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芝居じゃなくてリアルなの?

ガチャ…闇もあれば神引きもあるんですよね。

少し時間が経過して男子高校生に刺された兵士の衣装の人や俺とイヤホンの若者に吹っ飛ばされた兵士の衣装の人達が何処かに運ばれて行った。そんな事をするよりも俺達を解放して欲しかったのだが…イライラが募って来る。俺達は椅子を用意されて座っていた。俺は踵を床に何度もコツコツと踏み鳴らす様にしていたら床のタイルのひびが蜘蛛巣状に広がっていっていたが気にもならなかった。


男子高校生もナイフの血をポケットティッシュで拭き綺麗にすると手持ちぶさたの様に何度も刃を展開収納を繰り返していた。イヤホンの若者は音楽を聴きながら爪先でリズムを取っていた。女子高生は男子高校生の左腕に巻き付く様に座っている。OLさんはファンデーションのコンパクトの鏡で前髪を見ている。


俺達五人のイライラが頂点に近づいていた。いい加減にこのコスプレ会場から出して欲しい。病院の検査の時間が近づいているはずだ。


俺は我慢が出来なくなりスマホを取り出し警察に連絡しよう画面を見ると表示されているはずの時間が-:--になっていた。アンテナも×となっているWi-Fiのゲージも×になっている!俺がスマホを食い入る様に見ているとイヤホンの若者がスマホをポケットから取り出し電話をしている様だった。


「アン?なんだこれ!!圏外?どうなってンだ!」


イヤホンの若者がそう叫び椅子から力を込めて思い切り立ち上った。イヤホンの若者の足元の床が大きく陥没してひび割れた。

流石に俺もそれを見て驚いた。更に俺の左足元は大きくひび割れているのに気が付いた。タイルが薄いのではない。床のひび割れの溝はかなり深い。何かがおかしい。


「えっ!繋がらないの?やだ!本当にえっ!繋がらない!」


OLさんもスマホを取り出し画面を操作している。


「ユージ…ここ…変だよ…床が…床が…抜けそうだよ…」


女子高生が震えている。床が少しずつ捲れてひび割ている事を怖がっている。


「…ユカ任せろ俺が着いてるからな。変な事させねぇからな?お前らユカに触るなよ?良いな!」


そう言って回りのコスプレイヤーを威嚇して床を踏み締めた男子高校生の足が床に突き刺さった。どうやら床を踏み抜いた様だった。俺達四人はその様子に驚いていた。悲鳴を上げてコスプレイヤー達が大きなドアに向かい走り出した。いい歳したコスプレイヤーが逃げ惑う様は滑稽だった。


「な?!はぁ?なんだこれ!」


床に埋まった足を引き抜いている男子高校生が一番驚いていた。そこにフードの付いた黒の布に金の縁取りの豪華なローブを着た魔法使い風の男性が早足で歩いて来た。その後ろから二人係で大きな水晶を乗せた金ぴかのカートを重そうに押して運んで来た。


「勇者様方、お待たせして申し訳ありません。大変、申し訳ありません。勇者能力選定球を搬送する準備に時間がかかりました。今からご説明させて頂きます故。私は、メイガン・フォロームと申します。メイガンとお呼び下さい。」


そう言ってメイガンは踵を揃え爪先を開き右掌を胸に当てて頭を下げる。両手の指に大きな金に見える指輪をいくつも着けている。よく見ると外国人のようだ。日本語を流暢に喋っている。


「あぁ?メイガン?フザケンナ!んな事はどうでもいいだよ!てめえの名前なんかな聞いちゃいねえんだ!いい加減に俺達を帰らせろ!スマホのアンテナもなんかの機械で邪魔してんだろうが!こいつがお前らの仲間を刺したのもお前らが脅したからだろう!こいつは悪くねえだろう!解放しろ!いい加減にしねえと今度は俺が暴れてやんぞ!」


イヤホンの若者の怒りが頂点に達し声を荒らげると建物に雷が落ちた様な凄まじい衝撃がした。


「ゆ、勇者様どうか、どうかお怒りを静めて下さい。ご説明を、ご説明をさせて下さい。」


メイガンはひび割れた床に片膝を立てて座り更に頭を下げている。


「とりあえず…教えて下さい…私も仕事がありますし、この子を警察にも連れて行かなきゃいけないので手短にお願いします。早く会社にも連絡しないと…」


OLさんは腕時計を見ながらメイガンに言う。腕時計の針は9:30を過ぎていた。OLさんは会社には遅刻だろう。俺も検査の時間だ。病院にも連絡しなければいけない。今日は検査に行けそうにないと。朝の薬は飲んだ。だけど昼の薬は、持っていない。どうしよっかなと悩んでいた。


