大気を引き引き裂く雷鳴の様な高音がメグレティア王国に響き渡る。
大地が更に激しく震え広場付近の建物が倒壊していく。
『ふざけんのも大概にしとけやああああ!!てめぇらの都合で人を拐っていい気になってんじゃねえぇぞオオオオ!!てめぇらはくそでしかねえぇんだよぉお!!てめぇらそこでふんぞり反っていられんのも今のうちだああああ!うらああああ!』
ケイの怒りの右ストレートから放たれた紅蓮の炎の陽炎が遠く離れた城の上層部を直撃して吹き飛ばし炎上する。
城から兵隊達が悲鳴を上げて飛び出し逃げて行く。
ケイの怒りの怒号でメグレティア王国全土の大気が激しく揺れる。
メグレティア王国全土の大地が激しく揺れ遠く離れた火山が噴火をする。
城砦都市の半数近くの建物が倒壊する。
『私は普通に生きてたのよ!!なんで人殺しの兵器にならなきゃいけないのよオオオオ!!人殺しをしたいなら自分達で勝手にやればいいじゃないのオオオオ!!私達を巻き込んでまで人殺しをするなああああ!!死にたければ勝手に死ねエエエエ!』
ユリアが両目から涙を溢しながら怒りの怒号を上げる。
王都に爆風が吹き荒れる。
倒壊した建物が吹き飛ばされ更に建物を破壊いていく。
城のあちらこちらが倒壊を始める。
『『『『『私達はお前達の性のオモチャじゃないのよオオオオ!お前の観賞用の飾りでもないのよオオオオ!!よくも私達を嬲って貶めてくれたわねエエエエ!!お前達と同じ様な考えの者が私達を拐って来たのよオオオオ!!お前達にもあいつと同じ恐怖と後悔を味合わせてあげるわああああ!風よ我らエルフの声に応え城に吹き荒れよ!!』』』』』
ミリーシア達が両手を空に翳して祈る様に風に呼び掛けると遠く離れた城を竜巻が包み込み城を削り砕いて行く。
ミリーシア達の怒りの怒号でメグレティア王都の大気を切り裂く風が吹き荒れる。
倒壊した建物は城砦都市の壁面へと激突して粉々になる。
街は城を中心とした中央付近街を残してほぼ倒壊した。
中心街建物はある程度は倒壊しているが地盤が強固なお陰なのか地面には大きな亀裂などはあまり見られない。
俺は座り地面に触れ地盤探査スキルを使う。
「全く出鱈目だな。どうやって運んだのかは知らないが城砦都市の下は大きな岩で神殿を埋めて更にこの城砦都市外縁まで地下に大きな岩で推し固めてあるんだな。」
これでは風の神の神殿を掘り出す事は不可能のようだ。
「おっさんそれでこんだけしか街壊れてねぇの?」
「ああ、更にこの辺り自体の地盤もかなり強い。」
「おじさんそんな事も解るんだ~♪凄じゃ~ん」
「どやっ!キリッ」
「アラヤさんでも城はカバリナスの城よりも脆いよな?」
ケイも城の耐久性の脆さに気付いているようだ。
「確かに、材質の違いだろうな。メグレティアの城はカバリナスの城よりも新しい様な感じだからな。」
「あー、アラヤさんの言う通りですね~。壁の感じとか石の重ね具合も綺麗に揃っている感じですね。」
「そうだな、綺麗に切り出された石を重ねている様だ。カバリナスの城は石材が中と外では違う物だったからな。城の中央の部屋は石の大きさは不揃いだったけど同じ石材で建てられていたからな。」
あの地下の儀式の間を思い出す。
最悪な儀式の間だった。
「私達も城の中ではとても暗かった印象でした。」
リアーナが嫌な物を思い出した様に両腕を強く握り絞めている。
「そうだな。窓も少ない大きな牢獄の様な城だったからな。」
「じゃ、この城は…めちゃ脆いのかよ?」
ケイが何かに気付いた様だ。
「んー地盤が強いだけでアファルセルの城と同じかも知れないな~。俺の陽炎の指先で軽く突付いただけで城門壁全体が吹き飛んだからな。」
「「「「あー、確かに~!」」」」
「「「「「あれはアラヤ様の陽炎の指先ですか!」」」」」
「ああ、凄いだろ?キリッ」
「///とても温かく優しい風に包まれた様な感覚でした♥️///」
アメリアが嬉しそうに頬を紅く染めている。
「まぁ、俺の陽炎は皆の陽炎の様に俺だけを守っている訳じゃ無いからな。いつでも皆俺の陽炎の中にいるから気付かないだけだ♪」
「あっ、あー!おっさん!!どーすんだ!滑り台の石はよ!」
「「あっ、あー!!ユージ~!」」
俺とケイはユージの口を二人係で塞ごうとしたが遅かった。
「「「「「「「滑り台?」」」」」」」
ユカとユリアとミリーシア達が声を揃えて聞いて来る。
「あちゃー、あーぁ、内緒だっつっただろうがよ~。ユージ~。」
「あっ、悪ぃ!ケイ!おっさん!」
「あ~、いや、ケイ今のは仕方ない。ユージも咄嗟に思い出したんだよな?」
「うん、かてぇ石がいるっつうの思い出してつい…」
「ね、ね、ユージ!滑り台て何?何?」
ユカが目をキラキラさせてユージに詰め寄る。
「おっさん…言っていいか?…」
「ああ、いいぞユージ。」
「あんな、女子達を驚かせようって内緒でプールに滑り台を作る計画してたんよ。」
「マジで~♪」
ユカの目がキラキラとしてユージを見ている。
女性達が嬉しそうにユージの話しを聞いている。
