87 異界転生者の憂鬱
お待たせしました。
「そうか、もう行くのか?」
秀吉さんの部屋で、一晩飲み明かした後、俺は静かに出ていこうとしたが城門を出るところで見つかってしまった。流石太閤秀吉とその腹心の女忍者である。
「ジョージ君、水臭いわよ。黙って出ていくなんて。私たちは共に未来を勝ち取るために戦った戦友でしょ!」
「そうだったな、茶阿にはいろいろ無茶振りさせたが良くやってくれた。今回の件も、茶阿がいなかったらここまでたどり着けなかったかも知れないな。世話になった。あと、秀吉さんと短い間だろうが、精一杯幸せを掴めよ!」
うっ、もう恥ずかしいことを。照れるじゃない。
「わしからも、礼を言う。年の差四百越えのカップルに恋の炎を焚きつけてくれたな。さすが、母親も孕ます色男だけはあるな。わしも流石にその経験は無かったの。はっはっはぁ!」
え?俺とマリアのことがばれているのか?でも、孕ましたって?おおーい!
「ふっ、な、何のことかな?シミュレーションのやりすぎで幻でも見たのか?流石に百回は廃人でもシム漬け過ぎるぞ、茶阿!」
俺は、動揺を隠しながら茶阿の勘違いで場を押し通すことにした。幸い、渦中の女人は異界の領地に留まっていることだし。
「ふふ、じゃあ、これなーんだ?」
茶阿がスマフォを操作すると、立体画像が城門前に投影される。
「はーい、ジョージ。母さんは寂しくないわよ、もうじき十か月もしたらまた、あなたに会えるから。この子、凄く元気よ。じゃあ、気が向いたら戻って来なさい。ふふ、愛してるわ、私のジョージ!」
「うわー、まじ。勘弁してくれよ。これで、あそこには二度と帰れないな」
俺は、急に寒気がして漆黒のマントの合わせ目を閉じたが震えは止まらなかった。
「マスター、親子で関係するとか、子供を為すとか。常軌を逸しています。これは、早期に修正が必要と判断します。そこに、直りなさい!」
右の義眼を輝かせて、マシンガンを俺に向けるのは冗談でも止めてくれ!
「ふ、ふ。恋人のお母さまと奪い合いになるとは、やっぱり面白い方ねジョージって。後で私のプライドが傷ついた分、しっかりお仕置きするからね。覚悟なさい!」
「はは、マスタがテンプレのハーレムどたばた喜劇に突入するとは。この世界も平和になりましたね。くれぐれも、身体に気を付けて下さいマスタ!」
おい、ネコ。助けろよ!
「うおー、今更ながら。凄く、嫌な予感がする。ネコ、周囲の警戒を怠るな。ティーガーはいつでも、撃てるようにしておけ。玲子ちゃんは、俺のマントの中へ。もう、誰も、運命になど奪わせはしない!」
シャム猫の目が赤く閃く。
「マスタ、非常にまずいです。次元断層が局所的に増大しています。このままでは飲み込まれてしまいます。即刻、退避勧告します」
俺は、覚悟を決めて、闇よりも黒い漆黒の次元断層に向かって歩き出した。
「却下だ、今逃げたら折角テスタが命を投げ出してまで救った人類の未来が、消えてしまう。そんなんで、生き残っても誰も救われない」
「マスター、私も一緒に」
「もちろん、ジョージ君の行くところは私の場所よ」
「く、ティーガー、玲子ちゃん」
「じゃあ、逝くか。俺たちが通過するときに次元量子に同エネルギーの逆スパイラルを掛ける。みんなの力を貸してくれ!」
「はい、マスター」、「ええ、ジョージ」、「マスタ、タイミングとベクトルは計算しますので全力で逝っちゃってください」
「マスタ、今!」
ティーガーが、戦車形態で主砲をぶっ放す。
玲子ちゃんが、魔法ステッキで極大魔力の何かをぶっ放す。
俺は、頷くと魔道の全エネルギーと改造人間パワーをぶっ放して、おまけで拳も叩き込んだ。
眩い、閃光が辺りの光と影を消し去った。
大坂城の城門にヒビがが入ったがそれ以外は、大した被害は出ていなかった。
月夜の天守閣で寄り添う男女がいた。
「秀吉様、あれからジョージ君一行を見かけたものは誰もおりません。城のコンピュータでも、その存在を感知できないことから、この世界にはいないものと考えます」
「そうじゃの、またどこかの異界でとんでもない冒険でもしておるのじゃろう。あやつのことじゃ、心配しても仕方なかろう」
「はい、きっとまたいつの日か会えるでしょう」




