83 休息
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調理場のオーブンを前にして、エプロン姿の一人の女性がしきりに呟いている。辺りにはピーチパイの甘い香りが漂っていた。
マリア・アトワーレは、悩んでいた。なぜ、何故に。
「まだ、言わない方がいいかしら。しばらく気づかないだろうしねえ。ああ、でも言いたい。ああ、もう。早く、帰って来ないかなあ。ジョージ、何をやっているのかしら?」
既に、マリアが貸し与えた配下の者たちは皆無事戻ってきていた。だがジョージ達はまだ帰って来ていない、太閤とかいうサムライの王と話があるとかで帰るのが遅れると配下の者を通じて言伝があった。
「早く、帰って来ないかな。パイも美味しそうに焼けたのに。そう言えば、うちの料理長はどこに行ったのかしら?最近、姿が見えないけど」
ま、いいか。きっと、男としてやるべきことが見つかったのね。
黒い球体が、大坂城の天守閣に現れ、そこから魔導士が姿を現すと間もなく消えた。
「雷を落としたぐらいでは、気が晴れぬな。ここは、こうした方が楽しいか」
あは、太閤さん気づいたら驚くだろうな。
ジョージが天守閣から覗くと堀には、2匹の大きな魚が泳いでいた。
再び黒い球体が現れ、ジョージは球体の中に入って行くと、球体は消えた。
メイドたちに出迎えられた後、館の主の部屋に声を掛けて入った。
「母さん、ただいま戻りました」
「ジョージ、もう遅いじゃないの。なにをやっていたの?」
マリアは、ジョージの顔を覗き込むと心配そうに言った。
「そう、いろいろあったのね。お腹すいてない?久々にパイを焼いてみたの、あなた好きだったでしょ、ピーチパイ」
「うん」
マリアは、メイドに運ばせたパイをジョージに食べさせていた。
「はい、あーん」
「どう、美味しい?」
「まあまあ、かな。でも玲子ちゃんの作るスイーツには、まだまだ勝てないな」
マリアは、きつい目をしてジョージを睨む。
「そう、でも覚えておいて。あなたを一番愛しているのは、わたしよ」
「はい、はい。わかりました、そんな怒らないでも」
「ハイは、1っ回でいい!」
「で、うまくいったの?」
「正直、わからない。うまくごまかして関ヶ原の戦いで西軍が勝ったという歴史の改変は無かったことにした。正しい、歴史では東軍勝利だったけど、それをそもそも関ヶ原の戦いは無かった。あれは、単なる軍事演習だったと強弁させたんだ。」
ジョージは、紅茶で甘くなった口の中をリセットした。豊潤で高貴な香りが心を落ち着かせる。
「そう、ジョージは頑張ったのよね。なら、そんなしょげた顔はしない。胸を張りなさい、自分は精一杯やったんだと」
「しかし、俺の詰めの甘さがテスタを死なせた。三成にあんな秘策があったなんて」
「自分を責めるのはやめなさい、全て上手くいくことなんか世の中には無いのよ。みんな、結果とその努力した過程で折り合いを付けていくものよ」
マリアは、ドレスを脱ぐと艶めかしい下着と輝くような肌をさらしてジョージを誘う。「来なさい、ジョージ。頑張った子にはご褒美をあげるわ」
「マリア、俺は」
ジョージは、マリアの中で安らぎを感じた。そして、マリアを何度も歓喜に導く己に男の自信を蘇れせていた。
「あ、ああーん。いいわ、私の胸の中で泣きなさい。痛みと悲しみを忘れなさい。新たな戦いに出るまで、ここでお休みなさい。う、うーん」
いつの間にか、二人は深い眠りに落ちていった。