「おぅん、始めはよ、アミューズメントプールのスライダーみてぇの作りたかったんだけどな、おっさんとか俺達で作れる物がよ、滑り台くらいじゃねぇかってなってよ。んで、かてぇ石を持って帰る予定だったけどな…」
「あー、ユージ君お城が壊れやすいから?」
「あ、うん、ユリアさん。ぶった斬った時も手応えねぇしおっさんの陽炎でつんって軽く押しただけでぶっ壊れるし…」
俺は腕組みをして歩きながら考えていた。
道を見てふと思い付いた。
「ユージ、硬い岩なら後で貰おう。」
「へっ?」
ユージが俺の提案に驚いている。
「「「「硬い岩あるの?」」」」
「「「「「あるのですか?アラヤ様?」」」」」
皆も驚いている。
「ああ、間違いなくある。この下に。それにここの道に埋められているこの石畳の岩もかなりの物だぞ。」
俺は草刈り鎌を無詠唱で召喚して石畳の岩を切って行く。
新雪に突き立てる様に鎌が突き刺さり切り筋が四角く刻まれる。
俺は鎌を切り筋に押し込むと石畳が簡単には四角く剥ぎ取れる。
約15cm四方のタイルの様に切り取れた。
とても軽いスポンジの様な重さだ。
「うん、鎌だと簡単に切れるが魔法力を込めなければプールや浴槽並みに硬い石だぞ。持って見ろ。ユージ」
俺は切り取った石畳をユージに渡す。
ユージは軽く拳で叩いて感触を確かめている。
硬質な良い音が鳴る。
「ん、お♪おおっ♪おっさん!!いいんじゃね?」
「ユージ貸してくれ、お♪なかなかいいじゃネェか!アラヤさんこれいいじゃネェか!」
ユージから受け取ったケイも同じ様に拳で軽く叩いて感触を確かめている。
硬質な良い音が鳴る。
「うん、いいな。あとでたっぷりと貰うとするか。さてと取り敢えず城を片付けて早く到来者達を解放しないと危険だからな。」
「!そうだった!!おじさん!!急がなきゃ!!」
「アラヤさん!急ぎましょう!!」
「「「「「「「アラヤ様!急がなくては!!」」」」」」」
「ヤッベェ!忘れてた!!」
「アラヤさん!急ごうぜ!まだゆっくり点滅中だ!」
「ああ、城から悲鳴は上がってはいない。きっとまだ間に合う筈だ!皆、ユニバース・ベヒモスで急ごう!」
「「「「「「「おうー!」」」」」」」
「機獣ユニバース・ベヒモス九機!!我らの前に揃い顕現せよ!」
城砦都市外縁を耕しているユニバース・ベヒモス達とは別の子達を俺は略式詠唱で召喚して皆で乗り込む。
皆が乗り込んだ事をサイドミラーで確認して命令を下す。。
「隊列のユニバース・ベヒモス全九機、中速まで加速し王城に急ぎ進め!!」
ユニバース・ベヒモス達は揃い動力音を上げて城に向かい突き進む。
俺達が城にたどり着きユニバース・ベヒモスから降りると城の下層階と上層階からは人の気配は無くなっていた。
「ケイ、生存者死亡者検知スキルを頼む。」
俺はケイに確かめて貰う。
「ったく、あんたは…お人好しだよ。任せろ。デッド・オア・アライブ・サーチ・フル・オープン!……ちっ、アラヤさん。ここもヤッパあんぜ。カバリナスと同じ様なくそ部屋が。そこに24体の死体があんな。五年以上経ってんな。他は…こりゃあれか地下墓地か城の中に墓があるみてぇだな。あー数はいいか。結構な数だ。墓だしな。他の死人はいねえな。んだよ。城に残ってんの謁見の間に繋がる階段の前と謁見の間だけだな。」
かなり手加減はしたつもりだったがやはりもしも俺達の行いで死人が出る様な事があればの罪悪感はある。
ここも最悪な儀式の間があるようだ。
「ふぅ、ありがとう、ケイ。召喚儀式の間はあとから徹底的に潰そう。供養も込めてな。よし、球ころを皆に任せる。到来者達と馬鹿共は俺に…」
「おっさん!一人で背負い込むなよ。それにグレーシグナルまでいんのにもしもん時に紙装甲のおっさんだけだとやべぇだろ?俺もおっさんといるからよ。ユカ、頼むな。」
ユージが俺の側にいてくれると言ってくれた。
ユージの優しさを改めて感じさせられた。
「ユージ、判った!任せて。」
「よし、時間がない。一気に突っ切るぞ!スモール・ミラージュ・ガード・ドーム!オール・ドッキング!」
俺達の身長よりやや高いミラージュ・ガード・ドームが俺達を包み込みドームが縦に長く連結される。
だってビニールハウスだもの。
長い物が普通だもの。
「わっ!おじさん!こんな事も出来るんだ~♪」
「おっさんなんでもありだな!」
「アラヤさん凄いです!」
「「「「「「「アラヤ様、驚きました!」」」」」」」
「どやっ!じゃ皆で持ち上げて~♪一気に突っ切るぞ~!」
「「「「「「「「「「「オー!」」」」」」」」」」」
俺達は皆でドームを両手で押し上げて城に突撃して行く。
兵隊達が階段の前に立ち塞がっている。
「何だ!あれは!」
「輝く化け物だ!」
「城に入れるな!」
「俺は見たぞ!!勇者共だ!あれの中に勇者共がいるぞ!」
「捕らえろ!」
「「「「「「はっ!」」」」」
兵隊達が剣や槍を向けて何かを叫んでいるようだが何度も言うがドームの中には何も聞こえない。
俺達はそのまま突撃をする。
兵隊達はボーリングのピンの様に散り散りに映画の悪役がワイヤーアクションで飛ぶように弾き飛ばされて壁にぶつかり動かなくなる。
「おりゃー!どけどけどけー!」
俺は雄叫びを上げる。