「はい、ご説明させて頂きます。勇者様方が今おられるはアファルセル王国と言う国でございます。」


メイガンの言葉に俺は呆れ却ってしまった。芝居をまだ続ける気のようだ。


「はぁ?アファルセル王国?あのですね(・・・・・)!何処ですか?ヨーロッパの国ですか?ふざけないで教えて下さいね?私達は今さっきまで(・・・・・・)日本にいたんですよ?私も、もう貴方達のお芝居には着いて行けません!」


OLさんが右脚のハイヒールを踏み鳴らそうと床に足を着けると踵が床に突き刺さった。それを見た俺はもう黙ってメイガンの芝居に付き合うのが我慢が出来なくなった。


「メイガンさんあんたね、いい加減に芝居を止めろ。俺達は暇じゃないだ。俺は心臓の検査に病院に行かなきゃならないだよ。アファルセル王国?こんな脆い芝居小屋で王国?なんだこの床の作りは!なんだこの壁!踏みしめるだけで壊れる、軽く殴るだけで穴が開くこんな脆い芝居小屋に拐って来て何様のつもりだ!」


俺は立ち上り近くにあった柱を怒りを乗せて裏拳で殴り壁を殴り付けた。それだけで堅そうに見えていた柱を砕き壁に拳の通り抜けた穴が空いた。


「お、お、お、落ち着いて下さい。勇者様。どうか、どうか、もう少しご説明させて下さい。こ、こ、この世界は、勇者様方の世界ではないのです!どうかご説明させて下さい。どうかご説明させて下さいませ!」


メイガンの言葉に俺達五人は


「「「「「は?」」」」」


綺麗にハモッた。



今にも泣き出しそうな顔のメイガンの説明を聞くことにした。



「わ、私は、アファルセル王国宰相兼第一魔法兵団長を務めさせて戴いております。この度アファルセル王国に襲い来る厄災の封じ手を担って頂きたく勇者様方を王国の最上級の勇者召喚の儀式を行いました。しかし勇者様方を召喚出来ましたが皆様は瀕死の重傷を負っておられました。そこで偶然、勇者召喚の儀式を見学し待機していた第一治癒魔法士団の治癒魔法で皆様を治癒した次第にございました。」


メイガンは頭下げたままかなり手早く手短に説明をした。だが、俺は話の内容が腑に落ちない。出来過ぎている。まるで自分達が俺達を助けたと言っているように俺には聞こえたからだ。恩を着せる様に。


「まぁ、百歩譲ってここが日本じゃないとしようか。でもな、メイガンさん。この国の厄災と俺達とどう関係があるんだ?俺達がこの国を救ったとして何の得があるんだ?第一に召喚の儀式なんかやらなかったら俺達が瀕死の重傷になることはなかったんじゃないのかな?始めから勇者召喚には勇者に危険が伴う事が解っていたんじゃないのかな?それに(・・・)刺された兵士の人さぁ…俺達に『立ち上がれ!』って命令してさぁ、あの子に『控えろ!』とも命令していたのに何故だ?勇者様方って急に持ち上げ出したしそれも何故だ?」


俺は頭を下げるメイガンの目の前に片膝を立てて座りメイガンの顔を覗き込むように見ながら静かに怒りを込めてメイガンに聞く。


「えっ?おじさんどうゆう事?」


俺の言葉に女子高生が不安と怒りを乗せて聞いて来た。


「ああ、メイガンさんは偶然待機していた魔法使いに俺達を魔法で助けたみたいに言っていたよね?」


「「「「ウンウン」」」」


「でもおかしいんだ。そんな偶然があるかな?国をあげての大事な儀式を偶然見学なんて出来るかな?例えば…天皇陛下の行っている神事…えーと、お祈りを俺達が偶然通りかけたから見ていこうって見学なんか出来るかな?」


