始まりのキス
夜の学校、使われてない教室、そこは扉のみ残っていてコンクリートでとじられたところ
35年に一人、その教室の中へつながるカギを持っているものがいる
「きしきしきし」
そこにあるのは、少しばかり腐ったミイラと、青く光るランプ、黒板は血を流し
机はみんな、木片だ
「遅かったね」
彼女の声は屍の声
甘ったるい死の匂い
体の中から腐るような毒のある甘さ
それは今僕に向けられている
35年に一人の鍵の使い手にして、彼女の花婿である僕を
「おおわが主様よ、どうじゃ覚悟はできたか」
覚悟―つまり、ここでカギを折る
そしたら、もうカギは作られない、35年間誰にも
それも、かぎが新たに作られればだが、ほかならともかくこの教室で壊すのはまずい
なぜか、かぎが新たに作られなくなる
永遠の閉鎖
出口のない扉
「うん」
頷いて、僕はカギを彼女に渡した
ぽき
金属の鍵が折れる、まるで血のような断末魔のような感じでボロボロに崩れ散る、金粉が
戻れなさを表している
逃げ場はない、もう捨てた
ここで、「くふふふふ」
赤みがなくてまるで、鮮血を抜かれましたとでもいうような白
指がつっーと僕の腹をなでる
「さぁ、ちかおうぞ」
僕は出会った頃を思い出していた
それは四月のことである
どこからともなく手の中にかぎが現れ、そして夜
ふっと気づくとこの部屋にいた
「35年ぶりか、、、そちらから来ないから招いておったぞ
私は、ぐぜの、俗に言う悪の親玉さ
ああ、君はわからないであろうな、むろんそうであろう、私は」
漆黒の髪は夜の闇のようで、その瞳は見たものの希望をへし折る目だ
口は人の幸福を嘲り笑い、地に落とす怪物の唇、だというのにこう思わざるを得なかった
美しいと
彼女の声はよく響いてきてでも、体の震えが止まらない
「くふふふ」
微笑しながら顔を使づける
「私は、人の世を壊すために生み出された存在、魔女だ」
魔女、魔女とは
世界に絶望した者たちが作り出した最終兵器的なもの
「私はそのうちのグリード、強欲さ」
つっーと、指があごの下を這う
「ねぇ、死んで」
気が付けば血まみれだった
気絶したわけでもない、ただ直感的に判断した
自殺したのだおそらく、舌を噛み切って
そして、復活させられた
「あ、、、あ、、、、」
声は出ない、そこへ彼女が唇を重ねる
「どうだ、わが夫になり、世界を滅ぼさないか」
ーそれは、断るにはあまりにも魅力的だった、なぜなら
「その代わり、私自身を君にプレゼントしようーさぁ、選べ、世界か我か
4ヶ月の猶予を与える、夫となるそちはその間我を見ておけ」
そこ、そこで見たのは彼女自身である
嗤った顔、怒った顔、さげすんだ顔、慌てる顔
そして、僕はいつの間にか答えを出していた―いやはじめじからだしてたんだ
―そして、今僕は彼女に初めての、こちらからキスをした
そう、世界を滅ぼす最初のキスを