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42 少しの安らぎ

 サラティガへの復讐を果たした俺たち。


「くそっ、しつこい連中だ!」

「まったく……考え無しに喧嘩を吹っ掛けるからそうなるのだぞ?」

「っ! 分かっている!」


 しかしインペリアルガードの連中に顔を知られたことで、追手をかけられていた。


「で、どうする? 次はどこへ向かうのだ?」


 手配書まで出回っている以上、この国での活動はもう無理だ。

 となると他国へと逃れるしか道はない。


「……やはり王国だろうな」

「法国ではないのか?」


 エルナの言いたいことは分かる。


 既に領土の大半が占領下にある王国と違い、法国は帝国の勢力下にはない。

 追手から逃れるという意味では、そちらの方が安全かもしれない。


 加えてサラティガが残した最後の言葉は、アルテナが殺された理由がマムクートにあることを示唆していた。


 もっともフォルティスの記憶の中では、マムクートとアルテナの仲は良かったように思う。

 誰に対しても優しかったアルテナはもちろんのこと、マムクート側にだって彼女嫌っていた素振りは全くなかったようにも思う。


 だがその感想があてにならないことは、フォルティスの死によって既に証明されている。

 真相を知る意味でも、次に狙うべきはマムクートにしたいところは山々ではあるのだが……。


「サラティガと戦って分かったが、やはり俺たちはあまりに実力不足だ」


 性格的に単独行動が多いサラティガだからこそ、あのようなチャンスに巡り合えた。

 慎重かつ合理的なガンダールや、強気な態度とは裏腹に臆病なマムクート相手ではこうはいかないだろう。


 今の俺たちはもっと力を蓄える必要がある。


「王国はフォルティスの故郷だ。土地勘もあるし、魔族が一番多く住んでいたのもあの国だ。ならあそこでまずは仲間を増やす」

「私だけでは不足ということか?」

「……そう不満そうな顔をするな。お前は十分良くやってくれているさ。ただやはり数は力だ」

「まあ……確かにな」


 俺のステータス操作は、一度に複数人を対象に出来る。

 ならばエルナ以外にもあと数人は欲しいところだ。


 エルナを盾とするならば、矛となってくれる者たちが。


「それに……」


 王国にはフォルティスが生まれ育った故郷――ダミア村もある。

 滅びたとは聞いているが、それでもこの目で確かめておきたかった。


「お前がそう決めたのなら、私は従うだけさ」

「……ありがとう」


 俺がそう告げた瞬間、エルナが信じられないモノを見るようにしてパチクリ目を見開いた。


「なんだ? 妙な顔をして……。何かおかしなことを言ったか?」

「いやそうじゃないが……ただ、お前から素直に礼を言われるとは思ってもいなかったからな」

「はぁ、言って損したぞ」


 全身に熱を帯びるのを感じ、思わず顔を背ける。

「ふふっ、なんだ恥ずかしがっているのか?」


 そんな俺の顔を覗き込みながら、からかうような視線を向けてくる。


「うるさい! 飯抜きにするぞ!」

「な、なんだと! おのれ、そのような人質は卑怯ではないか!」

「だったら静かにしてろ! ったく……」


 互いに遠慮なく文句を言い合う俺達。


「まあ、こんなのも悪くはないな……」

「何か言ったかアロン?」

「いいや、何もないさエルナ。それより急いでこの国を出よう。いい加減野宿も飽きたからな」


 目的が復讐である以上、この先も血濡れた道は避けられない。

 けれどこうして今のような穏やかな時間も、まあ少しくらいなら許されるんじゃないだろうか。


 なんてことを考えながら、俺たちの旅は続いていく。


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