「「無理じゃね?」」


女子高生と男子高校生顔を見合わせてが即答する。


「だよね。何処かのパン工場の見学じゃないんだ。出来る訳がない。仮に無事に勇者召喚出来るのなら…魔法使いがいなくても勇者召喚出来るはずだ。」


「「「「ウンウン!!」」」」


「勇者召喚には初めから勇者に何かしらの怪我をさせて召喚していたなら?俺達の乗っていたバスが事故にあった様に。ねぇ誰か事故の瞬間やバスの後ろを見ていた人はいる?」


「…見てねぇ…椅子をジジィ達に譲ってずっとあいつの事睨んでて」


「アタシも…ユージがナイフ出さない様に右腕にギュって掴まってたから。」


「俺も…こいつがずっと睨んでたから睨み返してた」


「私も…次の停留所の案内を見ていたら後ろからガラスが割れてドーンて…」


「四人ともいや、俺も含めて五人とも後ろは見ちゃいない。事故の原因も解らないだ。なぁ、メイガンさん。あんたの言う通りだったら事故の原因はこの召喚の儀式の衝撃で起きたとも言えるよな。違うか?」


俺の問いかけにメイガンは答えない。その代わりに大量の汗が顔から床にポタポタと滴り落ちている。空気がビリビリと振動している事に俺は初めて気が付いた。


「…なぁ…メイガンさん。…ふぅ~、俺達の世界に『沈黙は是なり』つまり黙っていることは認めたと言う言葉があるんだが?メイガンさん…百歩譲って王様、あんたの言う言葉は!!」


俺は最後の言葉に怒りを乗せて吐き出した。俺の言葉で建物が震えている。


「じゃ、千歩譲って勇者召喚したのなら俺達を日本に無事(・・)に還して貰えるんだろ?その手立てもなく召喚した訳じゃ…ないよな?メイガンさん!!」


俺は今まで生きて来た中で一番の怒りを込めてメイガンに聞く。建物が震えている。地震の様に。メイガンの汗が更に床に滴り落ちている。長い沈黙のあとメイガンが言葉を絞り出す様に


「も、申し訳ありません…ゆ、勇者様の返還の儀式は…まだ発見出来ておりません…ゆ、勇者は…昔の勇者様は我が王国やその他の国々の厄災を鎮めたあと定住なされていました。ですので…申し訳ありません!大変申し訳ありません!」


メイガンの言葉を聞き終わった瞬間に何かが弾け飛ぶ様な音がした。


「ふ、ふざけないで下さい!こんな訳の解らない国に、世界に定住しろ?厄災を鎮めろ?馬鹿にしないで!!私はゲームのキャラじゃないの!!何で私なの?やっと入れた大手企業なのに!」


OLさんがとうとうぶちギレた。壁や床が更にひび割れていく。その様を見ていた俺は逆に冷静になった。


「とりあえずこの部屋を出よう…皆…ここが崩れても俺達五人は多分大丈夫なんだろうけどこの人達は…今までの勇者がどんな人か知らないけどな。俺は…還りたいんだ。どうしても…やっと…やっと世界樹を育て始めた所だったんだ…」


「「「「「「「「世界樹?」」」」」」」」


俺の言葉に四人と何故かメイガンとカートを支えている魔法使い達と国王までもハモッて聞いて来た。


「ああ、世界樹だ。ガチャを引き捲ってようやく手に入れてLVもあがって苗木を植えたばかりだったんだ…俺に残された唯一の楽しみだったんだ…」


「「「「あー!ファンタジーファーマーファクトリー!」」」」


「「世界樹を植えたですと?!」」


四人は知っているようでメイガンと国王は驚きの声をあげている。


「すげぇ!おっさん神引きジャ~ン♪世界樹の苗木!超レア物じゃん!」


「ウワー!超レア引いた人初めて見た~♪おじさん握手して~♪」

男子高校生が誉めてくれ女子高生から握手を求められた。


「あんた…一体いくら注ぎ込んだんだ…アプリだぞ?ゲームに…でもすげぇよ!」


イヤホンの若者が俺の肩を叩いて誉めてくれた。


「私も欲しかったんですけどお金をあんまりゲームに…凄いですね!世界樹の苗木はファンタジーファーマーファクトリーをやっている人の目標の一つですもん!」


OLさんがキラキラした目で誉めてくれた。


「勇者様!本当に世界樹を育てていたのですか?!」


メイガンが何故か食い付いて来た。


「勇者殿!詳しく世界樹の話を聞かせてくれまいか!我が国いや、世界に降りかかる厄災を永久に鎮める手立てになるやも知れぬ事故(ことゆえ)!この度の召喚の儀式の事も全て謝罪致す。この通り。何卒!」