しかしドームの外には聞こえない。
階段の下にいる兵隊達はドームを追い掛けて来ない。
俺達は気配の集まっている謁見の間にそのまま突撃をして扉をぶち破る。
俺はドームを収納して謁見の間を皆で悠然と歩いて玉座に向かう。
兵隊達や貴族っぽい男から響動めきが上がった。
俺達の方へ一人の男が駆け寄って来る。
その男の服装を見て咄嗟に俺は込み上げて来る怒りを押さえる。
ここには順応している到来者達がいる。
手加減をしなければいけない。
グレー・シグナルの到来者もいる。
ホワイト・シグナルの到来者達もいる。
時間が無い。
一人の年配の爺が隷属のアクセサリーをじゃらじゃら着けて俺達の前に立ちはだかる。
「止まれ!メグレティア国王の前だ!膝間付き名を名乗れ!」
俺は苛立ちを押さえて静かに言う。
「知らん。この世界は俺の世界でもない。誰が王であっても俺が頭を下げる必要はないし名乗る必要もない。」
「何を!勇者の分際で無礼な!名乗れ!」
「だが断る!!」
「何!ぐぎょっ!」
年配の爺が邪魔なので俺は右手で首を優しく掴んで爪先が浮く程に持ち上げる。
謁見の間の貴族っぽい男達や兵隊達がざわめいて壁際に逃げる様に下がる。
「おい、爺。もう時間がない。無駄な事は喋るな。勇者選定球は何処だ?頭から壁に刺さるか有りかを言うか選べ。」
俺は苛立ちを押さえて静かに言う。
この爺も大袈裟に足をバタつかせて俺の右腕を両手で掴んでいる。
「ぎょのどなりのべやにある!」
「右か?左か?奥か?嘘を付くと頭から壁に刺さるぞ?」
俺は爺の目を見詰めて聞く。
一瞬爺が躊躇って言う。
「み、ぢかう!びだりのべやだ!」
「そうか、左の部屋だな?じゃあ、お前が行ってこい。」
俺は爺を左の部屋の扉に軽く投げる。
「ぐがはっ!ブエブゴギャブベズガっ!」
爺が扉にぶつかると扉から何本もの槍が突き出て爺は全身が穴だらけになり体から槍が抜けると床に糸の切れた操り人形の様に倒れて動かなくなった。
「で?、勇者選定球は何処だ?」
極力魔法力と怒りを押さえているが城が小刻みに震えている。
俺達は更に謁見の間を進む。
悪趣味な椅子に国王らしき口髭男が座っている。
よつん這いにさせた全裸の無表情の十代後半の女子の背中に座り女子の頭の上に乗せた伸ばした脚を組み全裸の無表情の女性を背凭れにしてふんぞり反っている。
(フム、この世界の王族はあの手の趣味が流行りなのか?)
趣味の悪い棘鋲で飾られた太い犬の首輪を着けてジャラジャラと隷属のアクセサリーを成金男の様に着けている口髭男は幸い服は着ていた。
(なんだと!首輪をしている者が女子に座るだと!逆であろう!女王様は何をしている!こいつは全く解っていないな!SMと言う物を!)
「ユリアちゃん、この世界の王様て変態ばっかだね?」
「ユカちゃん、本当だね。王様は変態しかいないのかも。」
「「「「「カバリナスの王も変態でしたよ。」」」」」
「「あー!変態だったー!」」
ユカとユリアとミリーシア達がひそひそ話をしている。
俺はため息しかでない。
どうやらアファルセルの国王が一番マシな頭の国王の様だ。
(フム、だが巨乳派だったな。)
「ふん、兵共よ!勇者共を捕らえろ!」
口髭男が右手を俺達に向けて兵隊達に命令をする。
兵隊達は足が震えて動けないでいる。
(フム、あれでは少し押してやれば漏らすな?やるか!)
「隷属の装飾品を今すぐ身に付けている者達は外せ!時間がない。死にたくなければ外せ!誰かの名前が刻印されているなら早く外して壊せ!外した者は城から逃げろ!」
俺は一々兵隊達を相手にする事が面倒なので忠告をする。
兵隊達が隷属のアクセサリーを急いで外して踏みつけている。
「壊れない!壊せない!死にたくない!」
「壊せない!」
「「壊せない!助けてくれ!!死にたくない!」」
「「「「壊せない!!」」」
「俺は帰ったら幼馴染みのあの子と結婚するんだ!死ねない!」
「俺は赤ん坊が生れたてばかりなんだ!死にたくない!」
「俺は好きだったあの子に告白するんだ!死ねない!」
貴族っぽい男達や兵隊達の股の間の布地が濡れている。
(フム、やはり壊せないと思ってはいたが壊せない程力も弱いようだな。)
「悲しいけどこれ戦争なのよね。」
俺に一人の兵士が剣を向けて走って来た。
「殺らせわせん!」
俺は兵士の剣を手刀で軽く叩くとポキンといい音を立てて剣が折れる。
「俺はあの子に伝えたんだよ…」
何か格好を着けている兵士の鎧の襟を右手の人差し指で引っ掛け持ち上げて軽く壁に投げ飛ばした。
「ぶべへっ!」
格好を着けていた兵士は頭から謁見の間の壁に突き刺さった。
「ゆ、ゆ、勇者の戯れ言に乗せられよって!!馬鹿共が射て!矢を射て!」
口髭男が叫ぶと沢山の矢が謁見の間の両側から次々に飛んで来る。
体に当たるけど何も感じない。
矢は俺達に当たるが次々と床に落ちる。
(やれやれ、こんなものか。豆撒きで子供達に投げつけられる豆程もないな。)
「ば、ば、ば馬鹿な!オミエルコンの矢が効かぬだと!そんな馬鹿な!射て!!休むな射て!!」
口髭男がまた叫ぶと次々に飛んで来る矢。
次々と床に落ちる矢。
