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第4話 楽園?いいえ、鬼ヶ島です。



 人々の視線が、自分に集まっている。

 それは恥知らず者を見る侮蔑の意志か、それともその美貌に魅了された恍惚の視線か。

 どちらにせよ、ジュリアにとっては御免こうむる迷惑以外の何物でもなかった。


 「ジュリア・ローゼン・ブラスター、前へ出なさい。」

 ハンジの声と共にジュリアは一歩、また一歩と王宮の謁見の間に敷かれた赤い絨毯の上をゆっくりと進んだ。やがて玉座の壇上の前にたどり着くと、恭しくその場に腰を落とし、深々と礼をした。

 「わたくし、ジュリア・ローゼン・ブラスター、エドワード国王陛下の御前にまかり越しました。」

 国王の声掛けの前に顔を上げてはならないというしきたりのため、そのまま伏せている。

 「ジュリア・ローゼン・ブラスターよ、面を上げなさい。」

 頭上より振ってきたのはジュリアに勝るとも劣らない美声。その声を聞き、ジュリアはスッと顔を上げた。

 壇上の豪勢な玉座に座っているのはストーカー・・もとい、エドワード・ローゼンタール国王その人である。

 

 20歳の若さで即位し、現在22歳。髪は黄金に輝く金髪。緩くウェーブがかかっており、後でかるく結んでる。顔の小ささと透き通るような肌は国中の女がうらやむほどである。エメラルド色の瞳に見つめられれば、失神者が続出するほどの、美青年だ。また、国王としての能力も高く、前王が自身の不摂生のため崩御した際も、表向きは皆悲しみに暮れていたが内心お世辞にも賢王と呼べない程悪政を布いてきた王に変わり、賢く、正義感に溢れるエドワードの即位はローゼンタール王国にとって僥倖であった。エドワードの魔力は風と水の2属性であり、その魔力の大きさは国内屈指を誇る。文武両道の象徴のような王で、即位してすぐ腐敗しきった国政を持ちなおさせ、国王の突然の崩御という混乱をものともせず、現在まで立派に国を治め、誰からも愛される国王となった。


 (まぁ、中にはわたくしの実家のように上手く掻い潜って生きている悪徳貴族もいるのですけれども。)

 もっと他に考えることもないのかと言われても無理のない感想を心の中で述べつつ、エドワードを見た。

 「ジュリア・ローゼン・ブラスター、王命をもって本日そなたを側室として召し上げ、薔薇妃の称号を授ける。ジュリア・ローゼン・ブラスターは国民の模範として徳をもってその任に当たるように。」

 エドワードの横でハンジが任命書を淡々と読み上げる。

 「謹んで拝受致しますわ。」

 ニッコリとほほ笑み再び礼をした。




   ――――*――――*――――*――――*――――*――――*――――*――――*――――



 王宮を後にしたジュリアはそのまま女官に連れられ後宮の楽園(パレス)と呼ばれる大広間に連れて行かれた。そこにいたのはきらびやかな衣装を身に纏い、ジュリアを値踏みするようにジロジロと見つめる側室たち。

 (20人・・くらいかしら。)

 側室たちの奥には明らかに『高貴ですオーラ』を醸し出している4人の側室がいる。

 (あの人たちが牡丹妃、蘭妃、百合妃、藤妃ね。なるほど、すごい顔ぶれだわ。)

 4人はいずれもジュリアが社交界の場で見たことがある人物であった。


 藤妃、カリーナ・ポワティエ。18歳。ポワティエ侯爵令嬢にして社交界でもその名をとどろかせたほどの華やか系美人。その派手な見た目を裏切った類まれなる知性と品格は世の男性から『ギャップ萌最高!!』と称賛を浴び、数多くの男たちを魅了した。ポワティエ侯爵家はローゼンタール王国の起りからある由緒正しい貴族であり、先祖代々頭がよく、ポワティエ侯爵家からは何人もの宰相を輩出した過去がある。カリーナ自身も学院では学年首席という輝かしい過去を持ち、夜会では他の令嬢相手に相談役を担っていた。髪は深紅のゆるふわウェーヴでその髪色と同じ燃えるような赤い瞳を持つ。すらりとした鼻筋に大き目な口。豊満な身体は『手解きを受けたい女性NO.1』の名をほしいままにしている。