国王もメイガンの前に片膝を立てて座り頭を下げる。フム…ドウシタモノダロウ…と四人を見るとスマホを指差しするので国王とメイガンにスマホを見せる。


「この画面の中で育てていたんだ。ウーン…何て言うのかな…遊びの…違うか…ああ、箱庭って解るかな?」


メイガンと国王に聞くと


「おお!箱庭ですか!貴族や王家の者が自らの手で箱の中に様々な木々を植え小さな国や世界を模した奥の深い物ですな」


国王がウンウンと頷きメイガンが箱庭をそこまで持ち上げるとは思ってもいなかった。


「そう…まぁ、箱庭の話だったけどな…でも…もう多分無理だな…Wi-Fiも通信局もないんだからアプリは起動しないだろうからな…ここにあるのに触れられない」


その言葉のあと思わず涙が零れた。俺に残された時間をどうすればいいのかわからなくなっていた。指がファンタジーファーマーファクトリーのアプリに触れる。画面がログインロード画面に移行するが


《データがダウンロード出来ません!通信の良いところでもう一度アプリケーションを起動してください。データ容量が大きいのでWi-Fi環境の整った場所でのダウンロードを推奨致します。》


と、ファンタジーファーマーファクトリーメインマスコットの二頭身の女神ノエルが可愛い声で告げ何度も頭をペコペコと下げている。


「やっぱり駄目か…皆、一度外に出よう…振動はおさまったけど埃が…」


いつの間にか静かになっていたがかなり埃が舞っている。身体にも良くないだろう。


「で、では私がご案内致します。こちらでございます。勇者能力選定球をそこの二人がお持ち致します。」


メイガンがそう言うと大きな水晶の乗ったカートを二人の魔法使いらしい人が懸命に押しているが床がでこぼこしているので動かない様だ。


「はぁ、俺も手伝うわ。ちょっと避けてみ。よいしょってめちゃくちゃ軽いじゃねぇか!いいわ…俺が押してく。」


イヤホンの若者がスーパーのカートを押している様に軽々と押して歩いて行く。二人の魔法使いは水晶を左右から落ちない様に必死で支えて歩いている。


「ねぇねぇ、アタシ達が馬鹿力になったのこっちの世界が弱っちいの?」


女子高生が拾った瓦礫を握り潰してメイガンに聞いている。


「いえ、力や体力などではなく魂や肉体その物の強度に依るものらしいのです。我が世界にはそれを補う為に魔法力があると古文書に記されております。」


「へぇーそうなんだ。じゃあ、魔法を使えばこれも楽に押せるんじゃないの?」


「それが…肉体強化の魔法はあるのですが私達に付与したところでもあまり変わらないのです。この二人にも付与しているのですがこの有様でして…」


魔法使い二人は必死の様だ。メイガンの話から汲み取ればこの世界その物が俺達と比べると強度が脆いと言うことになるが…逆に言えば俺達が世界を壊し兼ねない存在にもなり得るのだが…メイガンや国王はその事を理解した上で俺達を召喚したのか?それとも俺達を止める術があるのか…長い廊下を歩きながら考えていると


「この扉から空中庭園に出られます。」


メイガンが扉を開ける。風が皆を包み込む。澄んだ空気だ。空気が肺に身体中に染み入る様だ。


「あー、空気がうめぇ~♪」


「ぷはー、やっと深呼吸できる~♪」


高校生二人が笑顔になった。


「フハー、んー、あーやっと息してるっ感じだわ。タバコ吸いてえ…あっ…そうだ…俺、パチンコ行くついでにタバコ買うつもりだった。くそっ…あと3本か…まぁ吸うけど。」


イヤホンの若者は脚を開いて座りタバコを吹かす。


「んー、あー!イライラしていたのが少しはマシになったかも~♪」


OLさんが大きく深呼吸をしている。俺も深呼吸をする。澄んだ空気が心地いい。


「…すー、はー、…凄くいい空気だ。空も澄んで見える。遠くまで見える様だな。」


俺がそう言ったあとだった。俺のスマホが振動している。バイブレーションしている。すると皆のスマホをから着信音とバイブレーション。皆、スマホを取り出し画面に釘付けになる。あり得ない事が起きている。アンテナマークは×印のまま。Wi-Fiも×印なのに!


「「「「「はぁっ?ファンタジーファーマーファクトリーノエルからのメール着信?」」」」」


登場人物の名前?主人公の名前?

知らない人に簡単に貴方は名乗りますか?

きっかけがあ・れ・ば名乗るんじゃないですか?


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