だんだん矢の飛んで来る間隔が開いて来る。
面倒なのでそのまま玉座に更に歩いて近付く。
俺の前にケイより少し歳上くらいの青年が薄いもやもやとした陽炎を纏って立ち塞がる。
「お願いです!僕に剣を抜かせないで下さい!僕は剣でどんな物でも切れるんです!僕は殺したくはないんです!貴方達は僕には絶対に勝てません!僕はこの国で一番強いんです!大人しく名前を言って下さい!」
威勢の良い言葉を恥ずかしげもなく言った青年の陽炎を纏った剣の柄を握る手は震えている。
「格好着けた事は口だけなら誰でも言えんだよ!抜けねぇなら持つんじゃネェよ!!腰抜け野郎がよ!」
俺の前にユージが飛び出し陽炎を纏った青年に陽炎を纏ったナイフの長刀を突き付ける。
「ひぃっ!」
大きな事を言った青年は情けない悲鳴を小さく上げる。
「何をしているレメス!男は殺して構わぬ!女は捕らえろ!その女勇者共を捕らえろ!これが見えぬのか!」
口髭男が背凭れにしている全裸の女性の首に剣を宛がう。
それを見た青年が焦り出す。
「国王やめてくれ!国王に従う!だからリデアに剣を向けないでくれ!」
口髭男が間抜けな馬面で歯茎を見せて勝ち誇った顔で笑う。
「フン、所詮勇者などこの程度の者だ!ハッハッハッハッ!」
背凭れにしている女性の胸を口髭男は左手で鷲掴みをしているつもりだろうが全裸の女性の胸に指は全く食い込まない。
端から見ると胸を左手で沿えて隠している様にしか見えない。
(フム、この世界の王族はよほどの乳コンのようだな。)
「チッ、勇者の女など見掛けは美しいが固いだけだ。これではオミエルコンの人形と変わらぬ!面白くもない!余の椅子で充分だ。」
口髭男が言いたい放題に言っている。
口髭男は前を見ていて気付いていない。
背凭れにさせられている全裸の女性の両目が大きく見開いて口髭男を見下している。
とうとう時間切れになってしまった。
(フム、彼女は全裸ではなくボンテージを着て鞭を持ってハイヒールを履くべきだな。女王様としてだな。)
青年は背凭れにさせられている全裸の女性に突き付けられた剣を見て怯えている。
青年は覚悟を決めた様に剣抜き構える。
「…僕は!僕は彼女の為になら戦える!強くなれるんだ!どうなっても知らないからな!僕のオーラよ、力を解き放てー!!もう手加減は出来ない!行くぞ!切り裂け!オーラ・スラッシュ!」
その時見えた青年の口元が僅かに左に上がった事に青年が今まで語っていた言葉の中に矛盾を感じた。
少し謁見の間の空気がそよ風程度に揺れた気がしたがすぐにおさまった。
口髭男や兵隊達や貴族っぽい男達から響動めきが上がった。
青年は鎧と剣に陽炎を纏わせ雄叫び上げてユージに斬りかかる。
もやもやとした薄い陽炎を纏った青年の剣がユージに振り下ろされる。
「はぁ…んだよ…ホラよ。せっかく見せ場が出来たと思ってちっとは期待したのによ…こんなもんかよ…」
ユージはため息を吐いて右手に握るナイフに陽炎を纏わせ長刀に変えて軽く振り払うだけで青年の振り下ろした剣を弾き返す。
「そんな!僕のオーラ・スラッシュが!!」
よほど自信のあった必殺技だったのだろう。
青年は愕然としている。
(ほう、あの薄い陽炎のお陰でお好み焼きの剣が折れていないな。)
「馬鹿な!レメスの剣技が効かぬなどとは!」
兵隊達や貴族っぽい男が響動めきを上げて口髭男が歯茎を見せて驚いている。
(フム、やはりどう見ても奴の顔は馬面にしか見えないのだが。ウム、馬面だな。)
「てめぇ、ド素人が使えねぇ剣振り回してんじゃねえ!」
ユージは体重を載せた右脚で隙だらけの青年の左脇腹を蹴り抜いた。
青年は不様に後ろに倒れる。
(ほう、薄い陽炎を纏っているからだな。お好み焼きの鎧がベッコリと凹んだだけじゃないか。)
立ち上がろうとした青年の首筋にユージの長刀の刃が宛がわれる。
「ヒィっ!」
「まだやんのならてめぇ本当に死ぬぞ?ごらぁっ!」
ユージの殺気を込めて言い放つ。
「そこ迄!双方剣を引け。この勝負俺が預かる。青年、彼女を思うなら俺達の後ろに下がれ。もう彼女の気が晴れるまで望む事をさせるしか彼女の心を救える方法や術は失くなった。青年、隷属の装飾品は持っていないな?」
青年は頷いたので俺達の後ろに下がる様に左手で示す。
青年は一瞬、首を横に振ろうとするけどもやめ素直に俺達の後ろに下がる。
それを見た口髭男がいい放つ。
「己!この裏切り者め!貴様の女などこうしてくれるわ!」
口髭男が唾を飛ばして叫び背凭れにしている全裸の女性の首に宛がっていた剣を強く擦り付け前に引く。
口髭男の顔が勝ち誇った様に歯茎を見せてにやける。
青年は目を瞑り顔を背ける。
「あ、あ、リデアが…」
青年は力が抜けた様に膝から崩れ落ちる。
(フム、まるで三文芝居の役者の様だ。あれがチョコ菓子程度の物とは知らない筈はないのだが。)
しかし何も起こらない。
背凭れにさせられている全裸の女性には切傷などない。
背凭れにさせられている全裸の女性の眼光が更に鋭くなる。
(そこで「この豚め!」と言って唾を吐きかけ鞭で思い切り口髭男の背中を叩く所だ。女王様としては!)