 百合妃、セシリア・ローゼン・オルデンブルク。16歳。オルデンブルク伯爵令嬢。こちらは儚い系美少女として有名で、セシリアもまたその庇護欲をそそる見た目と裏腹に好奇心旺盛な性格と行動力に、見た目に騙された!!とカリーナとは別の意味でギャップに騙された被害者続出の娘。父であるオルデンブルク伯爵は伯爵という高い身分にも拘わらず、発明家としての顔も有名で、次々と新しい発明をしては国に貢献している。オルデンブルク家が『ローゼン』の名前を賜ったのは実は先祖に魔動防御装置(シールド)という国防のかなめの装置を発明した人がいたからという者で、先祖代々好奇心旺盛な発明家貴族として良い意味でも悪い意味でも有名である。セシリアもその血筋のなせる業か、数々のとんでも発明をしては周りを驚かせていた。髪は流れるようなアイボリー、色白を通り越して透けてしまいそうな肌に少したれ目がちなひまわり色の瞳。その華奢な身体は『抱きかかえたい女性NO.1』の名をほしいままにしている。


 蘭妃、クリスティアナ・リンスター。16歳。リンスター公爵令嬢。クール系美女。公爵令嬢でありながら、剣の達人であり、騎士顔負けの実力を持つ。噂では、身分と性別を隠して出場した武術大会で優勝したとも言われている。『男よりも剣!』という性格からか、滅多に社交の場に姿を現さず、また、いざ夜会に顔をだすと、その振る舞いから女性に熱を上げられることもしばしば。空色の髪は後でかるく結んでおり、切れ長の夕焼け色の瞳はどこか哀愁を漂わせている。また鍛え上げられた身体は無駄な肉がなくしなやかで、『抱かれたい女性NO.1』の名をほしいままにしている。


 牡丹妃、アイリス・ボークラーク。17歳。ボークラーク公爵令嬢。可憐な妖精系美少女。穢れを知らないという言葉がピッタリの淑女。だが、実際アイリスについての噂はその美貌と彼女の淑女的な振る舞いのみにとどまっており、それ以上の情報は一切出回っていない。ボークラーク公爵家はローゼンタール王国の起りからある由緒正しい貴族であり、過去何回かその令嬢が正妃になったことがある。それくらい王家とは懇意にしており、外威としての権力も絶大で、ボークラーク家支配の時代ということも何代かあったほどである。学院での彼女は品行方正な優等生として有名であり、社交界では高嶺の花として世の男性から「近づきたいけど近づけない!」と言わしめた。ふわふわとさわり心地のよさそうなハニーブラウンの髪に薄桃色の瞳はくりくりとしていて吸い込まれそうなくらい大きい。人形のような顔立ちに似合わず、メリハリのある体つきは『一生守り続けたい女性NO.1』の名をほしいままにしている。


 

 4人の称号付き側室の前を通り抜け、楽園(パレス)の最奥にたどり着くと、くるりと振り返った。

 「皆様、ご機嫌麗しゅう。わたくしはジュリア・ローゼン・ブラスター。この度エドワード国王陛下より『薔薇妃』の称号を与えられ、この後宮へ参りました。新参者故、至らぬ点も多々あるとはございますが、何卒ご指導の程、宜しくお願い致しますわ。」

 そう言い、軽く礼を取る。

 顔を上げて見渡すと、さすがは後宮。称号付きの4人以外の側室たちも皆、かなりの美しさである。

 (あの王様、これだけ美女をはべらせながら何でわたくしをわざわざ呼び寄せたのかしら。)

 つくづく理解が出来ないと、周りに気づかれないよう、心の中で息をついた。


 ジュリアの後に続いて称号付きの4人が各々軽く挨拶を述べると(称号付き以外はその場で名乗ることを許されていない)、入り口の方から威厳たっぷりの中年の女官が数人の女官を引きつれて来た。

 「薔薇妃様、お初にお目にかかります。私は女官長のマリア・ボルドレーと申します。以後お見知りおきを。」 

 女官長マリアは恭しく最上の礼をとるとスッと横にそれ、後ろにいた5人の女官が前に出た。

 「この者たちは薔薇妃様付きの女官にございます。以後、貴女様の手となり、足となり働くことになります。」

 マリアがそう言うと、5人も深々と最上の礼をとった。

 「そう、これからよろしく頼みますわ。」

 ジュリアがにこりと極上の笑みを浮かべると、早くも何人かがその美しさに当てられたのか、瞳をぽーっと潤ませていた。

しばらくはこの話の設定を理解してもらうため、説明文みたいな文章が続いてしまいます。

メンドクサイとお思いの方もいらっしゃるとは思いますが、ご了承くださいー。

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