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88 占い

 あれから、様々場所に出向いた。出会いも別れも、そして恋も何度かした。まあ、いろいろ有ったなあ。そう言えば、子供さえ作ったなあ、今頃結構大きくなったろうな。


 見知らぬ街で、仲間と別れてさまよっていると、妙に心が惹かれる気がする。

 黒いマントにフードで顔を隠した占い師を見かけた。丁度今客が蒼白な顔でよろよろと席を立ったので、客待ちも無い。暇つぶしに占って貰うか?

「邪魔するよ、適当に美味い所を見繕ってくれ」

「生憎、しようもない人生しか占ってやれんよ。それでも、いいのかい」

 フードから覗く顔は、年老いた声とは程遠く妙齢の美女と言ってもよいくらいだ。まあ、占いの精度は高くなくても美人の宣託なら聞いてみたいもんだな。何処の生まれなんだろうか、妙に色気がある。好奇心は猫も殺すらしいが、俺は気に入ったので、占ってもらうことにした。

「ああ、構わないぜ。俺の将来について占ってくれよ、礼はたっぷりと出来ると思うぜ俺が納得すればだけどな」

「はあ、もう帰ろうとしておったのに、面倒な客が来たものじゃなあ。座って利き手を見せてごらん。ふっふふ」

「その前にその物騒な物はしまって貰おうか。右手をナイフで釘付けにされちゃあ、たまらないからなあ。まあ、本気でやり合うつもりは無さそうだが、只の占い師じゃあるまい。かなり、気に入ったぜ。若い頃みたいにあんたを口説いてみたいまであるな。向こうの酒場でどうだ、一杯相手になるかい?」

 俺が、示したのは出会いを求める男女が通う酒場だった。

「女ひとりでこういう商売をやってると、何かと物騒でね。それにしても物好きだね、こんな小母さん、正体の知れない占い師を口説こうなんてさ」

「いやなに、わざわざ婆さんに変装しているくらいだからかなりの別嬪さんなんだと思ってね。割と好きなんだよこういう意外性に有り金全部掛けるとかがさ」

「へえ、酔っ払って誰彼なしに口説いてる訳でもないのね。まあ、一応見て進ぜよう、商売だからお代は貰うよ」


 俺は、占い師の手に右手を委ねた。彼女は仔細眺めたあと、怪しげなカードを切ると表を伏せた状態でカードの中から俺に二枚選ばせた。

 選んだカードをテーブルに置くと占い師の美人さんは、おもむろにカードをひっくり返して表をだした。

 開かれたカードには、極彩色の絵の具で何かの儀式を行う姿ともう一枚には悪魔の前に並ぶ裸の男女が描かれていた。

「『Ⅰ魔術師(マジシャン)』と『ⅩⅤ悪魔(デビル)』のカードね、あまりこういうストレートに言うのも気が引けるけど。お客さん魔導師みたいだね、それに錬金術も得意そうだね」

「ほう、判るのかい。まあ、こんな漆黒のマントを羽織ってるんだから素人でもわかるかもしれないな」

 占い師は薄く笑った。

「ふーん、ならばあんたの過去を視てあげようかい?もう二枚カードを選びな」

 俺は、二枚カードを引くとテーブルに開いた。そこには天使が笛を吹いているような絵と古い乗り物に乗った男の絵が描かれていた。

「ほお、また数奇な!『ⅡⅩ審判(ジャッジメント)』と『Ⅶ戦車(チャリオット)』のカードねえ。お客さんの過去は、言うのもおぞましいけど改造人間だったなんてねえ!」

 俺は、血の気が引くような思いを必死に抑えポーカーフェースを決め込んだ。

「はっ、また珍奇な過去が見えたようだがそれは、俺んじゃねえな!」

 俺は、見料には部相応な額の金貨一枚を置くと後ろも見ずに、ただひたすら逃げるように駆け出していった。

 美しき占い師は笑いを堪えるようにつぶやいた。

「またすぐに会うことになるわ」


2020.3.6 微修正

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