「青年、顔を上げて彼女を見てみろ。」
「えっ…そんな…切られて…いない?」
顔を上げて平然と立って口髭男を見下している背凭れにさせられている全裸の女性を俺に促されて見た青年は驚いている。
(…三文芝居をいつまで続けるのだ?チョコ菓子では人は切れぬだろう。)
誰かのスマホに着信のバイブレーション音が低く唸る。
ケイがスマホを見ると舌打ちをする。
「チッ、俺のとこにノエルからメールが来たぜ。時間切れだと。あと球ころの場所が判った。おいガキんちょ、その人を頼んだぞ。あれはあんたの…あんたの責任じゃねぇ。あんたの忠告を無視したあいつらだ。背負い込むなよ?」
ケイは俺とユージに聞き取れるくらいの小さな震える声で言い俺の右肩を後ろから強く掴み右側に並ぶと一回頷く。
「ああ、判った。そっちは任せた。」
俺もケイに言葉を返して一回頷く。
「作戦通りに皆球ころの所に行くぞ!二人共あとは任せた!!」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
ユカとユリアとミリーシア達が声を合わせて返事をする。
「「任せろ!」」
俺とユージは声合わせて返事を返す。
ケイが先頭に駆け出しユカとユリアとミリーシア達はケイのあとを追って走って右の扉に向かって行く。
兵隊達は震えて動く事はなかった。
「もう一度だけ言うぞ!隷属の装飾品を身に付けている者は死にたくなければ今すぐに外せ!二度と身に付けるな!もう時間が無くなった!隷属の装飾品を外した者は即刻この城から出ろ!」
俺は語気を強めて忠告する。
城が更に震える。
「「「「「うわぁあああああ!」」」」」
「「「「「帰るんだー!俺達は帰るんだー!」」」」」
「「「「「こんな仕事はもう嫌だー!」」」」」
「「「「「「俺達は転職するんだー!」」」」」」
「「「「「「給料の良い仕事を探すんだー!」」」」」
「「「「「定時に帰れる仕事を探すんだー!」」」」」
「「「「「「「こんな物の為に死ねるかー!」」」」」」
「「「「「「「うまづら王の為に死ねるかー!」」」」」
「「「「「「「馬鹿面王の為に死ねるかー!」」」」」」
「「「「「「間抜け面王の為に死ねるかー!」」」」」」
「「「「「「「ド変態王の為に死ねるかー!」」」」」」
「「「「「嫌だー!こんな仕事もう嫌だー!」」」」」
兵隊達は野太い悲鳴を上げて身に付けていた隷属のアクセサリーや武器を床に次々に投げ捨てて謁見の間から逃げて行く。
「待て!!逃げるな!貴様ら止まれ!!私の近衛隊長の言葉が…ガバッグベッゴガッ!」
近衛隊長らしい男は兵隊達の波に飲まれて踏み潰された様だ。
口髭男は落ち込んでいるようで何も喋らなかった。
(フム、自分が馬面で馬鹿面で間抜け面でド変態だという事にようやく気が付いたようだな。)
兵隊達がいなくなり少し静かになった謁見の間に俺以上に空気を読まない馬鹿の間抜けな声が響く。
「ふ、ふん!役に立たぬ兵士などこ、殺してしまえ!ゆ、勇者などのざ、戯れ言に乗せられよって!!ば、馬鹿共が!!名乗れ!勇者!!ワシが覚えてやるから貴様の名を名乗れ!」
壁に張り付いているブクブクと太った男が隷属の指輪を俺に見せ付ける様に気持ち悪いカエルの様な声で叫ぶ。
馬鹿がまた増えた。
服装から見て貴族なのだろう。
同じ様な服装の間抜け面が二十人程いる。
(フム、この国は馬鹿が支配しているのは間違いな。)
「青年、その鎧と剣は使いこなせるか?」
俺はブクブクと太った男をスルーして青年に聞く。
「…オーラを纏えば…なんとか使えます。」
青年は俯いたまま返事をする。
「青年、お前は自分の事だけを守れ。今から彼女が行う事に彼女には責任はない。今ここで彼女の恨みだけを晴らさせる。ここだけで俺が杭止める。でなければ彼女は身も心も本物の厄災となってしまう。任せろ。俺の仲間達が必ず彼女を救ってくれる。青年、見たく無ければ事が終わるまで部屋を出ていくか目を閉じていろ。」
青年を見なくても解る。
嗚咽が聞こえる。
泣いている。
「…いえ。僕が…僕が…人…殺しをしたくな…かっ…たから…僕の責…任で…す。僕が…彼女…の名前を叫…ばなければこ…んな事にな…らなかった…僕が…国王を…殺して…いれば…」
青年は厄災のある程度の事は知ってはいるようだ。
今から始まる事も。
(ほほう、涙も流せるのか。大根役者ではない様だがな。)
「誰でも進んで人殺しにはなりたく無いものだ。俺もだ、だが時には殺らねばならない事もある。本当に好きな女性を本気で守るのならその時は殺る気で剣を抜け。ここはそう言う世界だ。」
「おっさん!あの姉ちゃん動くぞ!」
ユージが咄嗟に叫んで教えてくれた。
「判った。ありがとうユージ、お前は見るな、いいな。ミラージュ・ガード・ドーム!俺が解除するまで内の者を外に出さずにドーム外を見せるな!」
「おっさん!」
『了解しました。アウター・ミラージュ作動します。』
すると素早くユージはドームに包まれユージのドーム内壁は鏡のようになり外が見えなくなった。
俺は強制召喚したユージのドームにユージを入れて今から起こる惨劇を見せない様にした。
背凭れにされていた全裸の女性が前に座っている口髭男の襟首を後ろから右手の人差し指と親指で抓み上げる。
「ぐげぇぇぇ、ばなぜぇぇ!」
口髭男は言葉の通り放されて壁に軽く投げ付けられる。
「ぶべっ!」
口髭男は壁にぶつかり床に落ちると動かなくった。
(ほほう、さすが女王様だな。解っているではないか。メインディッシュを残しておくとは。ムム!口髭男の頭で隠れていたがなかなかの絶景だな。)
俺は玉座まで駆け出しよつん這いの女子と際どい伝説の鎧を纏う五人の到来者達にドームで包み込む。
「まだ返事を返すのは無理だろう。だけど安心してくれ。この中は安全だ。外の声は聞こえない。隷属の呪縛の命令も届かない。暫くここで大人しくしていてくれ。キリッ」
六人の到来者達の女性達はほんのわずかに頷く。
「俺が解除するまで待っていてくれ。必ず自由にして上げるからな。キリッ。」
彼女達はもう一度微かに頷く。
「ミラージュ・ガード・ドーム!俺の解除命令があるまでドームに誰も入室させるな!遮断を強化せよ!ドーム外を彼女達に見せるな!」
『命令を了承致しました。アウターミラージュを展開します。』
「それじゃまたあとで、次は皆の声を聞かせてくれ。キリッ」
女性達は微かに頷いてくれた。
俺はドームを出て謁見の間の出口付近で待機する。
背凭れにされていた全裸の女性はブクブクに太った男貴族っぽい男達に向かい飛び掛かり腕を引き抜く。
「ぐぎゃー!腕がー!」
背凭れにされていた全裸の女性は貴族っぽい男達を手当たり次第に引き抜きはじめる。
腕を引き抜き首を引き抜き逃げようとしている者達に引き抜いた物を投げ付け動けなくする。
「やめっ!ぎゃぶっ!!」
「はなせー!がぁぐわっー!腕がー!」
「くっ、来るな!ぶじょっ!」
「ぐぼっ!あがぁぁ…はなっ!ぶびょっ!」
「がはあっ!ぐあ…はなっ!腕がー!」
謁見の間の出口に逃げて行く者達の前に俺と青年は立ち塞がる。
「勇者!!そこをどけー!!」
「断る。レディがお待ちかねだ。レディを待たせるな。」
「ぶわー!!ぐぎょっ!」
「た、た、た、た助けてくれ!」
「男にかける情も容赦もない。」
「あ~っ!ぶびゃっ」
「報いだ。受けろ。」
「な、な、な、な、なげるなっ!」
「勿論、投げる。」
「どけー!レメスー!」
「逃げては駄目です!リデア!」
「うわー!やめっ!ぎゃばっ腕がー!」
「放せー!」
「俺は外せと言った筈だ。自業自得だ。」
「うわー!やめ、!ぎゅっ!」
「裏切り者め!放せ!」
「駄目です!リデア!」
「あー!ギャー!腕が!!」
「はなせー!やめろ!」
「お前達が撒いた種だ。」
「なげっ!わ~ぁー!ぶびゃっ」
俺と青年の方に逃げて来た者達を捕まえて背凭れにされていた全裸の女性に投げて渡す。
背凭れにされていた全裸の女性は無表情のまま嬉しそうに受け取り腕や首を引き抜く。
「開けろ!!ここを開けろ!!早く開けろ!!た、た、た、た助けてくれ!!」
玉座の奥の部屋に逃げ込もうとしている者は扉が開かずにドアノブを必死で回す。
(フム、鍵がかかっているのが解らない馬鹿の様だな。)
「開けろ!!開けろ!!ワシの言う事を聞いて開けろ!!早く!開けろ!!」
ドアノブを必死で回す男の後ろに背凭れにされていた全裸の女性が静かに近付いていく。
必死でドアノブを回す男は気付くのが遅かった。
「ひいいぃぃぃぃぃ!はなせー!がぁぐわっー」
ドアノブを必死で回す男の頭を背凭れにされていた全裸の女性の右手で鷲掴みにして左手で男の肩を押さえつける。
「やめっ!ぎょぶべっ」
背凭れにされていた全裸の女性に首を引き抜かれて首に付けていた隷属のアクセサリーが外れて床に落ちた。
(フム、なかなか良い形の桃尻だな。)
貴族っぽい男で生きている者もようやく気が付いた様だ。
背凭れにされていた全裸の女性の狙いが。
「来るな!!やめっ!腕がー!」
「従っ!リデアグベッ!」
「外ずれた!!自由にしてやっ!ぐがあー!何故腕をー!」
背凭れにされていた全裸の女性は広い謁見の間を自由自在に飛び回り駆け回り次々に引き抜いて行く。
(フム、生き生きとしているな。なかなかの揺れではないか。)
生きている貴族っぽい男が慌てて最後に残った首に着けている豪華かな犬の首輪の様に太い隷属のアクセサリーを外そうとする。
惨劇を目の前で見ていて手が震えて隷属のアクセサリーを外せ無いでいる。
(フム、まるで海外アニメの犬の首輪の様だな。顔も犬に似ているな。よく似合っているが。ふっ。)
「た、た、た、た助けてくれ~!金ならくれてやる!!なんでもくれやる!!勇者なら助けろ!!」
犬の顔の男が腰を抜かしたまま俺に助けを求めてくる。
「お前は馬鹿だろう。本当は敬われていない者が何故見ず知らずの者を助けなくてはいけない。」
「勇者には義務があるだろう!私達に従う義務があるだろう!」
犬の顔の男が馬鹿げた事を言う。
「お前はやっぱり馬鹿だろう。そんな義務はない。」
「頼む!!た、た、た、た助けてくれ!!」
犬の顔の男にゆっくりと静かに近付く人影がいる。
俺は人影に小さく頷く。
人影も無表情で頷く。
「だが断る!!」
「な、な、何!!」
犬の顔の男はまだ気付いていない。
「男にかける情も容赦は一切無い。」
「き、き、貴様はそれでも勇者か!」
犬の顔の男のもう真後ろに立っている。
まだ犬の顔の男は気付いていない。
「お前は本当に馬鹿だな。俺は勇者だとは一度も言ってはいない。」
「召喚されて来た者は全員勇者だ!勇者は召喚した者に従う義務があっ…ぐげぇぇぇ、ぶきょっ!」
「お前は破滅的な馬鹿だ。もう一度言おう。そんな馬鹿げた義務は一切無い。それにお前に召喚された覚えも一切無い。ああ、もう聞こえていないか。」
長々と喋る暇があれば逃げればいいものなのに座りこんだまま俺と貴様っぽい男は喋り続けて背凭れにされていた全裸の女性に首を引き抜かれるまで気付いていなかった。
(フム、やはり馬鹿は馬鹿なのだろう。俺に時間稼ぎをされている事に気付かないとはな。)
背凭れにされていた全裸の女性はまだ止まらない。
「やめっ!ぎょぶべっ」
「助けっ!ぶびゃっれ」
「う、頭が、やめろ!べっ!」
「頭を!頭をー!はなせー!やめてく~わー!びょっ」
かろうじて生きている者の頭を鷲掴みにして大きく振りかぶり力強く壁に叩き着けて行く。
まるで水風船を壁に投げ付けて遊ぶ子供の様に既に死んでいる貴様っぽい男の残骸も壁に叩き着けて潰していく。
(フム、なかなかのフォームだな。足の開きも見事だ。)
背凭れにされていた全裸の女性はある者だけを残して謁見の間に転がっていた物を全て壁に投げ付けて綺麗に潰して片付けた。
(フム、なかなか良い揺れの絶景だった。)
背凭れにされていた全裸の女性はゆっくりと歩いてそのある者の所へ向かって行く。
一歩一歩ゆっくりと静かに歩いて近付いて行く。
ある者はまだ目を覚まさない。
背凭れにされていた全裸の女性はある者の目の前にしゃがみある者の右手を床に優しく潰さない様に押し付けると右手の人差し指と親指で口髭男の人差し指を抓み引き抜く。
「ぐぎゃー!あがぁぁ!」
口髭男は引き抜かれた痛みでようやく目が覚めた。
背凭れにされていた全裸の女性は口髭男の親指と中指を抓み引き抜く。
「ギャー!やめろ!従え!!う、う、わ、私にし、従え!アガギャー!」
俺は口髭男に歩いて近付いて話し掛ける。
「お前は馬鹿なのだろう。彼女はお前に従っている。彼女の顔を見ろ。無表情のままだろう。お前が従わせているからお前を襲っている。」
「ぐああ…な、何を!従っていないではないか!私を助けろ!勇者!」
「断る。俺は勇者じゃない。」
「もう止めてくれ!!リデア私が悪かった!!勇者!!レメス!助けろ!私を助けろ!」
「お前は馬鹿だろう。何度も同じ事を言わせるな。俺も青年も勇者じゃない。お前を助ける理由も一切無い。」
背凭れにされていた全裸の女性は次は口髭男の左手を優しく潰さない様に床に押し付ける。
(フム、そこはやはりヒールで踏みつけるべきだな。女王様。)
「やめろ!やめろ!やめろ!止めてくれ!!リデア止めてくれ!!がぎゃー!」
背凭れにされていた全裸の女性は右手の人差し指と親指で口髭男の左手の親指を抓み引き抜く。
「アグゥゥ…やめ、!もう止めてくれ!!」
「お前達は本当に馬鹿ばかりだな。俺は何度も何度も必要の無い忠告をした。助ける義理も無いのにだ。いずれこういう状況になると。忠告を聞かなかった馬鹿な自分達を恨め。」
「あがががあ…お前がリデアを操っているのだろう!止めさせろ!リデアを止めろ!何でもくれてやる!!お前の欲しいものを全てくれてやる!!」
「全て?ほう、そうか。」
俺は目を細め口髭男を見下しながら話を続ける。
「お前のその頭はただの飾りだ。なるほど、飾りだから馬鹿なのか。お前達が何故こういう状況に陥った理由が解らないのか?」
「な、何、何がだ!」
俺はため息を吐いて変態馬面間抜け馬鹿野郎に説明をした。
「はぁ、本当に解らない様だな。仕方がない。馬鹿なお前に解る様に教えてやる。今ここで起きている事こそが厄災の一つと云われている《魔王の配下の復活》だ。」
「!何だと…」
「厄災《魔王の配下の復活》とは隷属の呪縛から自然解放された者が隷属の装飾品を装着している全ての者を殺して隷属の装飾品を破壊して行く事を言うんだ。隷属の装飾品を破壊するだけでは不完全な解放のままだ。本当に解放されるまで隷属の装飾品を持つ者を見つけると衝動的に殺して隷属の装飾品を破壊する。自然解放された者が死ぬまで続く。それが厄災《魔王の配下の復活》の全貌だ。既にこの国が手遅れだと事が起こる前に何度も忠告をしただろう。時間が無いと。」
メグレティア王国は既にグレー・シグナルの彼女がいた。
俺達が来る前からグレー・シグナルだったようだ。
更にホワイト・シグナルの到来者達もいた。
彼女達もグレー・シグナルに変わるまで時間がなかった。
グレーシグナルの彼女をブラック・シグナルに変わる前に解放したかったが口髭男が彼女の引き金を引いてしまった。
彼女は殺されると感じてしまった。
死の恐怖に晒された彼女はブラック・シグナルへと変貌してしまった。
あのまま謁見の間にいた兵隊達が隷属のアクセサリーを持ち続けていれば更に凄惨な事になっただろう。
彼女の目に付いた隷属のアクセサリーを持った者が一人でも城から逃げればその一人を追いながら回りの人間達も巻添えに殺戮が続いてしまう所だった。
背凭れにされていた全裸の女性は口髭男から引き抜いた物を一ヶ所に集めて粉々になるまで踏み潰している。
(おお!ようやく踏みつける事を思い出したのか!女王様!)
「も、も、も、もうあとは首輪しか!まさか!!リデアを止めてくれ!!外してくれ!!」
口髭男は首輪を外そう足掻くが指が無いので外せない。
(フム、しかしあれだな、隷属を強いる者が首輪をしているとはどんな馬鹿げた冗談だ。)
「外したとしてもう遅い。彼女はお前を獲物として認識している。獲物として認識された者が逃げ続ければそれだけで回りの者達が巻き込まれる。被害が更に大きくなる。この部屋で隷属の装飾品を付けて生き残っている者はお前だけだ。諦めろ、あとお前一人が彼女に殺されるだけで今回の厄災が終結する。」
背凭れにされていた全裸の女性は優しく潰さない様に口髭男を床に腹這いに押し付ける。
(ムム!踏みつけるのか!女王様!)
「た、た、た、た助けてくれ!!リデア私が悪かった!やめろ!止めてくれ!!助けろ!勇者!!貴様の名を名乗れ!従って私を助けろ!」
「屁野屁野茂辺地」
「はっはっはっはっ!馬鹿め!召喚されし勇者ヘノヘノモヘジ!!貴様の名は隷属の首輪に刻まれた!バウシュベル・リャマ・ウマズラ我に従え!!これで貴様は私の僕だ!」
「ヘノヘノモヘジさん!!」
「だが断る!!」
俺はキッパリと断固拒否する。
「な、な、な、な、何!!何故だ!!何故従わない!」
「お前は本当に救いようの無い馬鹿だな。へのへのもへじ。そんな間抜けな名前の者がいる訳が無いだろう。まぁ最後に笑えて良かったじゃないか。」
口髭男は間抜けな馬面を更に間抜け面にして歯茎を見せて口を開けている。
青年が顔を真っ赤にして俯いた。
「何だと!!やめろ!止めてくれ!リデア止めてくれ!!」
背凭れにされていた全裸の女性は口髭男の頭を右手で鷲掴みにすると押し付けていた左手を離して口髭男の頭を鷲掴みにしたままゆっくりと立ち上がる。
(おお!女王様、新しいプレイか!)
「おおっ!!リデア助けてくれるのか!許す!このような怪我など治癒魔法で癒える!だからそなたを許す!」
口髭男は背凭れにされていた全裸の女性が助けてくれると思い許すと言う。
背凭れにされていた全裸の女性は脚を前後に軽く開いて左手を腰に沿えて口髭男の頭を右手で鷲掴みにしたまま右腕をゆっくり大きく回し始める。
(おおっ!見事な眺めだ!さすが女王様!なかなかやるな!)
「ぐわあー!!やめっ!おごー首がー!ぶわー!助けろー!のぞみをー!叶え~てー!やるー!ぐわあー!」
背凭れにされていた全裸の女性は右腕の回す速さを上げて行く。
(ほう、これはこれで新しい遊びとして流行りそうだな。)
「お前達はいつも決まって望むモノ全てを叶えると言うがそれは無理だ。」
「そーんーなーこーとーはーなーいー!おーわー!たーすーろー!のーぞーみーをーいーえー!わーたーしーがーかーなーえーてーやーーやーやーるーーるーうーる!」
俺は言う。
「そうか。今すぐに叶えてくれ。俺の望みは尊敬していた父と敬愛していた母と可愛い弟夫婦とその甥と姪と可愛い妹夫婦とその姪と甥と最愛の妻と何者も変えがたく愛おしい愛する可愛い四人の娘達、俺の愛する大切な家族達全員を生き返らせてくれ。それが叶えられるのなら助けてやる。」
「なーなーなーなーにーいーいーいー!アーガーガーガーぐーえーえー……ぶびゃごあ…」
背凭れにされていた全裸の女性に振り回され過ぎた口髭男の胴体が首から千切れて壁に激突して跡形も無く潰れる。
(フム、最後に千切れ飛ぶのは遊びには向かないな。)
背凭れにされていた全裸の女性に右手で鷲掴みにしている口髭男の頭部を大きく振りかぶり壁に目掛けて力強く振り抜き投げ付ける。
口髭男の頭部は跡形も無くただの赤い模様になった。
(おお!ナイスピッチング!見事な揺れだ!女王様!)
俺はズボンの左右のポケットから向日葵の種に魔法力を込められるだけ込めて両掌に溢れるほど握り両腕を広げて両手の親指の爪で向日葵の種を弾き飛ばす。
俺は背凭れにされていた全裸の女性の積年の恨みを晴らし終えた血に塗れた壁を跡形も無く粉々に砕き崩す。
俺は跡片付けが終わるとユージをドームから出してドームを収納する。
俺はユージに頷き終わった事を伝わる。
「全部終わった。」
「ふー、ハイよ、なんも聞かねぇ。」
少し呆れたように肩を竦めてユージが短く即答する。
俺とユージと青年は背凭れにされていた全裸の女性を見守る。
謁見の間の左右の壁が崩れ落ちた時に背凭れにされていた全裸の女性は足元に落ちていた口髭男の着けていた隷属の首輪を粉々になるまで踏み砕いて両目から大粒の涙を溢して声を上げて泣き崩れた。
青年は背凭れにされていた血塗れの全裸の女性を抱き締めて一緒に泣いていた。
勇者が質の良い石を探している!どうしますか?
いっしょにさがす
てつだう
いしをなげる
いしをおく
ゆうしゃにいしをのせる
ゆうしゃにいしをかさねる
あなをほる
あなをふかくほる
でられなくなる
たすけをよぶ
へんじがない
おおきなこえでさけぶ
うるさいとゆうしゃにうめられる
よそうをする
うめられててきおうする
からだからねがでる
めがでる
めがとびでる
へそがとびでる
おならがでる
とてもくさい
ひとりでもがく
ちひょうにでられる
ねがかれる
あわてる
かはんしんをうめる
ひとがとおりかかる
ゆびをさされてわらわれる
なく
あんまりだーとなく
とほうにくれる
いもがそだつ
すこしうれしくなる
ようすをみる←